Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

2009年05月

ホワイトハウスの報道官でさえ知らない新駐日アメリカ大使

前回に続いて駐日米大使決定の報道に関して。昨日のネルソン・リポートにあるように、新大使ルース氏決定の背景が次々に明らかになってきているのでね。この辺の話は日本のメディアにはあまり流れていないようだし、それなら私が。

ルース氏の背景を見れば彼がアメリカの「政策コミュニティ」にとっての新参者である事はほぼ間違いない。今回の決定は本人の日本に対する政策や経験が決め手となったわけでなく、オバマ政権への集金能力と忠誠心を買われた古典的な「政治的」決定であった。皮肉を混ぜて言えば、ワシントンにいる数人の「日本専門家」に本音を尋ねたいほどである。

ただここで重要なのは、これを例とするオバマ政権の「日本離れ」を今更恐れる必要はない。東アジアにおいて、そして世界において中国の台頭は日本も潔く認めるべきである。そしてこの経験を元に教訓を学ぶべきである。

最後に、21日木曜日のホワイトハウスの記者会見(しかも一番最後)より抜粋。オバマ大統領のいるホワイトハウスの報道官でさえも、ルース氏の名前を聞いた事がなかったという事実が浮き彫りになっている。

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Q I only have one question.

MR. GIBBS: All right, one more.

Q One question. The U.S. Ambassador to Japan was recently appointed to John Roos, California attorney. What's the background on this?

MR. GIBBS: I'm sorry, say that again? John Roos?

Q John Roos was appointed to Japanese Ambassador. What's the background on this?

MR. GIBBS: Let me get -- we'll get you information on his nomination and his background and experience.

Thanks, guys.

Q Thank you, Robert.

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皆さん良い週末を!

ジョセフ・ナイの賢い選択

ジョセフ・ナイの駐日大使「内定」破棄のニュースは今日入ってきた。彼にとっては英断だろう。ニューデリー行きの可能性もあると聞いているが、彼がもし東京よりもボストンの方が居心地がいいと思っているのなら、それは理解できる。ただ一方であまり迷いもなかったのかもしれない。

今回の人事が表すように、日本の外交力、そして外交国家としてのアピールの低下は著しい。もしも日本が外交国家として世界の注目を集めたいのなら、今の方法が良いとは思わない。米国への依存、国際開発問題への過度の貢献、非軍事行為が主目的の自衛隊派遣、アニメ外交、(イチローや松井をネタにした)スポーツ外交(信じられないかも知れないが、現役外交官の言葉である)など、抜本的に見直す要素は多い。

我々の国を外交を支えている外務事務官個々の能力は高く、彼らの努力と国への貢献は素晴らしく尊敬に値する。ただそれもビドルの「軍事力」に関する主張よろしく、要は使い方である。何年も積み重ねてきた方向性の模索には、日本が思っている自国の「ソフトパワー」がどう世界に反映され、古典的なパワー外交が今後の日本に果たして合っているかをもう一度考え直すべきだと思う。

さらに追い討ちとしては、

駐日米大使人事「何も聞いていない」…日本政府に不快感

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ナイの駐日大使就任についての過去記事は、

ジョセフ・ナイ駐日大使の噂

愚痴るジョセフ・ナイと学問と政策のギャップ

「軍事的に去勢された」日本、ですか?

日本に帰ってきました

成田の検疫を無事に突破して先日、東京の実家に戻って参りました。やっぱいい国だねここは。

早速親しい友人とも会い、故郷にも日帰りで戻って散歩し、ここ数ヶ月食べる事のできなかった好物のツナマヨのおにぎり、照り焼きマック、そして「よっちゃんイカ(知ってる?)」を堪能。昨晩は小学校時代からの友人の篠と北千住で落ち合い昔話に花を咲かせた。

マルチの論文執筆の仕事に追われているけどやっぱ実家は落ち着くね。一方でこのエントリーの更新時間から分かるように時差ぼけは継続中。

研究課題の焦点

ここ数週間の間格闘し続けている日中関係の論文、ようやく一つの課題に絞ることができそうだ。ここまでで読破した書物は Kang の China Rising、サミュエルズの Securing Japan、そして Greg Austin と Stuart Harris の Japan and Greater China。最後の一冊が課題決定に一番役立った。

これで研究の的が絞れるから嬉しい。発表まであと5週間。

「サダム(フセイン)の家」

先日、2003年からのイラク戦争を描いた映画 House of Saddam (第3・4章)を観た。イラク戦争開始からサダム・フセイン捕獲までの過程をできるだけ現実に近く表現した良い映画。フセインの義理の息子カメルの「裏切り」の際の心理状況、息子のウダイとクサイの殺害に至る密告など興味深かった。ウィキピディアと多少の事実描写の違いがあるのが少し気になる。

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