Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2009年05月

論文終了・提案書・戦車

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今月最後の日は雨。自宅で仕事を進める。今日中に、明日締め切りの国際関係学会の提案書を提出し、対反乱軍戦略の論文を一本終わらせる。

明日は朝から東大図書館で調べ物があり、今夏お世話になる研究所の初日。午後4時からは、先月ペンでもお会いした、デューク大のフィーバー教授の講義に参加し、夜は小池兄と陽介と飲み会。

写真は先日の防衛大で撮った61式戦車。

新宿2丁目、防衛大学での講義、横須賀基地

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木曜は夕食後に新宿に向かい、私が今行っている日中関係の研究に必要な学者の方とのインタビューを敢行。最後にお会いしたのが2年前、同じスナックであった。

久しぶりの再会にこれ程となく緊張したが、お会いしてすぐに思い出して頂いて嬉しく思う。話はヨーロッパからアメリカ政治、そして日本の将来から阿部首相との対談など多岐に渡る。

実質的なアポ無しでのアプローチであったためか、肝心の研究に関するインタビューはやさしくかわされてしまった。が、それも勉強のうち。この方がアメリカ政治学者の最新の著作の中で日本の大戦略家の一人として記されている事実に変わりはない。また先生が出版してなさっている雑誌への寄稿の話も浮上してきた。

この会合をセットアップして下さった友人の記者と、正式に私をこの席に招待して下さった美術家の先生に深く感謝して、日にちが変わったあたりに帰宅。

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金曜午前6時起床。朝食を急いで取って電車に乗り横須賀へ。まちに待った防衛大学校での講義である。我々の命と生活を護るべく努力を続ける防大生の前で中途半端な講義はできない。このような日のために避けていると言っても過言ではないコーヒーを三杯一気に飲み干し、午前9時半、大学到着。そして今回ホストして下さった教授と半年振りに再会。

一度目の講義では「危機管理」のトピックで、私の経験を元に議論を指揮させて頂く。1時間半の講義だったが生徒からの反応もよく、高度の議論が出来、満足して授業を終わらせる事ができた。

昼食を挟んだ二度目の講義のトピックは「政策過程」。アメリカのイスラエル・ロビー、国際関係論から直接引き出した論理的な議論から講義を進める。

休憩を挟んだ後半の講義では、このブログのファンであると名乗る防大生がわざわざ会いにきてくれた。このようなストレートなアプローチには特に嬉しく思う。そして彼らを含む30名の生徒の前で、今年1月に披露したオバマ政権の軍事戦略のプレゼンテーションを行う。少し内容が難しいかと懸念していたがそんな心配も無用に終わり、20分ほどだった質疑応答の時間でも的を付く的確な質問が多くなされ、予想以上に刺激的な内容になった。また、非常に限られた時間であったが、肝心の彼らの日米同盟に対する考え方も少しずつだが分かるようになってきた。

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その後、当校で教鞭を取られる私の十数年先の高校の先輩に紹介され談笑。誇り高き城北生は日本国防教育の最先端でも大いに活躍している。

その後は教授に連れられて横須賀の米海軍基地にて夕食。私にとっては日本国内で初めての米軍基地で、横須賀の街の探索も含め、とても面白い経験になった。夕食ではアメリカ政治学や日本の教育環境の話など再び多岐に渡った。夜11時過ぎ、帰宅。

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Kayama - ATB
http://www.youtube.com/watch?v=zuSRaDhpn-Q

東大の博士グループ

水曜は昼前に自転車で東大本郷キャンパスへ。赤門をくぐり抜け会場へ。毎月恒例の博士候補の英語ゼミに参加。スペイン、アメリカ、韓国など世界中から院生が集まるこのゼミは自分にとって最新の日本研究を知る事のできる貴重な機会である。このゼミを指揮しておられるミシガン大政治学部のキャンベル名誉教授には2年ぶりの再会。

今回は日韓両国で研究をしているバークレーの博士候補の研究発表を聞いて質疑応答。とても良い発表だったのに加え、観客からは実に鋭い質問が相次いだ。来月は私の出番。恥じる事のないように頑張りたい。

ゼミのあとは参加者10人程に混ざって近くのインド料理屋にて会食。みんな初めて会う人達だったが私を暖かく迎え入れてくれとても盛り上がった。分野は多少違えど皆博士候補。我々には共通のスピリットがあり彼らと知り合う事は心強い。

その後は経済学部の図書館で調べ物。その後、兄貴分の小池さんに連絡し、キャンパス内のカフェにて小一時間ほど久しぶりのキャッチアップ。シブいネタでアヒャヒャヒャと盛り上がって帰途に着く。

デューク大の安保学生会議への参加

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今朝ネットを開くとデューク大からメールが一通あった。今年9月に開かれる、安全保障問題を専門にする卒業間近の博士候補のパネリストの一人としてデュークに招かれて自分の研究成果を発表できる事になった。これはデューク大、ノースカロライナ大(CH),ノースカロライナ州立大の3大学が集まってできたコンソーシアムがスポンサーしている学生会議。

毎年その分野の「新顔」が集まるその名も New Faces Conference という会議で、ドクター直前の研究者の間ではここ数年で人気の出てきたプログラムで、結構な競争率があったはず。3年前のスワモスのように、また新しい研究者の友達ができる事になった。嬉しー!

