Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

経歴・学術論文等はこちら:https://researchmap.jp/katagirinoriyuki

ツイッターはこちら @norikatagiri1。

執筆、講演等の仕事の依頼は nori.katagiri@slu.edu までお願いします。

研究者の方々へ、Global Studies Quarterly (https://academic.oup.com/isagsq) への寄稿を是非ご考慮下さい。副編集長として編集作業に携わっております。お気軽にお問い合わせください。日本の多くの大学がそうであるように、JUSTICE (https://contents.nii.ac.jp/justice) 所属大学の方々はオープンアクセス出版料金が免除されます。

2009年12月

東京帰還初日

全日空のビジネスクラスに乗って昨日夕方、東京到着。エコノミーから不意に格上げされるのが続き、最近運がいい。機内食にも、FAのサービスにも、ベッドにも満足して10数時間過ごすことができた。実家に戻り、家族と一緒に夕食を取ってから睡魔に負け就寝。

明らかな時差ぼけで、今朝は午前2時半起床。論文書いて仕事して、明け方のセブンイレブンでクレープと大好物のツナマヨのおにぎりをシブく購入。

午前、故郷の越谷に戻り別の家族と久しぶりの再会。ここで私にとっての新しい命と初めて会う事ができて感激。なんて可愛い。その後は大家族で埼玉県北部に赴き、大きな家にお邪魔させて頂き、昼食を取りながら家族ならではの暖かい時間を過ごさせて頂いた。普段は戦争や安保やら、世界の不安定性を題材に研究を進める私、こんな平和と幸せを実感させてくれるのは家族の暖かさ意外にはない。

-----
今回の日本滞在は、期間は短いが密度の濃いものとなる。友人との再会、コロンビア時代の同窓会、そして変化しつつある家族との大切な時間。心行くまでリラックスして楽しみたい。

そして私にとって最も大切な故郷の越谷には、また来週戻ります。

米陸軍が薦める図書・映画のリスト

hts_070602a9307c036_2ここでもたまに書く、戦時中に研究者を軍隊に従属させて現地の活動の効果を上げることを目的とする、Human Terrain System。最近発売された Foreign Policy 誌によれば、一人の研究者にかかるコストは平均して4000万円との事。その中には訓練、保険、住居など全てのコストが含まれる。私は基本的にこの制度を支持するが、アメリカ国内ではその効果、道徳などの面で議論が続いている。

その制度のウェブサイトを見てみると面白い。特に興味を引くのが、推薦図書と映画のリスト。一番最初に来るのがアルジェリア独立戦争の名画、Battle of Algiers。その下にはアメリカ陸軍を中心とする頭脳派軍人による、対反乱軍戦略に関わる著書が多く示されている。米軍がどのような考えを用いてアフガニスタンやパキスタンで活動を続けようとしている姿勢が、部分的にだが理解できる。

-----
イメージ:http://www.wired.com/dangerroom/tag/human-terrain/page/3/

今回のテロ未遂が示唆すること

ap_plane_explosive_091225_mn今回のテロ未遂が示唆することを簡単に。

もちろんアメリカ国内には短期的な混乱をもたらし、空港のセキュリティは前より増して厳しくなる。セキュリティ強化のためには多くの予算が新たに投じられ、同時にアメリカ国民に対しては、テロリストに対する戦いはまだ終わっていない、今後もより多くの犠牲を強いられるとの、心理的な影響を強く及ぼす。テロ行為が未遂に終わっても、それが引き起こす連鎖反応のコストは、テロを防ぐ側にとって多大なものになる。

同時に、今回のテロ未遂は、テロ行為の多くは実は失敗に終わる、そしてテログループの多くは実はその政治目的を完遂することなく終わってしまうとの、少しずつだが広まり始めた概念を強化する役割を持つ。今読んでいるクローニンの著書(How Terrorism Ends)によると、政治目的を達成するテログループは全体の5%未満だという。ランド研究所のセス・ジョーンズによると、目的を完遂することなく終わるテロ組織は43%に上り、また警察や諜報により摘発される確立も40%を超えるという。仮に今回の事件の首謀者がアルカイダと(現時点で噂されているように:参照)何らかの関わりがあったとしても、その成功率は驚くほど低く、今回の未遂は逆に驚くべき事ではないのである。

