Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2012年09月

日本の領土問題に関して

私がこのブログにここ数ヶ月の日本の領土をめぐる問題に関して意見を述べない事に疑問を持つ人がいるかもしれない。それは意図的である。私の意見は特に規制されないが、中途半端な分析をここに載せるほど問題は簡単ではない。ただ言えるのは幾つかの細かい点を除いて、韓国・中国・台湾に対するここ数ヶ月の民主党の強気のスタンスを実は私は評価する。アメリカ重視の外交政策から独立国家としての健全な政策に向かうシフトの表れだと感じる。同時に、今後民主党が同盟国アメリカからの外圧(特に今回の国連総会)にどう反応するのか注目している。

また、これは私のコロンビア時代からの知り合いも言っているのだが、韓国・中国・台湾は海外のメディアや学問の世界を利用して英語で各々の国益を主張しているのに対し、日本人学者やコメンテーターは海外で英語を用いて発信する事はほとんどなく、単に日本国内での議論を高めているだけだとの見方に賛成する。日本国内で沸騰する感情は必ずしも海外では思うとおりに通用しない。例外は海外で発信し続ける数名の外交官だが、彼らの日本の国益の主張は一般から見て数が少なく、その交信の過程も不透明で、ほとんどの場合は韓国・中国・台湾の主張に対して物を言うだけの極めて防衛的な動きでしかない。外交で重要な戦略コミュニケーションの分野で、積極性が痛々しいほど足りないのである。また、今回の領土問題に直結しているはずの日本の安全保障分野の官庁からも、海外のメディアや政策サークルに対して強い主張が見られない。

これは単に日本人の英語能力の問題だけではない。日本の国益に直結するはずの、極めて重要な軍事や領土問題の研究と教育を今まで奨励してこなかった問題でもある。日本の外交・安全保障政策は大きな意味で多くの損をしていると思う。もちろん今後数週間・数ヶ月のうちに大きな変化が起こることもないだろうが、私は今回の対立を通しての方向転換を望んでいる。決まり文句に聞こえるだろうが、日本は本来重要なハード面の安全保障問題に関してその国益を海外でもしっかり英語で発信できる、元気のある若手の民間人の育成により積極的に投資するべきだと思う。

今年度の授業が開始

今年度の授業が始まった。最初の授業は「アジアの世紀」という選択の授業。東アジアの将来に強い興味を持つ留学生も数名いて多角的な視点から議論を進めることができた。今後一ヶ月の間は週2・3のペースで授業を行う。途中の授業ではアジア史や政治を専門にする同僚にもゲスト講師として来てもらう。

午後はSSQの編集委員会に参加。2本の論文を編集委員で徹底的に議論。普段は笑顔でジョークを言い合う仲もこの場では真剣になる。予定よりも数十分延長して会議が終了。翌日の水曜日は有給を取り体調を整えながら論文を執筆。翌日の授業の準備も進めた。

海軍航空隊@ペンサコラ・パート2

土曜日午前はホテル近くに位置する国立海軍航空隊博物館へ。F14トムキャットが入り口で迎えてくれる。入場は無料で、中には有料のIMAXシアターも完備しており1時間おきに映画が流れている。

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広い館内には何十を数える飛行機が展示されており、その中の幾つかには乗ることも可能。他にも戦闘機や宇宙船のシミュレーターもあり、我々は湾岸戦争時に使われた戦闘機に乗ってみた。

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旧日本軍の「紫電改」もディスプレーに。日の丸と鳥居の組み合わせが何とも…。
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博物館で2時間ほど過ごし、その後はモールで中華料理のランチを当基地で訓練をする士官候補生らに囲まれながら食べた。午後からはホテル前のビーチで3時間ほど遊泳。人数少ないビーチで白い砂浜を存分に楽しんだ。風は弱かったが波もほどほどで泳ぐにはもってこいの30度台前半の気温。水温も暖かく、水もきれいで、浅い部分でも小魚が群れを作って泳いでいた。

夕食は基地から車で10分ほどに位置するペンサコラ市内の日本食屋、Yamato Oriental Cuisine へ。市内唯一本物の日本食を提供するこのレストランは日本語も通じ、内装もしっかりしておりお座敷も3席ほど用意してある。ここで試したのはカツ丼と豚カツ。

翌日日曜日はホテルで朝食を取った後、チェックアウトしてペンサコラ市内のヘルシー食品店、Ever'man Natural Foods へ。ここでの感想は、中々品揃えはいいが少し値段が高い。その後は Maria's Fresh Seafood Market に寄り、地元産のエビとヒラメをゲット。フロリダ北部の滑らかな道を北上しアラバマ南部に入り、高速に乗って無事帰宅。りゅう

海軍航空隊@ペンサコラ

金曜日は仕事の後に車を飛ばしてフロリダ州はペンサコラの米海軍航空隊基地(Naval Air Station, NAS)へ。日本でも有名なブルーエンジェルズ(写真下)の本拠地である。

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3時間ほどのドライブでNASに到着後は早速予約していたロッヂにチェックイン。このホテルは基地内にあるビーチの目の前に位置しており、今回泊まった部屋からも白浜を見ることができた。

荷解きを済ますと車に乗り込み基地の中をドライブ。Navy Exchange のショッピング・センターなどを探索。ここでブルック・ブラザーズ特製の海軍の制服を発見した。他にも全てのサービスの制服や階級のピンなどが勢ぞろい。海軍だけでなくエアフォースを含む米軍のお土産もとても充実していた。

