先日このブログでも軽く宣伝しておいたが、今回はここ数ヶ月の間物議を醸し続けている尖閣諸島の問題についてのフォローアップしたい。日本政府の見解では尖閣関連の紛争を「問題」として見ていないようだが、それこそ問題の一部だろう。世界が問題視する領土紛争の存在を否定し続けることにより、世界の見方とのギャップをわざわざ広げているのである。これでは日本がどう主張しようが、その対外宣伝の影響力は徐々に弱くなる。
大きな問題の一つに、尖閣に関する国際世論の形成と情報戦争に日本は遅れているというのがある。中国や韓国が各々の国のメディアのみでなく、他国の媒体やインターネットで英語を使い大体的に各々の国益を主張しているのに対し、日本外交の声は聞こえてこない。The Diplomat など、アジア全体の安全保障問題を扱う人気ブログでは日本の主張を揺るがす情報や記事を毎日のように載せ(他のアジア諸国のもあるが)、若い世代を中心に実質的な反日宣伝活動が行われている。外務省ウェブに載っている尖閣に関するQ&Aは丁寧で内容もしっかりしているが、それはあくまで外交レベルのものであり、実際の尖閣地域での動きや、インターネット上でのやり取りでは日本の思うとおりには動いていない。また、尖閣問題の存在を否定する日本の見方よりも、その存在を攻撃的に宣伝する中国側の声のようが、よく聞こえている。
もう一つの問題は、尖閣地域での日本の弱い対応にある。数日前に起きた自衛艦への射撃レーダー照射事件にしても、度々起きる中国籍船舶の日本エリア進入にせよ、単に抗議をしたり謝罪を求めるレベルでは極めて防衛的であり、領土保持への積極性が感じられない。官邸や外務省のみで効果がないのなら、海上保安庁や自衛隊に期待したいのだが、彼らの行動は法的に、経済的に、そして政治的にあまりにも強く拘束されている。中国からの領土侵犯を抑止し、日本政府が考える領土の防衛をするために必要な軍事力を示すことができていない。今のままの防衛対策では中国側の動きは今後も加速することが容易に予想できる。ランド研究所が10年以上前に出した中国の南シナ海でのサラミ戦略に関する報告は良い参考になる。
更に重要な要素の一つに、日米関係がある。このブログを円滑に運営するためアメリカ政府の政策に関して直接言及は避けるが、アメリカのどちらかというと不透明な対応に日本が苦労しているのは理解はできる。ただここでの問題は、安倍政権は主権防衛の観念よりもアメリカ追随外交の傾向が強く、アメリカを困らせない配慮を中心に対尖閣政策を考えているふしがある。言葉を変えると、対米外交があまりに重要なため、対中問題を悪化させアメリカの懸念を増加させるよりは、日本の主権を弱体化させることにより、尖閣における中国支配を強めるというコストを払いながら、それでもアメリカ側の言う事を聞き続けるという、領土を同盟強化と取り替えるやり方が進んでいる。
安倍政権は入閣後、強気の対中戦略を取るのではなく、できるだけ柔軟に中国に取り合う態度を示してきた。先日のロックオン事件への最初の対応も、本来なら強気の態度が必要な場合に、日中ホットラインの形成という逆に融和的な打開案を提案している。相手側の弱みを常に探している中国にとってこの種の態度はやり易く、アメリカ側に事態の安定化を求められている安倍政権に対し、今後も強気の行動をとり続けることが予想される。
私個人の見方では、このままの政策では今後数ヶ月の間に、尖閣諸島における今の日本の実質的なコントロールは少しずつ弱まり、大規模の戦争には発展しないまま、徐々に日本政府の影響力の低下を引き起こし、今まで通りの尖閣に関する日本の主張が国際間で通用しない、日本にとって不利な状況が生まれるだろう。今後、少しずつ尖閣状況が落ち着くにあたり、日本国民、そして世界からの注目が他のアジェンダへ移る一方、中国側の侵入は数と規模を増やし、日本の尖閣への実際的な影響力は気付かれることなく低下すると見ている。とりわけ新しい主張でないのは分かっているが、現在の日本の外交政策に極めて懐疑的な考えがここにもあることを記録しておきたい。
