Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

2009年12月

東京帰還初日

全日空のビジネスクラスに乗って昨日夕方、東京到着。エコノミーから不意に格上げされるのが続き、最近運がいい。機内食にも、FAのサービスにも、ベッドにも満足して10数時間過ごすことができた。実家に戻り、家族と一緒に夕食を取ってから睡魔に負け就寝。

明らかな時差ぼけで、今朝は午前2時半起床。論文書いて仕事して、明け方のセブンイレブンでクレープと大好物のツナマヨのおにぎりをシブく購入。

午前、故郷の越谷に戻り別の家族と久しぶりの再会。ここで私にとっての新しい命と初めて会う事ができて感激。なんて可愛い。その後は大家族で埼玉県北部に赴き、大きな家にお邪魔させて頂き、昼食を取りながら家族ならではの暖かい時間を過ごさせて頂いた。普段は戦争や安保やら、世界の不安定性を題材に研究を進める私、こんな平和と幸せを実感させてくれるのは家族の暖かさ意外にはない。

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今回の日本滞在は、期間は短いが密度の濃いものとなる。友人との再会、コロンビア時代の同窓会、そして変化しつつある家族との大切な時間。心行くまでリラックスして楽しみたい。

そして私にとって最も大切な故郷の越谷には、また来週戻ります。

米陸軍が薦める図書・映画のリスト

hts_070602a9307c036_2ここでもたまに書く、戦時中に研究者を軍隊に従属させて現地の活動の効果を上げることを目的とする、Human Terrain System。最近発売された Foreign Policy 誌によれば、一人の研究者にかかるコストは平均して4000万円との事。その中には訓練、保険、住居など全てのコストが含まれる。私は基本的にこの制度を支持するが、アメリカ国内ではその効果、道徳などの面で議論が続いている。

その制度のウェブサイトを見てみると面白い。特に興味を引くのが、推薦図書と映画のリスト。一番最初に来るのがアルジェリア独立戦争の名画、Battle of Algiers。その下にはアメリカ陸軍を中心とする頭脳派軍人による、対反乱軍戦略に関わる著書が多く示されている。米軍がどのような考えを用いてアフガニスタンやパキスタンで活動を続けようとしている姿勢が、部分的にだが理解できる。

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イメージ:http://www.wired.com/dangerroom/tag/human-terrain/page/3/

今回のテロ未遂が示唆すること

ap_plane_explosive_091225_mn今回のテロ未遂が示唆することを簡単に。

もちろんアメリカ国内には短期的な混乱をもたらし、空港のセキュリティは前より増して厳しくなる。セキュリティ強化のためには多くの予算が新たに投じられ、同時にアメリカ国民に対しては、テロリストに対する戦いはまだ終わっていない、今後もより多くの犠牲を強いられるとの、心理的な影響を強く及ぼす。テロ行為が未遂に終わっても、それが引き起こす連鎖反応のコストは、テロを防ぐ側にとって多大なものになる。

同時に、今回のテロ未遂は、テロ行為の多くは実は失敗に終わる、そしてテログループの多くは実はその政治目的を完遂することなく終わってしまうとの、少しずつだが広まり始めた概念を強化する役割を持つ。今読んでいるクローニンの著書(How Terrorism Ends)によると、政治目的を達成するテログループは全体の5%未満だという。ランド研究所のセス・ジョーンズによると、目的を完遂することなく終わるテロ組織は43%に上り、また警察や諜報により摘発される確立も40%を超えるという。仮に今回の事件の首謀者がアルカイダと(現時点で噂されているように:参照)何らかの関わりがあったとしても、その成功率は驚くほど低く、今回の未遂は逆に驚くべき事ではないのである。

そして今回、この逮捕劇が意味する事はいくつかある。まず今後の取調べにより彼の属する団体の計画、能力、サイズなどがアメリカ側に前より増して知られることになる。得られるインテリジェンスはテロ組織全体の氷山の一角に過ぎないだろうが、それでも重要な知識になる事は間違いない。また、今回の失敗により、テロ行為がいかに難しいかをテロ組織側に対して強く証明することになり、今後のテロ活動と計画が難しくなる一方、テロを防ぐ側にとっても少しずつだが自信になる。テロ組織側にとっては、今回どの程度のインテリジェンスがアメリカに流れるかを把握する事に時間がかかる一方、アメリカ側の対テロ諜報活動に今後力が加わるため、それに対する防衛案も必要になってくる。

テロ活動の成功とは統計的に稀なもので、そのトレンドは今後も続くであろう。そのトレンドは世界各地で展開される軍事活動とはある程度距離を置くものであり、従ってアフガニスタンなどで行われている軍事行為の有効性は、テロ防衛の枠組みの元で再考慮されるべき議題であると思う。同時に、アフガニスタンでの現状を今後も「対テロ活動」と呼ぶことは適切ではなく、対反乱軍戦争、もしくはまた別のラベルが必要になるのかも知れない。

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イメージ:Investigators: Northwest Bomb Plot Planned by al Qaeda in Yemen

国際関係学の新書

app昨日大学から借りてきて読み始めた本は Antonio Guistozzi の Koran, Kalashnikov, and Laptop。この面白いタイトルの中身は2001年のタリバン崩壊後のアフガニスタンの対反乱軍の現状。期末試験の採点をしながら読んでいる。

そして今日から別の論文の執筆を再開。2月中旬にニューオーリンズで開かれる国際関係学会で発表する、国家対非国家主体の戦争で見られる軍事戦略の比較の論文。9月の半ばに後輩で友人のティムに読んでもらったら、多くの問題を指摘されたので、それらを踏まえて書き直し。幸いデータは面白いのが揃っているので、それを元に議論をまとめたい。

今後の日米関係

436fde26e26b83e9_84816217_xlarger昨日、病み上がりの中インフルエンザの注射を2発喰らってヘロヘロになりながら大学を後にしたのりっぺです。皆様こんにちは。

明日で大学も今年最後の日。今年も海外出張から論文提出やら、色々ありました。研究者の卵として、少しずつですが成長した気がします。毎日は楽しいけれど、同時に結構苦労もしております。

苦労と言えば、日本の外交政策。駐米大使が事実上の休日の日に国務長官から呼ばれて説教されただの報告があるが、特に心配する必要はない。オバマ政権の外交政策と民主党の政策はそもそも本質的に同じ方向に進むものではなく、このブログに書いたとおり、この程度の摩擦は想定済みである。実際私は、今後の日米関係は一般マスコミが言うところの悪化の一途をたどると思っている。我々一般市民は慣れるべきである。

そして同時に、国内外からこれから批判が強まるであろう民主党の外交政策は、その国内統一を維持するという理由で支持されるべきだと思う。私にとってはかつての自民党の外交政策よりもより親近感が沸くし、現時点の不安定性を除いてはその方向性に致命的な間違いは見られない。むしろ日本という国を世界のレベルでかつてよりもより強く、独立した責任のある外向政策に向かっている意味で、我々市民のサポートをこれからより一層必要になると思っている。

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