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その後は基地を出てペンサコラ・ビーチへ。30分ほどで目的地の Hemingway's Island Grill (下の写真はその入り口)に到着。地図でこんな場所にある。このレストランはネットでも評判が良く、文字通りビーチ沿岸に位置しており、外の席から見る浜辺は観光客の数も少なくムードも最高。早速シーフード・パエリヤ、エビフライ、そして白魚のサンドイッチをオーダーして堪能した。レストランの中では地元バンドのライブも同時にやっていた。その後はドライブしてホテルへ、就寝。

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翌日はゆっくり起床、とは言っても朝8時に基地全体で流れるアメリカ国歌でしっかり目覚める。ホテルの朝食を食べて海岸を眺め、少しリラックス。

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続く。

サイバー会議

来月上旬に基地の中でサイバー会議が開かれる予定。軍事、民間、そして日本の防衛省からの代表数名のスピーチの元、参加者全体で重要な問題を議論するという。時間を見つけて顔を出そうと思う。

ちなみにSSQの最新号はサイバー問題を特集した。関連論文を勉強してからの参加は特に効果がありそうだ。

朝の3時に…

昨日は三ツ星の将官が来校しアメリカの東アジア政策について授業をするというので、帰宅時間を遅くして飛び入り参加。話の内容はもちろん「ピボット」で、米軍将校がいかに東アジアの重要性を理解しているのが良く分かった。中国、朝鮮半島、東南アジア諸国の話題が中心であった一方、インドの話は聞けなかったのが意外に思えた。

授業が始まる来週までは比較的リラックスできるはずだが、今朝は3時過ぎに突然目が覚めた。博士論文を書き始めた頃からの癖だろうか、睡眠時間が短い時でも目が覚めると同時に体も起こし仕事を開始。コーヒーを入れて頭に刺激を加えながら論文を書き始めた。幸いにも体の疲れはあまり感じない。

それでも昼食後には職場で疲れが出てきたので今日2回目のコーヒーを飲んで対処。ここ数日疲れが溜まっているので週末は少しリラックスしたい。

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米中のライバル関係と世界覇権

日曜は起床後すぐに仕事を開始し、昼過ぎに論文一本終わらせ専門誌に投稿した。年末までに結果が出るのが理想。今回は米中のライバル関係と世界覇権に関する論文だったのだが、終わる前から幾つかの会社から出版の依頼が来ていた。今後の世界政治の方向性をいかに見ているかがわかる面白い経験だった。

関連する文献だが、Strategic Asia の今年度版が今月出版されるとの事。早速NBRに連絡して最新号を頼んでおいた。無料で読めるテリス氏のは中国の軍事増強を様々な視点から分析する良い論文だった。

Strategic Studies Quarterly

疲れきって帰宅した金曜日の夜は夕食後、自宅にてSSQ誌の編集会議の準備。提出された論文2本読んで後の会議で他の編集委員らと感想を議論するのだが、私の意見では今回は2本とも不可。特に厳しくする理由も必要もないのだが、ここ数ヶ月の間はなかなか肯定的な評価が出ていない。

それでも多くの良い論文が提出しているのでSSQは成り立っている。実際、送られてくる論文の中にはしっかりした理論と研究に豊かな想像力を織り交ぜた作品も多く、毎回驚きを持って論文を読んでいる。空軍の専門誌なのでもちろんエアパワーやサイバー問題に関する研究が多いのは事実だが、中国の軍事問題、中東の政治変化、アメリカの外交・経済政策など多岐に渡る。ただ一方で日本人研究者からの投稿は少ないので、読者の方で安保問題の論文がある方は奮って挑戦して頂きたい。

SSQ最新号はここから。過去の会議で議論した論文も数本入っている。ちなみにSSQではアジアの安全保障問題の特別号を企画しているので、興味のある方は是非ご連絡下さい。

加えて私の大学ではアジアの安全保障に関する新しいポストが2席空いているのでこちらも是非ご考慮して頂きたい。

イスラエルによるシリアへのエア・ストライク

2007にイスラエルが秘密裏にシリアで建設中の核施設を空爆したという事件に関する最新のレポートがニューヨーカー紙上で発表された。購読している方は是非読んで欲しい。

内容はここでは深く書かないし、正確性も確証できないが別のサイトでもある程度報じられている。また、当時日本の研究機関でも書かれている。

この出来事で重要なのはこのエア・ストライクが極秘として扱われている・いたという事だけではない。また、北朝鮮がシリアの核開発に関与していた可能性があり、いわゆる核拡散問題の一環としての国家間の利害関係の複雑さを証明する大切な事件であるという事だけでもない。

国際社会からの直接的な介入無しで内戦が続くシリアの今後を考える上で必要な要素の一つとしてイスラエルの見方と動きがある。ここ数ヶ月の間で過激さを増すイスラエルのイランの核開発に対する態度は、今後の中東政治・安全保障の状況とアメリカ外交政策の方向性を予測するのに役立つ。

過去数ヶ月、イランの核武装が中東政治やアメリカの外交政策にどのような影響を及ぼすかについての議論が、ワシントンを中心とする学者や政策研究者の間で起こった。ジョージタウンの教授がイランへの先制攻撃の必要性を唱えれば、彼の同僚がその意見に真っ向から反対し、そして国際関係学の重鎮の一人であるケン・ウォルツも議論に参加し、核武装したイランは実は中東の安定に貢献するのではないかという、彼らしい一環した考えをぶちまけ物議を醸した。

これらの問題の主な原因の一つとして必ず挙げられるのがイスラエルの核武装の問題である。もちろん極めてセンシティブなトピックであるため安全保障の研究もこれより先を深く掘り下げるにはある程度のリミットがあるのだが、そもそもこのシリアへのストライクを戦略的に考察する限り、中東地域の安全保障に関する現実と知覚の大切さが浮き彫りになってくる。
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