Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

論文執筆の苦労・研究者として幸せに思うこと

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ここ数日、博士論文を頑張ったせいか自分でも納得のゆく進歩ができた。まだ終わりは遠いが、来週辺りには私のアドバイザー全員に、論文で一番重要なp「理論の章」を送ることができそうだ。私の同期で一緒に勉強した連中の間にも、少しずつだがはっきりと分かる論文進行の差が出てきた。私も脱落しまいと毎日頑張っている、自分のためにも、そして多くを犠牲にして待っていてくれる家族のためにも。私にとっては、博士課程平均終了率が入学者の半数という50%の数字は、今までの苦労とその過程で払ってきた犠牲と比べて考えるとあまりに大きく見えるのだ。

一方で、ある政治学の専門誌に、自分の博士論文の短縮版をもうすぐ寄稿するのだが、今はそのコピーを、コロンビア時代からの友人で、なぜか私の博士論文に興味を持つ、現在はニューヨークでもトップの法律事務所で働く(とにかく頭のきれる)友人に読んでもらっている。普段は私は外部の人間への論文内容の流失に気をつけているのだが、彼女の場合は専門外ということもあり安心している。良いフィードバックが来ることを望んでいる。

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普段、研究者として幸せに思うことが幾つかある。その中には例えば知的好奇心の満足や、専門分野への(将来的な)貢献などが挙げられるだが、今日思っていたのは、その研究内容に没頭する限り、人生で退屈することがないことがある。幸いにも論文の内容には、どこの誰に説明しても「面白い!」と返事を頂くことのできるトピックを選んだので、幸せなことに時間のある時にはその面白いパズルを考えていられ、特に飽きることもない。少しずつ脱落する同僚がいる中、自分が本当に面白いと思える博士論文の題を選んでよかったと思う。

写真:秋も深まる自宅前の紅葉

コロンビアの同窓会とイラク戦争のシンポ

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今日は12時半からコロンビア時代の友人と同窓会。先日書いたエコノミスト・インテリジェンス・ユニットに勤務するキム(写真中央)と、世銀で働くイネスと世銀近くのタイ料理屋、その名も Thai Kingdom にて。イネスとは卒業以来の再会であった(フェイスブックにゃいるけどね)。同じ専攻(国際安保)で一緒にコロンビアを出て早5年。あの時は勉強が大変だった。右は食後の写真)。

3時過ぎからは仕事場から徒歩15分のジョージワシントン大にてイラク戦争のシンポが開かれた。発表者は3人、スティーブベンサヘルコーブなど豪華メンバーが勢揃い。スティーブは昨日イラクの視察から戻ってきたばかりという事もあり話の中身が豊富。かなり学ばせて頂いた。

5時半からはお隣りブルッキングスでソフトボール部のキャプテンのエリンの誕生日会に招待されていたのだが、仕事で忙しく参加できず。残念。せめてと思いメッセージを送っておいた。仕事の区切りが良いときに、代わりにとは言ってなんだが、我が仕事場のハッピーアワーに30分ほど顔を出し一杯飲んできた。その後も一度仕事場に戻って少し済ませてから帰宅。歩き疲れて足が棒のよう。

福田首相の訪米を前に

福田首相の訪米を前に、今朝の Early Bird では金曜日に開かれるブッシュ大統領との会合の予定をトップニュースで報じた。日米関係のファンの方々、おめでとうございます。Early Bird とは National Journal という出版会社が毎日発行している、世界全国のトップニュースをアメリカの主要新聞社から集めたもの。以下はそこから抜粋。

President Bush "and Japanese Prime Minister Yasuo Fukuda will attempt to ease strained ties between Washington and its top Asian ally when they meet for the first time on Friday," Agence France-Presse reports. "'I think there is a noticeable stress in the relationship,' Randy Schriver, a senior State Department official in charge of East Asian relations during the first term of the Bush administration, told AFP."

これを読んで思うことは、

Strained?
Stress?

