Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

北朝鮮に脅威を抱くアメリカ人

今月行われたギャラップの世論調査で、アメリカ人の対外脅威のアンケートが行われた。ロシア、中国、イラン、北朝鮮の中で、どの国が最も脅威的であるか、というものである。

調査の結果は、半数以上のアメリカ人が北朝鮮を最大の脅威と見ているそうだ。日本でならともかく、こちらアメリカでも、最大の脅威はロシアのサイバー攻撃でも中国の軍事力でもなく、北朝鮮の軍事力なのだそうだ。

顕著な点は、この大きな変化は過去1年の間に起きていることである。つまりトランプ政権になり、北朝鮮からの脅威が増幅しているとの見方が強まったのである。

その原因には幾つかの要素がある。もちろん北朝鮮の核開発や長距離ミサイルの発展はアメリカ本土に脅威をもたらす。また、そもそもその脅威を増幅させたのはトランプ本人の威嚇声明などにも基づいているとも思う。どちらがどちらを起こしたか、という因果関係を証明するのは難しい。

しかしトランプ政権の言動にも多くの問題があるのは明らかである。そして今回のこの北朝鮮への見方も、トランプ政権の扇動が関係しているはずである。そして更に、トランプのこの扇動がアメリカ人の対外関係の見方に影響を与えているのは、あまり良い発展とは言えない。

加えて、アメリカに対する脅威は国家以外にも存在する。アルカイダやイスラム国、ロシアのファンシー・ベアからアノニマスまで、様々な脅威が存在する。それらを包括的に考慮すれば、より複雑な対外分析ができるはずである。





アメリカの中国人留学生を監視するFBI

先日行われたFBI長官の議会証言で、アメリカにいる中国人留学生をアメリカ政府が監視をしている、との記事があった。The Chinese Student Threat? と題された Inside Higher Ed の記事は詳細に詳しい。

アメリカでの大学教育に関わる者なら普通のことだが、我々の周りには中国からの留学生は多い。大学院でも先輩にも後輩にも何人もいたし、今の大学でも授業で教えている。

この記事によると、中国からの留学生に対してはアメリカ政府以上に、学問の人間が特にこの脅威に対する危機感が緩いようである。FBI長官は、naïveté on the part of the academic sector about this を指摘している。特に孔子学院を例にあげ、中国政府による投資がアメリカでの教育を不当に影響していると示唆している。

しかしこの記事の後半でも述べてあるように、留学生全般にはビザの取得の時点で既に厳しい審査が行われているのが現実で、これ以上具体的にどのような措置を設ける必要があるのか、などについては詳しく述べられていない。

また、留学生とは言っても専門分野でその性質が異なる。政治学を学ぶ留学生と、STEMを専門にする学生は異なる。更にこの記事に関しては、中国からの留学生によるスパイ活動が疑われている一方、特筆すべき具体例が挙げられていないことも問題の一つであるといえよう。


拙著「アメリカ国務省で起きている変化」が治安フォーラムに掲載されました

拙著「アメリカ国務省で起きている変化」が治安フォーラムの最新号に掲載されました。

昨日のエントリーに関することですが、今回の記事では国務省で起きている様々な変化がアメリカの外交力をいかに弱め、それが日本にどう影響するかについて検討しています。特に多くの高官の辞任やトランプ政権の外交面での暴走が、ここ1年のアメリカのイメージを弱めたことについて言及しています。

興味のある方は是非ご覧下さい。

外交官が減り続けるアメリカ国務省

国務省での人材欠如の問題は今に始まった話ではないが、トランプ政権になりその問題が悪化している。数日後の発行される「治安フォーラム」でも述べているが、この問題は日本にも直接影響を与えるため深刻である。

今朝の Defense One では、国務省の外交官の数が減ってきている現状を最新のデータを用いて示している。

State Department Lost 12% of its Foreign Affairs Specialists in Trump’sFirst 8 Months

娘の成長

赤ん坊の成長は早く面白い。前からそうだったが、ここ最近になって笑顔がどんどん可愛くなってきた。

うちの子はセサミ・ストリートが大好きである。朝の8時半になると毎日テレビでエルモが出てきて、エルモが歌いだすと必ずテレビを向き、喜ぶ。エルモの歌を歌ってあげると、両手をあげて喜ぶ。なのでエルモのぬいぐるみを買ってあげた。

最近、我が家では日本のテレビを観れるようにした。24時間観れる。アンパンマンや相撲やバラエティなども観れるのである。エルモとアンパンマン、どっちのほうを気に入るのか、少し気になっている。アンパンマンのほうを好きになってしまったら、どうやってぬいぐるみ買えばいいのか。

相変わらず大学に連れて行くと、学生が娘のことを見に来る。白人の女子大生が大半を占める我が大学、アジア人の赤ちゃんに興味を持っている。先日、家族で大学の学食を昼食を食べていた時も、娘がめっちゃ注目を浴びていた。我々が通ると会話を止めてこっちを見て来るのである。日本語でいう「あらー可愛い」という感じで声をかけてくるのである。

私の授業でもこんな調子で集中して聴いてくれよ。

チャンチャン。

Cheeburger Cheeburger に行ってみた

先日、仕事と買い物の間の時間をぬって、Cheeburger Cheeburger というチェーン店で昼食を取ってみた。アメリカの十数の州で展開しているファストフードのようだが、今まで一度も聞いたことがない名前だった。