ただ一番嬉しいのはやはり、自分の博士論文の研究が学外にも認められつつあるという事。

結婚式の2次会と奇妙な夢のコントロール

土曜夜はコロンビア時代からの友人の結婚式の2次会に参加。新郎新婦共に幸せそうでこちらも嬉しかったし、何より式が楽しかった。コロンビアの同窓は私を含めて8人来て、数年ぶりの再会で皆でかなり盛り上がった。その後は東京駅近くの夜景の見える高層ビルで3次会。

ところで先日、面白い経験をした。ある晩寝ようとウトウトし始めたとき、夢を見始めている自分に気が付いた。そこでの自分はなぜか画商という設定だったのだが、そこで私がしたことは、「いやいや俺は画家じゃない。政治学者だよ。」と自己修正して、政治学者として夢をリセットして継続して眠りについた事。w

数ヶ月に一度のペースで私は自分の夢をコントロールする。例えば自分が死に直面する場合、「こりゃヤバイ」とその夢の雰囲気に途中で気付き、それなら起きたほうがいいと、自分でその夢を中断する事ができる。既に数回夢の中で死を経験しているので、そのような習性を身に着けることができた。まそんなのはどうでもいいこった。

ホワイトハウスの報道官でさえ知らない新駐日アメリカ大使

前回に続いて駐日米大使決定の報道に関して。昨日のネルソン・リポートにあるように、新大使ルース氏決定の背景が次々に明らかになってきているのでね。この辺の話は日本のメディアにはあまり流れていないようだし、それなら私が。

ルース氏の背景を見れば彼がアメリカの「政策コミュニティ」にとっての新参者である事はほぼ間違いない。今回の決定は本人の日本に対する政策や経験が決め手となったわけでなく、オバマ政権への集金能力と忠誠心を買われた古典的な「政治的」決定であった。皮肉を混ぜて言えば、ワシントンにいる数人の「日本専門家」に本音を尋ねたいほどである。

ただここで重要なのは、これを例とするオバマ政権の「日本離れ」を今更恐れる必要はない。東アジアにおいて、そして世界において中国の台頭は日本も潔く認めるべきである。そしてこの経験を元に教訓を学ぶべきである。

最後に、21日木曜日のホワイトハウスの記者会見(しかも一番最後)より抜粋。オバマ大統領のいるホワイトハウスの報道官でさえも、ルース氏の名前を聞いた事がなかったという事実が浮き彫りになっている。

.....

Q I only have one question.

MR. GIBBS: All right, one more.

Q One question. The U.S. Ambassador to Japan was recently appointed to John Roos, California attorney. What's the background on this?

MR. GIBBS: I'm sorry, say that again? John Roos?

Q John Roos was appointed to Japanese Ambassador. What's the background on this?

MR. GIBBS: Let me get -- we'll get you information on his nomination and his background and experience.

Thanks, guys.

Q Thank you, Robert.

.....

皆さん良い週末を!

ジョセフ・ナイの賢い選択

ジョセフ・ナイの駐日大使「内定」破棄のニュースは今日入ってきた。彼にとっては英断だろう。ニューデリー行きの可能性もあると聞いているが、彼がもし東京よりもボストンの方が居心地がいいと思っているのなら、それは理解できる。ただ一方であまり迷いもなかったのかもしれない。

今回の人事が表すように、日本の外交力、そして外交国家としてのアピールの低下は著しい。もしも日本が外交国家として世界の注目を集めたいのなら、今の方法が良いとは思わない。米国への依存、国際開発問題への過度の貢献、非軍事行為が主目的の自衛隊派遣、アニメ外交、(イチローや松井をネタにした)スポーツ外交(信じられないかも知れないが、現役外交官の言葉である)など、抜本的に見直す要素は多い。

我々の国を外交を支えている外務事務官個々の能力は高く、彼らの努力と国への貢献は素晴らしく尊敬に値する。ただそれもビドルの「軍事力」に関する主張よろしく、要は使い方である。何年も積み重ねてきた方向性の模索には、日本が思っている自国の「ソフトパワー」がどう世界に反映され、古典的なパワー外交が今後の日本に果たして合っているかをもう一度考え直すべきだと思う。

さらに追い討ちとしては、

駐日米大使人事「何も聞いていない」…日本政府に不快感

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ナイの駐日大使就任についての過去記事は、

ジョセフ・ナイ駐日大使の噂

愚痴るジョセフ・ナイと学問と政策のギャップ

「軍事的に去勢された」日本、ですか?

日本に帰ってきました

成田の検疫を無事に突破して先日、東京の実家に戻って参りました。やっぱいい国だねここは。

早速親しい友人とも会い、故郷にも日帰りで戻って散歩し、ここ数ヶ月食べる事のできなかった好物のツナマヨのおにぎり、照り焼きマック、そして「よっちゃんイカ(知ってる?)」を堪能。昨晩は小学校時代からの友人の篠と北千住で落ち合い昔話に花を咲かせた。

マルチの論文執筆の仕事に追われているけどやっぱ実家は落ち着くね。一方でこのエントリーの更新時間から分かるように時差ぼけは継続中。

研究課題の焦点

ここ数週間の間格闘し続けている日中関係の論文、ようやく一つの課題に絞ることができそうだ。ここまでで読破した書物は Kang の China Rising、サミュエルズの Securing Japan、そして Greg Austin と Stuart Harris の Japan and Greater China。最後の一冊が課題決定に一番役立った。

これで研究の的が絞れるから嬉しい。発表まであと5週間。

「サダム(フセイン)の家」

先日、2003年からのイラク戦争を描いた映画 House of Saddam (第3・4章)を観た。イラク戦争開始からサダム・フセイン捕獲までの過程をできるだけ現実に近く表現した良い映画。フセインの義理の息子カメルの「裏切り」の際の心理状況、息子のウダイとクサイの殺害に至る密告など興味深かった。ウィキピディアと多少の事実描写の違いがあるのが少し気になる。

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