なのだが、今日の日米関係に特に際立った問題はないはず。この氏はインド洋からの海自の撤退が日米関係全体に及ぼす否定的な影響を暗示しているのだろうが、アメリカにとってはそれは財政的以外の問題ではない。逆に日米関係の悪化におののく日本側が勝手に「悪いことをした」と思っているだけである(そしてこうして記事にすることによりアメリカ側から日本の内政に影響を与えようとしている→ブーメランの原理ね)。

こう書くとまた外務省のエリートに「**さんは現実を知りませんね」と嫌味ったらしく言われてしまうが、アメリカを含む世界の現実を知らない日本の外交官など専門家は実は多い。そもそも英語を使って不自由なく意思の疎通のできる日本人政府関係者は希少なのだから。

シンクタンクの研究を見ていて思うこと

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ワシントンのシンクタンクにいると思うことがいくつかある。これは東京の平和・安全保障研究所で過ごした3ヶ月ではなかったことだが(日米研究機関のシステムは大きく異なる)、こちらの研究員は専門分野の問題に関して非常に明確で強い考えを持っている。そして同時に、結論にたどり着く過程でその人間のイデオロギーが強く反映される場合があり、結果としてその意見が実は非常に弱い学問的基盤の上に成り立っていることがあるのである。

コロンビアを卒業した直後、ワシントンの保守系研究機関を代表するヘリテージ財団で夏季インターンとして3ヶ月過ごしたが、ここの人間はワイルドである。当時の私でも度肝を抜かれるほど攻撃的なタカ派軍団なのである(左イメージ)。研究員の中には、当時核問題で揺れていた北朝鮮を爆撃すべきだと冗談交じりで話していた(半分本気)。ちなみに、ヘリテージの影響を受けてか、当時の北朝鮮の状況を書いたハト派的拙文はここ(「対北朝鮮政策は外交に基づく現状維持を」)。

自己を信じ意見を強く持ち主張することは素晴らしい。ただ問題は、シンクタンクで活躍する研究者はそれらの結論をしっかりした学問的裏づけ無しで発表する場合がある。思想が先立ち調査の過程で真実が外槍でつかれ結論が歪められると思われる場合がある。そのような場合、一度出した結論も新しい証拠が見つかれば180度意見が覆される可能性を残す。これらの弱い基盤の理由は人材不足、真剣な研究のための時間の不足、資金提供先への思想的忠誠の維持の必要性など幾つかあるのだが、そのリストからはイデオロギーの侵入ははずされるべきである。

政治問題を主張することは素晴らしいことであるのと同時に危険な業である。このブログがあからさまな政治的スタンスを取らないのは、時間がないのもあるが、その思想の注入の危険性に対し気をつけていることもある。日米関係などに関する私の意見は一定の研究をベースに出された結果であり、それらは例えば政策空間のリストで見つけることができる。

イメージhttp://www.whitehouse.org/initiatives/posters/index.asp
音楽:Rihanna - Please Don't Stop the Music (Official Dance Remix)
http://www.youtube.com/watch?v=q-vijc0oim0&feature=related

フィリーの夕食会・紅葉の写真

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先ほどフィリーより帰宅。走りっぱなしの3日間だった。大学内では知り合いに会うたびに会話で時間を割かれ、移動の時間は研究の書類と新聞を読みながら疲れて寝てしまうパターンの繰り返しだった。あまりに疲れたから今夜は両方のまぶたが定期的に痙攣しているよ。

昨日書いたように昨日は西野教授に近況を報告しいくつかの貴重なアドバイスを頂く。その後、図書館にて博論の研究を進め、同期でバスケ仲間のステファンと遭遇、会話が盛り上がる。学部の院生ラウンジにゆくと後輩のアン・マリー、ムラッド、アリソン、ロゼラ、ライアンらと再会。久しぶりの会話も盛り上がる。私の可愛い後輩たちである。

その後のピーター(ドリスデイル教授)を囲んでの夕食会は上手く行った。今回はピーターの友人である私の指導教官に呼ばれてわざわざワシントンから駆けつけてのホストだった。開始前の5時半ごろピーターご本人からお呼びがかかり、オフィスで初対面。自己紹介ののち博士論文の内容を説明、このブログでは決して明かすことのない論文の結論も問われたのでお答えした(論文の内容はブログだけでなく、自分の指導教官4名、私に個人的に近い研究者、米政治学会の担当者以外には誰にも明かしたことはない)。

午後6時、同僚のジュー、ク、ダレイと合流し、夕食会場のペンネへ。ピーターはオーストラリア国立大で日本政治の教鞭を最近まで取っており、今回は我が大学で東アジア政治を学ぶ我々4人を集めての夕食会だった(担当教授の名にちなんでエイミックス・クラブとでも呼ぼうか)。夕食時の話題は日本の現在から生徒各々の論文の内容、ピーターの今後の研究内容など。私は酒も入っていないのにリラックスし一人で大笑いしていた。些細な事で笑っていた。最近あまりいい事ないしな。