店内に入るとそこにはいかにもアメリカというようなインテリア。ハンバーガーの店である。

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急いでいたこともありすぐに席につき、早速オーダー。今回試したのは照り焼きバーガーである。すぐに調理に取り掛かり、完成まで5分。味は予想以上に良かった。

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フィリピン渡航者募集のお知らせ@カーネギー評議会

ワシントンのカーネギー評議会が、今年の10月にフィリピンに渡航し仕事をする方を探しています。日本人も対象です。渡航費用や滞在費も出るようです。

興味のある若者は是非どうぞ!

https://www.carnegiecouncil.org/news/announcements/2018-05-02-call-for-applications-for-manila-philippines-fact-finding-trip-october-2018

元教え子の陸軍大佐からのメール

先週、あるメールが届いた。空軍戦争大学での1年目に仲の良かった陸軍大佐からである。

彼はもう退役し、コントラクターとして米軍で勤務している。現役時の専門はミサイル防衛で、引退した今は監査をやっている。

近くフィリピンに出張ということで、私と当時一緒に行った出張を思い出し、久しぶりにメールしたいと思ったのだと言う。昔と変わらずメチャクチャな文法のメール(これはよくある事で、これでどうやって大佐に選ばれるのか昔は不思議に思っていた)だが、私にとっては嬉しい限りである。

元気にやっているようで、こちらも元気だと返事をした。

思えば、私が1年目に担当した佐官らはそのほとんどが大佐として退役し、今はもう別々の仕事に就いている。戦争大学を卒業して将官になる大佐は10%と厳しい世界である。そもそも米空軍の大佐のうち将官に昇進できるのは5%なのである。年齢で言えば、50代前半で次の仕事を探さなくてはならない。

一方で海外から戦争大学に派遣される大佐らは恵まれている。彼らの多くは母国ではエリート中のエリートであるため、そのほとんどが順調に昇進し、母国で重職に就いている。

しかし大佐で辞めている佐官もマックスウェル組には多い。私が担当した台湾、バングラデッシュ、ケニアなどの大佐は様々な理由で軍服を脱ぎ、民間で勤めている。ギリシャを含む、ここ数年のうちに大不況に陥った国家の軍人も給料が激減し、民間の給料よりも低くなっているため、退役の道を選んで新しい職業についている者もいる。

米軍を含め軍隊の上級佐官は凄まじい権力と資源を持ち合わせている。しかし長い目で見れば、彼らのキャリアは驚くほど短く、経済的にも真剣に考えなくてはならない仕事なのである。

銀行の金庫の中でコーヒーが飲める喫茶店

先日、通勤時に少し時間があったので、大学近くの喫茶店に寄ってみた。着いて初めて気がついたのだが、そこは「銀行の金庫の中でコーヒーが飲める喫茶店」だったのだ。その名は Shaw's Coffee。世界ではここ一軒しかない、めっちゃローカルな喫茶店である。

早朝、車を止めて入り口を望む。

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入ってコーヒーをオーダーし、ソファに腰掛ける。写真は撮らなかったが、店内は珍しく植物で飾ってある。緑と茶色の調和が美しい。綺麗に掃除、そして整頓されていて、心地よい。

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早朝で授業もあるため長居はできなかったが、店員に話を聞くと喫茶店になる前は銀行の建物だったそうだ。なので金庫も残っている。さらにその金庫の中でコーヒーを飲むこともできた。

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これが金庫の中。狭くて金色のインテリアで正直言って落ち着かない。サクッと一杯飲んで店を後にし、大学に向かった。

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駐韓大使任命の失敗劇から学ぶこと

ビクター・チャの駐韓大使就任断念のニュースはある意味驚くべきことだ。

北への攻撃反対、韓国系の米駐韓大使起用を断念


話によると彼は1年以上前からトランプ政権に自分をアピールし、少なくとも一度は政権内のポストのオファーを受けるも、納得ができなかったため断念した経緯がある。そして今回ようやく駐韓大使にノミネートされ喜んでいたものの、政権内で繰り広げられた対北政策の議論に反対し、就任を断られたという。彼ほど共和党に精通する人間なら政権の問題点も理解していたはずなのに、大使の任命まで行き、そして結果としてそれを壊してしまうほど計算が外れていたのである。

しかしより重要な点は、彼には残念なことだが、今回のニュースは日本の国益のためになる点である。3月に出版される「治安フォーラム」で詳しく述べるためここでは割愛するが、彼のここ数年の研究を読むと至る所で反日の要素が見られるためである。そのような見解を持つ人物が東アジア政策の重役に就任すれば、政権内でも反日の政策決定に貢献するだろうということが簡単に想像できる。

数ヶ月前、ワシントンにいた時に日本の外務省の高官にそれを示唆した。それほどまで私は懸念していた。

ただ、駐韓大使の話がなくなったとは言え、彼がワシントンの東アジア政策コミュニティで影響力があるのは変わりは無い。今後も政策、そして学問の世界で影響力をふるい続けるだろう。それは彼にとって必ずしも悪いことではないと感じる。

しかし日本にとってより長期的で大きな問題は、アメリカの首都のワシントン、そして国際政治の中心地である土地に彼のような日本人がいない点である。政治学の博士号を持ち政策に精通し、アカデミアとポリシーの両方の世界で影響力を振るう日本人が誰一人いないのである。シンクタンクに所属する幾つかの日本人は学問的な権威を持ち合わせておらず、今回のようなポストに任命されるような本来のエリートの間での会話では出てこない。テレビなどの大手メディアに出て強烈な議論を行える力もないのが現実なのである。

この状況は変えなくてはならない。
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