Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2008年05月

テロ関連の文献の書評2

前回に続いて。これは主にランドでの研究の準備の一環だが博士論文にもかなり使える。

Jihadi Suicide Bombers: The New Wave
http://www.nybooks.com/articles/21473

The Rebellion Within
http://www.newyorker.com/reporting/2008/06/02/080602fa_fact_wright

特に後者は力作。Lawrence Wright 氏は一貫して中東テロ問題の中枢となる記事を多く書いている。本稿では、エジプトのイスラミック・ジハード・グループの非戦政策への転換を、指揮官のレベルで細かく描写している。ただ、その変遷がなぜ起きたかの重要な問題は問われていない。この問題は対テロ問題では不可欠なので著者に直接メールして聞いてみようと思う。

新しい家族

最近、家族が拡大し、私に義妹ができた。話も合うしとても嬉しく思う。これからは毎年帰国するのが前にも増して楽しみになるだろう。そして今年は数年振りに正月にも帰京しようと思っている。

ランド研究所の競争率は…

最近ランドの職員に聞いたところ、今年は235人が応募し27人がオファーを受けたとの事。世界中に散らばる安保系専門家を目指す博士候補が応募する中、そしてテロ研究という、最近政治学でも最も人気のある部署の一つに配属され、最初は正直「なぜ俺が?」と思っていた(参照:http://psf.blog.drecom.jp/archive/202)。

ただ、競争率が9倍もあった事、ボスのデイビッドの歓迎、そして私の指導教官や同僚、ランドでの研究員がやたら褒めてくるのを感じて、その重大性が少しずつ分かってきた。それを実感するのはおそらくランドの夏のソフトボール・チームのユニフォームを着る時だろうな(ワクワク注文済)。予定している背番号はラッキー・ナンバーの7か、51

このブログを読んでいて国際安全保障問題に興味のある皆には、スワモスにしろランドにしろ、どんどん挑戦していって頂きたい。世界的に見てこの分野では日本人は非常に希少であり、我々はもっと貢献できるはず。能力の高くない、努力だけしか取り柄のない私がランドに入れるのなら、みんなはそれ以上できるはず。頑張ろう。

You speak "good" English かい!

1.先日、都営地下鉄に乗っていると、2人のアメリカ人がキョロキョロしながら座席に座っていた。迷ったのかな?と助けるために英語で話しかけると、浅草(私の地元)のことなど聞かれたので丁寧に説明した。浅草駅で降りた中年のそのカップル、最後に私に言ったことは、

You speak "good" English.

在米12年目で good な英語かい!怒る そういえば「浅草」という言葉を文字通り訳してあげた時、shallow (「浅い」という形容詞)を間違えて sharrow と発音していた。どうりで…。

2.これも最近の話だが、米大使館から新しいビザが届いた。面接直後即ビザがおり、発送まで要した期間はたったの一日。便利になったねー。ビザは今後5年間有効。つまり5年間も学生やれ言うとんかい!

3.月曜夜、とても嬉しい事が起こった。電話してくれてありがとう!!! にっこり

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名曲The Neverending Story
http://www.youtube.com/watch?v=3khTntOxX-k

対反乱軍戦略の論文を提出:テロ関係のウェブサイト

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先ほど、マラヤ危機での対反乱軍戦略の論文をジャーナルに提出。博士論文から派生したこの論文、研究開始から約2年の歳月をかけ、3月の国際関係学会での発表を経てようやく終了。後は良い結果を待つのみ。

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ランドの準備の過程で、幾つかのテロ関係のサイトを見ていて驚いた。リタ・キャッツが代表の Site Intelligence Group は最後に見た2年ほど前と比べ大幅に拡張され(当然だが)膨大な数の資料が載せられ、また昔テロリストのアイデンティティの論文で使った IntelCenter でも無料の資料がなくなってしまった。

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前から基本的にないが、最近特にプライベートの時間がない。6月15日までちょうど後一ヶ月。今年も誰にも祝われずに誕生日を迎えてしまうのかい!泣く

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Enya- One By One
http://www.youtube.com/watch?v=DhRWrf5-XH4