解散後は学部に戻って少し論文を進ませ(!)、電車に乗って担当教授宅へ向かい、犬の世話をして就寝。翌日(今朝)は5時半起きだった。そりゃ疲れるわ。

写真:教授宅で見つけた綺麗な紅葉。

フィリーで走りまくり

2週間ぶりのフィラデルフィアから。

月曜は正午から約半年ぶりに国際関係学部の西野教授のオフィスに寄らせて頂きしばらくの間お互いの近況の報告をする。4時半にもう一度会い残りの会話を済ます。午後6時からはオーストラリア国立大学のピーター・ドリスデイル教授のペン訪問を機に私が夕食のセットアップをしてあるので、それに参加予定。場所は学部前に位置するペンネにて。ワシントンには火曜日に帰ります。

政治科学に属さない政治学

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金曜は、午後3時過ぎから友人のソロブと約一ヶ月ぶりに再会。今回は近所のスタバで、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題大学院サイスにてインド陸軍の民軍関係について博士論文を書いているアニットに紹介され、一時間強話し合った。お互いの論文の内容は対反乱軍戦略に関していて緊密に結びつき共通点もいくつかある。

同時に、話の内容はやはりワシントンという土地柄に影響される。こちらで政治を語る場合、私の学部内で話されるような政治を科学として扱う伝統的な政治学スタイルではなく、あくまで現実的な政策の延長としての政治の方向に傾く。その場合、私が専門とする政治科学としての政治学は必ずといっていいほど批判の対象となる。確かに「非現実的だ」やら「政治学のモデルはあまり使えない」などの批判は理解できるし学問全体としての問題点も多い。私も単に科学としての政治を学ぶだけでは自分の視野が狭くなってしまうし、自分の専門分野の地平線を広げたいと思っているため、こうしてワシントンに引越し、決して大きくはないが厚遇してくれる防衛系のシンクタンクに属し、できるだけ「現実」とにらめっこしようとしている。

ただ私がそれよりも重要だと思うのは、本当に政治学を理解し能力のある人間というのは、単に問題点を突いて批判するのではなく、それらの存在を認めつつ、その弱点を補い分野全体の質を向上させるようより真剣な研究を用いて貢献する人間だとも思っている。そしてこれを実際にできる人間はワシントンにそう多くはない。一般的な話だが、自分の立場を不安に覚える人間ほど、目の前に出された理解不可能なものに対して批判するなどして、必要以上に攻撃的に出るものだと思う。

午後6時からは、フィリーから会議のためワシントン訪問中の学部の先輩のマートンとデュポン・サークルにて久しぶりの再会。近くのレストランのフロントページで夕食。話の内容は近況情報の交換から、学部内の「政治」、人間関係、博士論文の進行状況など。マートンは私が入学したときから常に相談に乗ってくれ世話してくれている私にとっては兄のような存在である。私の入学時にはほぼ毎週金曜日にバスケをする仲だった。彼も苦労している。もう40近い彼から私よりも複雑な人生の辛い部分を正直に語ってくれた。先輩というより同期の会話という感じだった。

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明日日曜から3日間フィリーに行って健太の世話をしています。

このブログが与える誤解

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今日は昼食時に核問題に対するアメリカとロシアの世論のゼミに参加。ある世論調査会社が今日発表した結果を元に、統計の説明から始まり(英語の資料はここから)、私の今年の仕事場のボスのブルースのプレゼンで締めくくった。彼のコメントの核心は、「核兵器廃絶に向かうべきだという米ロ双方の一般世論と両政府の核政策には大きな隔たりがあり、さらにその距離が拡大しつつある」というもの。右の写真はそのときの様子。

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最近、私の研究の熱中さに関するコメントを頂くことが増えた。確かにここのところ努力と集中の毎日だし(そうしないと博士は取れない)、努力家だと思われて嬉しいのだが、そこまで凄いわけではない。知っている人は少ないが、普段私が街を歩くときはあまりの余裕にこの甘いマスクで天使の笑顔を振りまいて歩いているのである。会話が弾めば静かな場所であろうが大声で爆笑するのである。このブログだけでは誤解が生じているかもしれない。こんなの読んでるだけでなくて、一度みんな俺に会いに来たほうがいいよ。元気でるで。にっこり

コーヒー飲んでハイパーになってセルビアの煙草を思い出す

未だ時差ぼけが続いているのか、今朝は6時前に目が覚めた。今日は午後6時からワシントンの日本人研究グループのプランジェのミーティングがあり、世界経済フォーラムで勤務する土屋さんの発表に元気で参加したかったので、眠くならないよう日中はコーヒーを飲み続ける。その結果ハイパーになりすぎ午後の仕事中にも手が震えだす始末。体をガクガクさせながら発表会に参加。楽しかった。土屋さんと会ったのは2003年のワシントンでのパーティ以来。彼も私を覚えていて下さった。

