Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

高校生の研究助手を持つ夏

今夏、私の研究助手を務める学生と会ってきた。現在進めているサイバー戦略の論文を手伝ってくれるのである。その生徒は高校2年生。競争率の高い大学に合格するために、夏休みを使って研究の経験を積みたいのだと、私の学部長を伝えて私が依頼されたのである。

フロンテナクのパネラで会って話をしてみると、とても賢く物分りの良い男の子だった。ミズーリ州でトップの高校に通うだけはある。高校ではサイバー関係の研究をすでにしており、毎日、新聞を読み国際事情をフォローしている。

研究の内容は予め伝えていたが、今回実際あって内容を確認したのは良かった。20分ほどでアポは終わった。

米国務省による日米同盟に関する「ファクト・シート」

米国務省が21日に日米同盟に関するファクト・シートを発表した。政治・軍事局が担当したこの書類は中身が薄い。私がいた空軍でもそうだったが、基本的に政府声明の多くは意図的に具体性を制限するものが多く、これも例外ではない。書いてあることは在日米軍の基本的なことから対日武器輸出、国際社会における日本の役割などである。

トランプ政権になり優秀なアジア・日本専門家が不足していることもあり、日米関係にもこれが顕著に現れている。特に日本が懸念しているはずの、そして日米同盟でも重要な部分であるはずの東シナ海情勢に対する政策が欠けている。また、緊張関係が増す対中、対露戦略も言及されていない。事実関係を述べたファクト・シートではあるが、語ってない部分も多いファクト・シートである。

五味洋治氏の「金正恩」は良かった

img_0b0742c3a093e2c449ce5bc6bec96aae876319我が家の書斎が娘のおもちゃで一杯になり、ここ最近は娘の遊び部屋で仕事をさせてもらっているのりっぺです、皆様こんにちは。

最近、娘の絵本と北朝鮮関係の図書を購入した。その中で関心したのが五味洋治氏の「金正恩」。英語の図書では中々知りえない情報が満載で良い意味で驚いた。フランスやスイス、韓国などの海外調査も含めしっかり研究されている。

北朝鮮関係の資料が多く出版されている今日、これほどの価値のある本にめぐり合えたのは幸せ。

学部教員の集合写真

先日の謝恩会に出席した教員の集合写真。

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今学期の授業を終えて

時系列的には卒業式の前に来るべきトピックだが、今学期の期末試験を採点して思ったことを少々。

教えた2つの授業のうち、国際関係学入門の授業は学生も活発で、授業に対する姿勢も肯定的なものが多かった。この授業をして3年経つこともあり、内容もほぼ完成していることもある。それもあってか、中間試験の平均点は高く、生徒も多くを学んでいた。しかし期末試験の平均は急に下がった。特に中間試験で高得点を出した生徒にそれが見られた。考えられる理由としては、中間の出来が予想以上に良かったため、期末で手を抜いてしまったことだろう。採点をしていて、授業の後半で使っていた文献をそれらの生徒がしっかり読んだというものが見出せなかった。

もう一つの授業はアジア政治だった。これは朝9時半という、比較的早い時間帯に始まった授業だったこともあり、生徒の中には遅刻するものも多く(私のクラスでは5分以上の遅刻は欠席扱いになる)、授業に出ても眠そうな顔をしている(従って中々授業に参加できない)ものが多かった。それもあってか、試験と論文の平均点はあまり高くなく、生徒が多くを学んだというものもあまり見られない、ある意味残念な結果になった。また、私の大学が不必要にヨーロッパ志向が強いこともあり、アジアを含むそれ以外の地域への理解が比較的乏しく、この授業に対する生徒の態度もそれほど強いものではなかった。

来年の春学期には、このアジア政治の授業と、3年前に教えた「戦争・平和・政治」の大学院の授業を担当する。

卒業式

去年は出れなかった大学の卒業式、今年は参加した。とはいっても学部主催の謝恩会だけだったが、羽ばたく教え子たちとしばしのお別れをすることができて良かった。

中にはほぼ3年前に教えた学生らが私を探して笑顔でハグしにきてくれたのは嬉しかった。彼女らの就職先を聞くと地元のセントルイスからシアトルからニューヨークからイタリアのボローニャまで幅広い。