そして今回、この逮捕劇が意味する事はいくつかある。まず今後の取調べにより彼の属する団体の計画、能力、サイズなどがアメリカ側に前より増して知られることになる。得られるインテリジェンスはテロ組織全体の氷山の一角に過ぎないだろうが、それでも重要な知識になる事は間違いない。また、今回の失敗により、テロ行為がいかに難しいかをテロ組織側に対して強く証明することになり、今後のテロ活動と計画が難しくなる一方、テロを防ぐ側にとっても少しずつだが自信になる。テロ組織側にとっては、今回どの程度のインテリジェンスがアメリカに流れるかを把握する事に時間がかかる一方、アメリカ側の対テロ諜報活動に今後力が加わるため、それに対する防衛案も必要になってくる。

テロ活動の成功とは統計的に稀なもので、そのトレンドは今後も続くであろう。そのトレンドは世界各地で展開される軍事活動とはある程度距離を置くものであり、従ってアフガニスタンなどで行われている軍事行為の有効性は、テロ防衛の枠組みの元で再考慮されるべき議題であると思う。同時に、アフガニスタンでの現状を今後も「対テロ活動」と呼ぶことは適切ではなく、対反乱軍戦争、もしくはまた別のラベルが必要になるのかも知れない。

-----
イメージ:Investigators: Northwest Bomb Plot Planned by al Qaeda in Yemen

国際関係学の新書

app昨日大学から借りてきて読み始めた本は Antonio Guistozzi の Koran, Kalashnikov, and Laptop。この面白いタイトルの中身は2001年のタリバン崩壊後のアフガニスタンの対反乱軍の現状。期末試験の採点をしながら読んでいる。

そして今日から別の論文の執筆を再開。2月中旬にニューオーリンズで開かれる国際関係学会で発表する、国家対非国家主体の戦争で見られる軍事戦略の比較の論文。9月の半ばに後輩で友人のティムに読んでもらったら、多くの問題を指摘されたので、それらを踏まえて書き直し。幸いデータは面白いのが揃っているので、それを元に議論をまとめたい。

今後の日米関係

436fde26e26b83e9_84816217_xlarger昨日、病み上がりの中インフルエンザの注射を2発喰らってヘロヘロになりながら大学を後にしたのりっぺです。皆様こんにちは。

明日で大学も今年最後の日。今年も海外出張から論文提出やら、色々ありました。研究者の卵として、少しずつですが成長した気がします。毎日は楽しいけれど、同時に結構苦労もしております。

苦労と言えば、日本の外交政策。駐米大使が事実上の休日の日に国務長官から呼ばれて説教されただの報告があるが、特に心配する必要はない。オバマ政権の外交政策と民主党の政策はそもそも本質的に同じ方向に進むものではなく、このブログに書いたとおり、この程度の摩擦は想定済みである。実際私は、今後の日米関係は一般マスコミが言うところの悪化の一途をたどると思っている。我々一般市民は慣れるべきである。

そして同時に、国内外からこれから批判が強まるであろう民主党の外交政策は、その国内統一を維持するという理由で支持されるべきだと思う。私にとってはかつての自民党の外交政策よりもより親近感が沸くし、現時点の不安定性を除いてはその方向性に致命的な間違いは見られない。むしろ日本という国を世界のレベルでかつてよりもより強く、独立した責任のある外向政策に向かっている意味で、我々市民のサポートをこれからより一層必要になると思っている。

-----
イメージ
http://images.teamsugar.com/files/upl2/10/104169/08_2009/436fde26e26b83e9_84816217.xlarger.jpg

ソマリア論文の完成にテロリズムの終焉に関する一冊

この1・2週間を使って頑張って書いたソマリア紛争の論文、もう完成に近づき、あと数時間でジャーナルに送付する。結構いい感じでまとまり自分でも気に入っている。そしてこの論文を通して、ソマリアの政情を以前より増して理解する事ができて嬉しく思う。ちなみにこの論文は、合計で10章ある私の博士論文の中の1章を修正・加筆したもので、題名は "Containing the Escalation of Somali Insurgency: Lessons of British Counterinsurgency in Somaliland" でした。

