Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

2009年05月

国際政治と「注目」:テロ、豚インフル、北朝鮮のミサイル

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「注目」とは国際政治においてあまり注目されない課題であるが、国際政治どこを見ても必ず存在している現象である。

例えばテロというのは一般的に、無差別の暴力、もしくはその可能性を悪用して相手に己の政治意思を実行させる威嚇行為である。その政治意思を強要する心理的な過程において、相手の不安を最大に掻き立てるために必要な要素の一つとして、「注目」が挙げられる。相手国の市民、国際社会、そして相手政府からの注目がなければ、テロという行為は時間と共にその効果が薄れてゆく。

今回の豚インフルに私は大変迷惑を受けているが、その理由として、かつてない医学的な脅威の誕生に市民からの圧倒的な「注目」が寄せられ、空港などで取られている検疫が極度にレベルアップされたからである。

世界的に見れば数パーセントにも満たない数の人間がかかっただけで、それが国境を越えると恐れられ、日本にも大規模に輸入されるかも知れないという可能性のみで国民国家が短期的な混乱に陥り、何億の税金を用いて徹底的な阻止を行う。国民、メディア、そして政治家の「注目」があまりに強く、そして取られた措置に対する反応的な「注目」が実は、状況をさらに拡大させる。

国際関係の枠組みで考えれば、かつてないタイプのインフルエンザ一つで世界の注目を得て、ここまで国家を混乱に陥れる事のできる、時間的にも資源の意味でも、極めて安い武器である。

今朝、北朝鮮のミサイル事件に関する報告書が防衛省から議会に提出されたが、日本国民の「注目」もここには強く存在する。自国のミサイル技術を向上させる、もしくは衛星を飛ばすという目的のみで日本国民・メディアを混乱に落としいれ、われらの安心を保障するはずの防衛省を逆に撹乱させ、ミサイル防衛、そして今後の対処方法をめぐり何億の税金が使われる事になる。

注目とは国際政治において非常に安く、効果的な弱者の武器である。

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写真:
http://sankei.jp.msn.com/photos/life/body/090428/bdy0904280501007-p2.htm

つまらん研究日記

発表まで既に6週間を切ってしまった日中軍事関係の論文。自分が設定したパズルにはもちろん幾つかの仮説があるのだが、今回はそれが18個に上り、そられお互いの関係を考慮しつつ、どうしたらその数を絞れるかという作業が難航している。

同時進行で執筆中の博士論文も、先月の発表会で同僚に指摘された問題の解決に多く時間がかかっている。

論文が完成に近づくほど嬉しい事はないのだが、同時にそれは研究の複雑性を意味する。ある部分に一つの変化を許す場合、それは自動的に他の部分まで変化を起こし、最終的にそれが論文の全体的な変化を求めるため莫大な時間がかかる(いわゆる「システム効果」)。

一方で、どうにかその過程を避けて通れないか、簡単な近道を求めてもがく。ただしもちろんこの場合の近道は間違いのため、結果として時間のかかる手段を取る羽目にあい、その対処に苦心しながら、私の知る限りの文献を全て論文のメカニズムに埋め込みながら、一人で数時間悩み続けるのである。

英語版ウェブサイトと日中軍事関係

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就職活動開始まであと数ヶ月。少しずつ英語版の自分のウェブサイトを作り始めた。7月ごろに大学の政治学部のサイトにアップします。

例の日中軍事関係の研究のために読んでいた David Kang の China Rising重要な部分だけを読了。中国への東アジア諸国からの対応は現実主義と国民認識の視点から説明できるという種の主張は妥当だが、その議論自体非常に表面的だとの印象を受ける。当書は歴史の部分に焦点を重く置く一方、例えば日中関係の部分などに関しては、単純な政治学のツールを使う事さえ拒んでいる。特にメインの主張であるはずの国民認識の種類、構造、変化、そしてそれらの事例への適応などの議論は少し物足りない。

同時に読んでいるのが Richard Samuels の Securing Japan。日本に関する記述も研究もより深く少し時間を要する。

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Enya - One By One
http://www.youtube.com/watch?v=DhRWrf5-XH4

大学の花

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今日(火曜日)ワシントンで予定されていたソフトボールの試合がキャンセルになって、これ程となく落ち込んでいるのりっぺです。皆様おはようございます。

もうあまりモタモタしていられない6週間後の発表会。昨晩数時間、そして今日また数時間考え続けた結果、日中関係の政治学でようやく面白いパズルを思いついた。これを研究課題にしよう。当日は本郷にてすんごいプレゼン見せますんぜ。

写真は卒業式を前にした大学キャンパスで見れた綺麗な花。

日本帰国を前にして

今学期の期末試験の採点も先ほどようやく終わり、これで日本へ出るまで論文執筆に集中できるのりっぺです。皆様こんにちは。

今年度の終わるこの時期、先日の学部内パーティも含めて、学部には様々な変化が訪れる。

来年から入学する生徒は合計で13名になり、例年より少し多い数の後輩が生まれる。一方で学部を去る人間も数人いて、教授陣が数名、また生徒の中でも、試験が上手くいかず他の学部に移る人、方向性を見失って母国に帰国する近い友人もいる。

昨日の学部長のエイブリーとの昼食の中では、最終的に卒業する人の割合は、私が思っていた入学者の半分ではなく、実は25%程だそうである。先輩を見る限り、結構納得のいく割合である。

昼食の後はエイブリーと今夏の論文の進行予定を確認した。これから少しずつ就職活動の準備、ホームページの作成、そして論文執筆を組み合わせながらの毎日が始まる。その本格的な時期の前の1ヵ月半は日本で少しリラックスしたいね。

東京にいる間は中学の同窓会、大学での講義、親しい友人の結婚式、そして研究所での仕事など多く予定が詰まっていて、2年前の帰京時同様、充実した夏が過ごせると思う。
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