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先週ヨーロッパにいたときに感じたのだが、向こうの人はアメリカ東海岸と比べて煙草をよく吸う。文明の最先端にあろう地域がである。一番強く記憶に残っているのが、2001年にセルビアのベオグラードを訪れたとき。そもそもバルカン半島には煙草を吸う人の割合が非常に高い。その気になれば吸えるが普段は全く吸わない私にとっては苦しい場所だった(ただあっちの国はメチャクチャ面白い)。

そのベオグラードで、最高にシブい軍事博物館のあるカレメグダン公園を歩いていると(写真左、http://en.wikipedia.org/wiki/Kalemegdan)、まだ生まれたばかりであろう赤ちゃんを乳母車に乗せた母親(だと思った)が、煙草をおもむろに取り出し火をつけて吸い始めただけでなく、その赤ん坊に向かって煙を吐き出していた瞬間。あまり慣れないロシア語を駆使してでも注意するべきだった…。

Random Thoughts on Paris

ようやくプリドクの申請に一息ついたので久しぶりの中身のある更新を。

東海岸に戻って2日経ち、頭の中はもう博士論文のことで一杯なのだが、12年ぶりのパリはとても良かった。最後にフランス語を使う機会は2001年のノルマンディー上陸時(イギリス側から夜行フェリーに乗った)にあったが、パリを訪れたのはは高校卒業直前のパックパック一人旅以来だった。今回、18の時に泊まったバスティーユ近くのユースホステルを徒歩で探したが見つからなかった。私が場所を間違えたのか、ホステルが引っ越したのか。ただ忘れもしないのは、あのホステルで出る朝食は毎回フランスパン一切れだけだったこと。ちなにみフランス語の「ありがとう」は Merci。日本語に直訳すると「慈悲」という意味。にも関わらず貧乏旅行をする腹をすかした育ち盛りの若者に対してなんてことを! 

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今回はブリュッセルに向かう際に初めてTGVに乗車(写真右)。鉄道ファン、そしてかつての鉄道小僧なら誰でも一度は夢見る世界一の高速鉄道である。ブリュッセルまで片道1時間半の旅行。嬉しかった。フランス北部の田舎町の景色も良かった。感動した(小泉前首相風)。

フランス語の勉強を再開して気がついたのだが、英訳に頼らず原語のまま理解しようとしていたこと。原語そのままで考え始めるのはその言葉をマスターしようとする態度の強さとその事実を示す良い兆候である。ロシア語を学んでいた時期もそうであったが、昔はフランス語で夢を見ていたこともある。今回は書いてある言葉の7・8割は理解できたし、相手の言葉も6割くらい理解できた。もちろん、こちら側からのコミュニケーションはそう簡単にはいかなかったが、ホテルのチェックインなどは当然のこと、地下鉄回数券の購入、スーパーでの商品に関する質問、パリの国立図書館での利用カードの入手のための面接10分ほど(自分の状況を説明しなくてはならない、さすがに汗った)など全て仏語でこなした。仏語を不自由なく操れる方から見ればアホらしいが、3年間勉強した言葉を8年ぶりに使う者にとっては重要な進歩なのである。

フランスにいた間は、最終日を除いてブログの更新をしなかった。現地のネットカフェに日本語ソフトが無いこともあるが、同時に自分のラップトップを海外に持ってゆくと、接続の不安だけでなくそのあまりの快適さのため必要以上にホテルに引き篭もりがちになる。経費を最小限にするため、そして社会勉強のため、私の行くネットカフェはパリでは北アフリカ人、ブリュッセルではトルコ人が経営している薄暗い場所だった。客もほぼ全て非白人である。仏語ではなくアラビア語を耳にすることもある。PCのキーボードの文字の位置も冗談抜きで違うので、英語でメールするにもよく間違えるのである。国際政治を学ぶ人間にとってはファンキーで刺激的な空間である。

好きな研究のために好きな場所へ出張にいけることは贅沢なことだと思う。来年の6月には研究の一環でマレーシアとベトナムに行ってくる。この研究のペースを維持できるよう明日も頑張ろう。今回の写真はいいのがいくつか撮れたので、時間があるときにまとめて載せます。お楽しみに。

写真http://www.wired2theworld.com/paris05day7TGV1.jpg
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