同時に進んでいるのが、別のジャーナルから頼まれた書評のために読んでいる、クローニンのテロリズムの終焉に関する一冊。読んでいて予想以上に良い本だと分かった。テロの授業を教える際には必須図書として選ばれるべきだと思う。比較対照として読んでいた、セスの How Terrorist Groups End よりも深く、論理的で詳細も満載の素晴らしい一冊である。

前回ジャーナルに寄稿した、David Ucko による The New Counterinsurgency Era の時のように、またこのブログでも時折見られるように、私による書評は一般的に非常に批判的である。ただクローニンのこの本は欠陥を見つけるのに苦労するのと同時に、その欠陥を批評の一部として構成し、更にその批判を私自身が守れるだけの論理立てをするのに苦労する。従って必然的に褒める部分が多くなり、この本を読んでいる自分に対しても、その価値を味わいながら読書を楽しむ事ができる。

日本のプロ野球チームを全て言えるアメリカ人を見つけた

valiant_american_soldier_p%20copy今日、学部の院生ラウンジで後輩のエリックと話していたら、最近の松井のエンゼルス入りの話から入り、日本のプロ野球の話になって少し盛り上がった。

そしたら突然エリックが、日本のプロ野球チームの名前を言い始めた。「読売ジャイアンツ」から始まって「阪神タイガース」、「近鉄バファローズ(古)」、「西武ライオンズ」など。流石に途中でスローダウンし始めて、「他になんだったっけ」と言うので、「ダイエー…」や「日本ハム…」と最初の言葉を言ってやったら、「ホークス」や「ファイターズ」と、その下を全て当ててた。www

アメリカ保守思想を強く信じる、すしが大好きな親日の可愛い後輩、エリックのブログはここから(本人の承諾得)。

http://www.erictrager.org/Trager/Welcome.html

-----
数日前にウェストポイントで発表されたアフガニスタンへの米軍増派政策。正規軍は3万兵の予定だが、それに伴い派兵される請負軍人(private soldiers もしくは簡単に contractors)の数は何と倍に近い5万6千。アフガニスタンで活動する請負軍人の数はこれで16万近くに及ぶという。これはアメリカの軍事史でみる最大の請負軍人の数だが、それ以上に重要なのは南アジア地域における請負軍人への米軍の依存度と、実際の軍事活動の規模の大きさ。

結局今回は、3万ではなく、大体で10万兵近くの増兵だった模様。

(ミーハー再び)今この有名人を見た!

今ニューヨークにいるんだけれど、今さっきクリス・ノースを見た。ほんの2m先で、携帯で話してた。セックス・アンド・ザ・シティに出てる彼、その存在に気づいたのは俺だけだった(よ)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%B9

見た感じは普通のおっさんだった。ジーパン履いて、黒いジャケット着て、さすがにいい男だけれど、俺の方がカッコ良かったマジで

すんご。

場所はアスター・プレイス前のスタバにて。午後2時半。

綺麗だね

今年はくっきり、ふたご座流星群【2009】

http://www.youtube.com/watch?v=WtcsJZY_jLo

ここに政治は見つからんかね。

日本帰国までのカウントダウン

天候と気温のあまりに急激な変化に耐えられず不意に風邪を引いてしまったのりっぺです。皆様こんにちは。

ただもう快方に向かっているのでご心配なさらずに。おかげさまでソマリアの論文もしっかり進んでおります。

日本への帰国までもう数日となりました。今年最後の週に東京に戻ります。あまり長居はできないけれど家族や友人との再会を楽しみにしています。

-----
いいニュースが一つ。来年2月の口答試験の際、遥か彼方のダートマス大で教えている指導教官のダリルが、わざわざ(大学の位置する)ニューハンプシャーから飛行機で来てくれ、私の口頭試験に参加してくれる事になった。めっさ嬉しい。ダリルの当日の存在は特に必要ではないのだけれど、博士過程で最も難しい事の一つが指導教官とのスケジュールの立て方なので、今回上手く行きそうで良かった。彼には本当に可愛がってもらってる。

-----
最後になりますが、現在このブログの引越し先を探しています。今後数週間のうちにアドレスが変わる可能性がございますので、ご注意下さい。その際にはもちろん、ここに移転先を記す予定です。
月別アーカイブ