Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2008年11月

カブラルのゲリラ戦術と国際関係

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ギニア・ビサウでの独立戦争を研究するにあたってゲリラ指導者であったカブラルの役割は避けられない問題である。カブラルを読んでいて興味深い点が2つある。

.単なる農業技術者であった彼が徐々にゲリラ戦争に浸透し、時間を経て書いたゲリラ戦術の書物と、ゲリラ戦争を専門にした革命家の毛沢東、チェ・ゲバラ、そしてホーチミンジャプを比べると、彼の知識と思考は悲しくなるほどアマチュアリッシュである。特に毛沢東の場合は当時のゲリラ戦争の先駆者として頼る事のできる書物が圧倒的に限られていた事実を考慮すると、カブラルは彼の例からもっと多くの案を引き出せていたとも思う。

.ただそれでも、ゲリラ戦争の知識も経験もほとんどない状態で、最終的に軍事的に圧倒的に強かったポルトガル軍を10年以上の年月をかけて倒したのは、カブラルが取り入れたゲリラ戦争を中心とした政治・軍事政策の巧妙なミックスであった。そしてなぜそれができたか。もちろん答えは幾つかある。

冷戦中の国際関係において強かった非植民地化の概念や国連などの制度もアフリカ諸国の独立を促進したが、特に重要な要素の一つはカブラルがいかに先輩ゲリラ指導者から学んだかである。キューバ、中国、ソ連、アフリカ諸国を訪れ各々の経験を学び取り入れながらギニア独自の郷土に合ったゲリラ戦争を展開した。そしてカブラルの戦闘パターンを見てみると、面白い事に、毛沢東が50年近くも前に提唱していたモデルに限りなく近い戦争をしていた事もわかる。

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このように研究していて、カブラルだけでなく、私にとって学ぶ事も多い。ギニア戦争については以下の本を同時に読んでいる。

.Patrick Chabal, Amilcar Cabral
.Amilcar Cabral, Unity and Struggle
.Ronald Chilcote, Amilcar Cabral's Revolutionary Theory and Practice
.Richard Gibson, African Liberation Movements
.Basil Davidson, No Fist Is Big Enough to Hide the Sky

博論と日本政治の授業

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ギニア・ビサウ(の位置は左地図)のケースをネタに研究を始めて、この1週間で30?という自分でも驚異的なペースで論文を進めている。この時期は去年と同じく奨学金の応募の時期であり、今週後半の感謝祭の休みを利用して仕事をしている。今冬の日本で3週間の間はおそらくペースダウンするだろうから今のうちの「書き貯め」ね。

来週火曜、日本政治の授業を一コマだけだが担当することになった。日本の官僚制度について経済学部のK君と。楽しみ。

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このドッキリ集、メチャクチャ笑った。言葉と関係なく楽しめる事ができるよ。ぜひご覧あれ。

funny knight prank

地図:http://www.nationsonline.org/map_small/guinea_bissau_small_map.jpg

近影

同僚のエリック撮影。ac744910.jpg

雑感シリーズ(デートにゲイツに松井にエンヤにCIA)

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.明日は美女2人とデート。ワクワク

.ゲイツ国防長官の留任が決定。予想通り。ま妥当だろうね。

.松井のWBC不出場。分かってたでしょ? 彼無しでも侍ジャパンはメチャ強いんよ。ちなみに阪神の真弓監督、俺前からファンだったんよ知ってた?

.エンヤが紅白出場! 今年は観たるで聴いたるで!

.可愛がってる後輩のティム、博士課程にいながらペンタゴンの政策課に属しているのだけれど、同時にCIAでも分析官してるって白状しやがった。そんなん俺に言っていいの?

.来学期の私の担当は国際安全保障のクラスになった。2年ほど前に教えた授業。また生徒を持てて嬉しい。

.博士論文のケーススタディ、アンゴラからギニア・ビサウに変えました。

.第二次中間試験の結果が出た。私は47人を採点して平均点が82点のB?。計5人のTAの中で一番低かった…。政治学部の「鬼」として知られるティムとズラルのは87点。「大和王国からの天使」と呼ばれる私がなぜ…。少し厳しかったかなー。

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目を閉じて聴いてよ。
Don't Cry for Me Argentina (Remix)
http://www.youtube.com/watch?v=ZobVi2TWl1s

こういう機会はもっと増やすべき

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橋下知事、討論会でまた教員批判 「教育には競争必要」

教育討論  知事「努力や我慢も必要」

橋下知事の主張全て知ることは不可能だが読む限りは彼に同意する部分が多い。討論を通して彼と府民のギャップが縮まる事を願う。そして結果はどうあれこの公開討議は素晴らしい機会であり、全国でも実施されるべきだと思う。

参加者が羨ましい。大阪熱いな。

大盛況の東アジア勉強会@ペン

金曜はペン大の東アジア研究会の勉強会のため、午前中は準備のため奔走する。会場を確保し食べ物と飲み物を購入。ようやく準備が終わり一息ついて、正午過ぎからジムでバスケ。友人のリック、ラス、ヘンリー、アドリアンらと1ゲームした後サウナで一汗かく。

4時、勉強会開催。今回は過去最高の22人(!)の博士候補が参加してくれた。それもそのはず、発表者のトミーのトピックは「20世紀前半の中国の政治史(詳細は英語でここ)」とあり私を含む多くの人間に興味をもたらす。勉強会はいつも通り2時間みっちりとこなし、その間トミーには研究内容と方法論に関する多くの質問とアドバイス一度たりとも止まる事がなかった。多くの人間にとっては刺激的なフォーラムだったと思う。そして今回からは初めて、私が先日お会いした朝日新聞に勤務されており今年ペンで客員研究員をされている方も参加された。