:写真の中のザワヒリは、アルカイダのナンバー2。つまりオサマ・ビン・レーデンの下になる。

テロ関連の文献の書評

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ランド研究所の準備のため、アルカイダを中心とするテログループのプロファイルの研究を少しずつ進めている。

とは言っても、ジハード系を中心とする宗教であるイスラム教に関しては非常に限られた理解があるだけで、更にアラビア語にも全く精通しておらず、私にはテロリズムという漠然とした概念を政治学の分野での英語のみでのトレーニングがあるだけで、テログループの文献を読む際に直面する固有名詞への対応に特に苦心している。

それでも今週、興味深い書評をいくつか見つけた。以下の二つは参考になった。興味のある方へ。

Iraq: Will We Ever Get Out?
http://www.nybooks.com/articles/21431

The Rise of the Muslim Terrorists
http://www.nybooks.com/articles/21438

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http://watch.windsofchange.net/pics/mideast_israel_palestinians_akcf101.jpg

『un homme et une femme』 Clementine
http://www.youtube.com/watch?v=GZ5kTWxj-3k&feature=related

感謝のメッセージ

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このブログで短期の休みを頂いているのにも関わらず今まで通りこのサイトを見て下さっている方々、どうもありがとう! 期待に応えられるかは分かりませんができる限り更新し続けたいと思います。また、私は久しぶりの東京で元気にやっております。

1.ヒラリー。選挙からの撤退はもはや時間の問題だが、オバマとマケインを比較して後者でも悪くないと思える事は残念。

2.先週から読んでいた War by Other Means は終了。対反乱軍戦略に関して責め所の少ない良い一冊だった。

3.それから読んでいるのはカリバスの The Logic of Violence in Civil War。内戦で発生する暴力の論理を説明する一冊。彼の「暴力はその地域を制圧するために行われる」という主張は興味深いが政治学会で特に斬新的なものではなく、同時にそれは内戦外の戦争形式(例:国家間戦争や extra-systemic war)でも当てはまり得るため、今後の検証が必要。ただその主張の証明の仕方や多大で詳細な歴史記述の仕方は圧巻。

COIN

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今回は帰国中に読んでいる対反乱軍戦略(COIN = COunterINsurgency)の書物に関して。先週ボスのデイビッドとの会合の際渡された、仕事の準備である。以下のは全てウェブで無料で閲覧・印刷できます。

1. War by Other Means: Building Complete and Balanced Capabilities for Counterinsurgency
http://www.rand.org/pubs/monographs/MG595.2/

非常な良書。今まで抱いていた「対反乱軍戦略の文献に関しては政治学で十分」という考えが一発で覆された。ただその高質は、政治学博士号所持者が中心となって国防総省と絡みながら行われた研究に頼る部分が大きい。

2. Enlisting Madison Avenue: The Marketing Approach to Earning Popular Support in Theaters of Operation
http://rand.org/pubs/monographs/MG607/

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マーケット論を戦場に応用する興味深いモノグラフ。自分の研究でもかなり使えると思う。ただ、最初の議論であるセグメンテーション(相手国の民間人を分割して統治する方法、いわゆる divide and conquor 論の延長)は、反乱軍戦略論で根強く残る、「勝利のためには相手の政治形態を統合する必要がある」という重要な仮定に根本的に対立する。読了。

3. Heads We Win -- The Cognitive Side of Counterinsurgency (COIN)
http://rand.org/pubs/occasional_papers/OP168/

対反乱軍戦略の重要な要素として、単なる物理的な攻撃だけでなく、相手を outsmart する資源と能力が必要と説く、ありきたりだが少しニュアンスの入った主張。日本行きの機内で読了。

ブログに関するお知らせ

さて、今日からしばらく東京に戻りますが、滞在中は研究等に完全に没頭する予定です。皆様ご存知の通り、ブログの更新は私の楽しみの一つでもあるのですが、残念ながら再渡米までの今後数週間は更新の頻度を下げる予定です。また、今年はプライベートの会合に参加する予定はございません(参照:来週からの予定)。

その間、私の近況が気になって仕方がない方、日本滞在中に実は職探しでもしているのではないかと血迷った考えをお持ちの方、「ランドでやるテロの研究の勉強会でも開いてくれよ」と思いの方、そんな奇特な方々がいらっしゃいましたらお気軽にメール下さい。本人喜びます。
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