Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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Analyst1 による A History of REvil 読了

Analyst1 による A History of REvil を読了した。



とても良い分析だった。REvil と他のグループの連携や会話の証拠が上手に提出され、このグループのここ3年間の変化が時系列的に表されている。特に良かった部分は最後の分析の部分で、最近のロシアの動きがランサムウェアのコミュニティにどのような影響を及ぼしているのか、という問題に答えている。

バレンタインデー

うちの大学のマスコット・ビリケン君とセントルイス・カーディナルズのマスコットによる、年に一度の特別コンビ。

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Borgen 観始め

デンマークのテレビシリーズ、Borgen のDVDを観始めた。日本ではコペンハーゲンとして知られているようだ。




講談社ブルーバックス「FB副社長・ヤン ルカンの語る「機械学習に求められている課題」」

とてもためになる記事。興味ある方は是非どうぞ。




アメリカの政治影響力の変化と岸田政権の外交政策

アメリカの政治影響力の低下は2003年のイラク戦争以降、ここ20年ほどで徐々に明らかになってきているが、今回のウクライナ騒動ではそれが顕著に表れている。仮にウクライナを軍事的に守る能力があったとしても、その意思の欠如は明確だ。NATOの枠組みで派兵する必要はないが、アメリカが独自に派兵し必死の覚悟でウクライナを守ろうとすることは可能だからだ。今のアメリカ国民にはウクライナという戦略的に重要な国を守ろうとする意図は見られない。冷戦期に世界各地で見られた米ソの代理戦争はもう見られない。

もちろん、世界レベルでの米露の軍事力を比べてみると、総合的には前者が優位かもしれない。少なくとも米国の専門家のほとんどがそう見ているし、アメリカ社会でその見解は広く浸透している。ただ、それもどの部分の能力をどう見るかで変わってくるため、絶対的な答えは引き出せない。ウクライナのような地域では明らかに、米軍の優位は反映されていない。そしてそのような「僻地」での戦争こそ、その国の戦略的意図が明確になる。もちろん、ウクライナを助ける意図がアメリカ国民に無かったとしても、それが必ずしも間違った政策であるということでもない。

ここ数か月に渡り、冷戦時に見られた二極化の再来がアメリカの論壇で再び議論されるようになった。今回のウクライナでの動きが米露による世界の二極化を導く保証はないが、アメリカの覇権の時代が終わりに近づいていることは大体明らかだろう。しかし一方で、世界の一極体制が終わるのであればそれは必ずしも二極化に向かうということではなく、以外にも三極化なのかもしれない。なぜなら今回の騒動で一番「儲ける」大国はというとアメリカでもロシアでもなく中国だからで、中国の戦略的な傍観がなければ、ロシアのここまで自由な動きは見れなかった可能性が高いからである。

ミドルパワーの日本はその狭間で静かに、しかし予想以上に上手に強国を相手にしていると感じる。産経新聞などを読むと岸田政権の政策に批判的な論調が見られるが、私が見る限りは限界の多い日本の環境の中で、中々上手に外交を引っ張っていると感じる。むしろ、それを牽引している政権内のブレーンが誰なのか注目している。
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