発表会の前には事務的な案件を幾つかこなし、グループの名前も投票を取って正式に決定。友人のネイサンが提案してくれた iDEAS (interdisciplinary Dialogue in East Asian Studies)が今後の我々の研究会である。そしてネイサンを筆頭に多くの友人がサポートしてくれたお陰で、このグループは着実に拡大化しつつある。最初のミーティングでは12人だった参加者に、ほんの2ヶ月の間で早くも10人新しいメンバーが加入してくれた。こんなダイナミズム溢れるグループを引っ張っていくのはとても楽しく誇りに思える。

その後は後輩のダレイ、ハオチアン、そしてハロルドの3人で韓国レストランにてお開き。相手は全員中国からの留学生で、最近映画化されて話題になっている「レッドクリフ」と三国志のお気に入りの武将の議論で盛り上がった。特に政治学部の後輩でもある前者2人とは、彼らのお気に入りである趙雲、張遼、諸葛亮、そして私のお気に入りである馬超と姜維で誰が歴史的に重要かで必ず言い争いになる。

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次回の開催日は12月5日の金曜日。東アジア学部のグレースが「日本のタイへのODA政策」に関する博士論文を発表する予定。この発表会も大盛況すること間違いなし。

祝! クリントン国務長官の誕生!

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日本の新聞ではまだのようですが、

Clinton Decides to Accept Post at State Dept., Confidants Say

世界政治の改善、そして日本の更なる独立化の可能性が高まった!

歴史学部トミーの勉強会のお知らせ

私が今年から主催しているペン大の東アジア研究会のお知らせです。興味のある大学院生の方は奮ってご参加下さい。その際は予めご連絡下さい。以下は私が研究会メンバーに送ったお知らせです。

Dear all,

As announced before, this Friday we are meeting at 4pm for our study group. The meeting will take place in Meyerson B7. Our presenter is Tommy, 3rd-year doctoral candidate in the history department and writing his dissertation on Chinese history in the early 20th century. His prospectus summary, which I personally find very interesting, is pasted below. And I'm sure that he will benefit greatly from your feedback this Friday.

Presenter: Tommy
Date: 11/21, Friday
Time: 4pm
Room: Meyerson B7

And yes, there will be snacks and soda, thanks to Nathan and people in the East Asian department. And yes, there will be a piece of good news to share with you. I look forward to seeing you soon.

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Presentation summary (first paragraph of his proposal)

The term, "youth," had an important role in the Chinese political discourse since the end of the Qing dynasty. For many Chinese intellectuals, the term represented "progressiveness," an idea and political inclination that were deeply implicated in the making of the Chinese nation. One of the telling examples is the "Young China" movement during the May Fourth era, which centered on the Young China Association (Shaonian Zhongguo Xuehui) established in 1918. The movement was inspired by "Young Italy" and the "Young Turks" in the 19th century. And it attempted to cultivate among Chinese youths, a consciousness of national survival, republicanism, and socialist thinking on the problem of poverty in relation to social unrest and imperialist invasion. Much of the intellectual and political historiography of modern China has not paid significant attention to the "Young China" movement. My dissertation makes a contribution to the scholarship by considering the unique and transforming role that the movement played in Chinese politics at the time.

図書館前のフクロウ

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昨日、大学の図書館前で見つけたフクロウ。しっかりと成長した立派なフクロウだった。真ん中にいるけど、携帯の写真の機能が悪くて見えねー。悲しい

3 of my favorite Erik Satie numbers ...

あなたはオバマの外交アドバイザー

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今週の国際関係学の授業では国際法や人権問題、多国籍問題などを扱った。そこで少し悩んだ結果、今日生徒に課したディスカッションのお題は、

「あなたはオバマ新政権の外交アドバイザーです。新政権発足直後、テロリーダーのオサマ・ビン・ラディンの捕獲に成功しました。ここでの問題の一つはは彼の法的な対処の仕方。国際法、国内法、人権、多国籍運動(transnational movement)などの問題に注目し、あなたがリアリスト的なアドバイザー、リベラルのアドバイザー、そして構造主義者のアドバイザーのどれかの立場を取り、理論的にビン・ラディンの対処の仕方を述べよ。そしてなぜその立場が別の2つの立場よりも優れているのか主張せよ。」

タイムリーで政治的に非常に重要で、もちろん正解のない問題なのだが、生徒は想像を膨らませて頑張って意見をぶつけ合ってくれた。中でも特に興味を引いた主張は、

1.グアンタナモは閉鎖し、アルカトラズを再開して(爆笑)そこで裁判にかけるべき(リアリスト)。

2.すぐにハーグの国際刑事裁判所に移送し、そこで国際法に照らして裁判すべき(リベラル、この意見はリアリストからの反発を招いた)。

3.テロの犠牲になったのはアメリカのみではない(これをアメリカ人が言う)。イギリス、スペイン、インドネシア、ケニア、タンザニアでもテロの犠牲者が出ているためアメリカの刑法のみでは裁かれるべきではない。

4.アフガニスタンで展開している北大西洋条約機構の軍事的役割を拡大させ、アメリカよりも先にビン・ラディンを捕獲してハーグに移送すべき。

など。
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