ギニア・ビサウでの独立戦争を研究するにあたってゲリラ指導者であったカブラルの役割は避けられない問題である。カブラルを読んでいて興味深い点が2つある。
1.単なる農業技術者であった彼が徐々にゲリラ戦争に浸透し、時間を経て書いたゲリラ戦術の書物と、ゲリラ戦争を専門にした革命家の毛沢東、チェ・ゲバラ、そしてホーチミンやジャプを比べると、彼の知識と思考は悲しくなるほどアマチュアリッシュである。特に毛沢東の場合は当時のゲリラ戦争の先駆者として頼る事のできる書物が圧倒的に限られていた事実を考慮すると、カブラルは彼の例からもっと多くの案を引き出せていたとも思う。
2.ただそれでも、ゲリラ戦争の知識も経験もほとんどない状態で、最終的に軍事的に圧倒的に強かったポルトガル軍を10年以上の年月をかけて倒したのは、カブラルが取り入れたゲリラ戦争を中心とした政治・軍事政策の巧妙なミックスであった。そしてなぜそれができたか。もちろん答えは幾つかある。
冷戦中の国際関係において強かった非植民地化の概念や国連などの制度もアフリカ諸国の独立を促進したが、特に重要な要素の一つはカブラルがいかに先輩ゲリラ指導者から学んだかである。キューバ、中国、ソ連、アフリカ諸国を訪れ各々の経験を学び取り入れながらギニア独自の郷土に合ったゲリラ戦争を展開した。そしてカブラルの戦闘パターンを見てみると、面白い事に、毛沢東が50年近くも前に提唱していたモデルに限りなく近い戦争をしていた事もわかる。
このように研究していて、カブラルだけでなく、私にとって学ぶ事も多い。ギニア戦争については以下の本を同時に読んでいる。
1.Patrick Chabal, Amilcar Cabral
2.Amilcar Cabral, Unity and Struggle
3.Ronald Chilcote, Amilcar Cabral's Revolutionary Theory and Practice
4.Richard Gibson, African Liberation Movements
5.Basil Davidson, No Fist Is Big Enough to Hide the Sky