大きな問題の一つに、尖閣に関する国際世論の形成と情報戦争に日本は遅れているというのがある。中国や韓国が各々の国のメディアのみでなく、他国の媒体やインターネットで英語を使い大体的に各々の国益を主張しているのに対し、日本外交の声は聞こえてこない。The Diplomat など、アジア全体の安全保障問題を扱う人気ブログでは日本の主張を揺るがす情報や記事を毎日のように載せ(他のアジア諸国のもあるが)、若い世代を中心に実質的な反日宣伝活動が行われている。外務省ウェブに載っている尖閣に関するQ&Aは丁寧で内容もしっかりしているが、それはあくまで外交レベルのものであり、実際の尖閣地域での動きや、インターネット上でのやり取りでは日本の思うとおりには動いていない。また、尖閣問題の存在を否定する日本の見方よりも、その存在を攻撃的に宣伝する中国側の声のようが、よく聞こえている。
もう一つの問題は、尖閣地域での日本の弱い対応にある。数日前に起きた自衛艦への射撃レーダー照射事件にしても、度々起きる中国籍船舶の日本エリア進入にせよ、単に抗議をしたり謝罪を求めるレベルでは極めて防衛的であり、領土保持への積極性が感じられない。官邸や外務省のみで効果がないのなら、海上保安庁や自衛隊に期待したいのだが、彼らの行動は法的に、経済的に、そして政治的にあまりにも強く拘束されている。中国からの領土侵犯を抑止し、日本政府が考える領土の防衛をするために必要な軍事力を示すことができていない。今のままの防衛対策では中国側の動きは今後も加速することが容易に予想できる。ランド研究所が10年以上前に出した中国の南シナ海でのサラミ戦略に関する報告は良い参考になる。
更に重要な要素の一つに、日米関係がある。このブログを円滑に運営するためアメリカ政府の政策に関して直接言及は避けるが、アメリカのどちらかというと不透明な対応に日本が苦労しているのは理解はできる。ただここでの問題は、安倍政権は主権防衛の観念よりもアメリカ追随外交の傾向が強く、アメリカを困らせない配慮を中心に対尖閣政策を考えているふしがある。言葉を変えると、対米外交があまりに重要なため、対中問題を悪化させアメリカの懸念を増加させるよりは、日本の主権を弱体化させることにより、尖閣における中国支配を強めるというコストを払いながら、それでもアメリカ側の言う事を聞き続けるという、領土を同盟強化と取り替えるやり方が進んでいる。
安倍政権は入閣後、強気の対中戦略を取るのではなく、できるだけ柔軟に中国に取り合う態度を示してきた。先日のロックオン事件への最初の対応も、本来なら強気の態度が必要な場合に、日中ホットラインの形成という逆に融和的な打開案を提案している。相手側の弱みを常に探している中国にとってこの種の態度はやり易く、アメリカ側に事態の安定化を求められている安倍政権に対し、今後も強気の行動をとり続けることが予想される。
私個人の見方では、このままの政策では今後数ヶ月の間に、尖閣諸島における今の日本の実質的なコントロールは少しずつ弱まり、大規模の戦争には発展しないまま、徐々に日本政府の影響力の低下を引き起こし、今まで通りの尖閣に関する日本の主張が国際間で通用しない、日本にとって不利な状況が生まれるだろう。今後、少しずつ尖閣状況が落ち着くにあたり、日本国民、そして世界からの注目が他のアジェンダへ移る一方、中国側の侵入は数と規模を増やし、日本の尖閣への実際的な影響力は気付かれることなく低下すると見ている。とりわけ新しい主張でないのは分かっているが、現在の日本の外交政策に極めて懐疑的な考えがここにもあることを記録しておきたい。