今年は私が担当した大学生が卒業生の最高賞を受賞した。担当教員にとっては誇りである。

大学学長の話の最中。
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1時間半ほどでお開きになり、今度は学部の同僚のスティーブ宅で学期終了の乾杯。楽しい時間を過ごすことができた。

治安フォーラム6月号に拙稿が掲載されました

治安フォーラム6月号に拙稿が掲載されました。

今回は「崩壊しつつあるトランプ政権が北朝鮮との交渉に辿り着くまで」という題名で、ホワイトハウス内でどのような意見が出ており、ここ最近の人事の調整(マクマスターの左遷からボルトンのNSA就任など)が今後どのような影響を与えるのか、などについて書いています。

興味のある方は是非ご笑覧下さい。

地元の食品店で見つけた世界のパン

今日買出しに訪れたパンアジア食品店にて。上から二段目に注目。左から、アフガニスタンのパン、イラクのパン、そしてフィリピンのパン。セントルイスは特にそれらの戦地からの難民が増えているわけではないはずだが、珍しい。

最下段にあるのはお馴染み日本のパン。これは世界中で人気商品のはず。

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テニュア獲得に際して

先日大学から、テニュア(終身雇用)を獲得したとの連絡が来た。テニュアはどの大学教授にとっても大きな名誉であり、素直に嬉しい。経済的な安定にもつながる、本人の家族にとっても大切な部分である。

私の場合は博士号を取得した直後はテニュアのない、政府の機関に就職したため、特に強く意識することはなかった。アメリカ政府の仕事は日本の官僚とも似ている部分があり、私の当時のポジションを含む、一定のレベルの職であれば事実上のテニュアが付いて来ることも理由の一つである。テニュアに関しては賛否両論があるが、米軍の戦争大学ではどのサービスであれ(陸海空)、よほどのことがない限りは終身雇用が続いている。詳細は述べないが、一定の不法行為を行った人間でさえも、クビになることはなく教授として仕事を続けることができるのである。

米軍を辞め、現在の民間大学に移ってからは私も多少はテニュアの審査について考えることがあったが、審査の内容を精査するうちに、心配する必要がほとんどないことに気付いた。家族はもちろん様々な面でサポートをしてくれた。それもあり、眠れない夜を過ごすこともなく、普段の仕事をし、適切にテニュアの審査を受け、普通に終身雇用のオファーを受け取った。

こう書くとテニュア獲得は簡単なのではないかと勘違いをさせてしまうので、改めて強調したい。このブログで数年前に書いていたように、ここまでたどり着くのはとても大変な道のりであり、アメリカの大学院から始めてテニュアを得るのは、博士課程に入学したうちのほんの数%の人間に過ぎないという点を忘れないで欲しい。

1.博士課程に奨学金付きで合格することの難しさ(数百人の応募者のうちのほんの数十名)

2.博士課程の授業をしっかりやっていく難しさ(入学者のうちの数名はここで脱落する)

3.博士課程の総合試験に合格する難しさ(この時点で入学者の半数がいなくなる場合もある)

4.博士論文を無事に完成させ、それをディフェンドする難しさ(入学者の半数は脱落している)

5.教授職に就職する難しさ(入学者のほんの数%)

6.就職し、研究を十分に出版し、しっかり授業とサービスをこなす難しさ

7.大学外からの専門家の推薦(手紙)を受け、大学内での審査に合格する難しさ

などを考えれば、もちろん運も関係するが、アメリカでやっていくための相当の努力が必要になることが分かる。私にとってはテニュアはキャリアの一部分でもあるが、大学教授としての大きな達成感を生み出す最高の機会の一つでもある。今後をこれを元に更なる発展をするよう毎日頑張り続けるのみである。

ノリッチ大学の平和戦争研究センターのプロジェクト

ノリッチ大学の平和戦争研究センターのプロジェクトに参加している。アメリカで教職に就く数人の北朝鮮専門家と一緒に紀要を書くものである。先日そのメンバー5名と初めて電話会議を行い、今後の予定と論文の内容の打ち合わせを行った。

電話会議とは中々面白いものだ。アメリカ国内でも時差があるため、会議開始の時間は各々異なる。ましてや今回はメンバーの一人がドバイにいたため、その人にとっては現地時間の深夜での会議となっていたようだ。

今後はこの論文を7月末までに完成させ、9月に学会を開き、来年前半には紀要として発表される見通しだ。
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