Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2013年08月

シカゴにて

久しぶりのシカゴ滞在を楽しんでいる。

木曜日の朝は私のパネルの番だった。5時に起きてホテルでコーヒーを飲みながら自分のプレゼンの準備をこなした。今回のパネルは討論者がいなくなってしまったので、パネルのチェアと相談して非公式で私もほかの論文の感想も準備もしておいた。

パネルは時間通り8時に開始。トップバッターとして10分ほどで発表を済ませ、他のパネリストの発表も終えるとパネル・チェアから予想以上に強めの批判を頂いたが、結果としては非常に有益なコメントをだった。なので後ほど別の機会で会った時も、個人的に感謝の気持ちを伝えておいた。

発表後はホテルに戻り、着替えて徒歩で観光名所の Willis Tower へ。今回は私の米軍IDを見せると入場が無料になった(米軍関係者を優遇する事業は多く、これもその一つ)。30分ほど並びエレベーターで103階の展望台へ。そこで見た景色がこちら。

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とても面白いものだった。ミシガン湖にかかる雲がシカゴの摩天楼に入り込み一種の幻想的な景色を作り上げている。土産屋も充実しており、シカゴ観光の一環としてこの場は強く薦めることのできる場所だと思う。

その後はイタリアンの昼食を取り、ホテルに戻ってから学会会場へ。出版社の宣伝エリアで数分過ごしたのち、少し会議をこなした。その後は友人で、アメリカの大学院で博士号を取得した・取得間近の友人2人と近くの喫茶店で2時間ほど久しぶりの再会を楽しんだ。話は日本の学問の世界からアメリカ就職まで多岐に渡り、とても楽しく、私も多くを学んだ。今回会えなかったもう一人の友人とはまた近いうちに機会があるはずなのでその時をとても楽しみにしている。

7時半、私の母校であるペンのレセプションに出席。比較的小さめのレセプションだったが、元指導教官のエイブリーとワイングラスを傾けながら30分以上座って談笑する機会があったので嬉しかった。家族の話から仕事関係の話までしっかり伝えることができ良かった。9時半ごろホテルに戻り、長い一日を終えた。

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昨日飲んだ3杯のコーヒーで良く眠れず、少し腹も壊してしまったので翌日は遅めの開始。昼食のために地下鉄に乗り、家族のリクエストに応え、シカゴでも有名な Hot Doug's へ。このホットドッグ専門店は、公共交通手段があまり発達していない場所に位置しているので準備と注意が必要だが(周囲は必ずしも安全な場所ではない)、行ってみて良かった。我々が食べたのは普通のホットドッグ2つに、フォアグラのホットドッグ。一つ10ドルもするこの食べ物(写真中央)は予想以上に美味しくはなかったが、話のネタには十分なると思う。

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その後はホテルに戻り、再び学会会場へ赴き、予め連絡をさせて頂いていた日本人の教授の方と2人でお話をさせて頂いた。私の知らないアメリカの政治学の世界の話も聞かせて頂き少なくとも私にとっては貴重な時間だった。その後は大雨の中、ペンのブラウン・センターが主催するレセプションのため、The Gage に赴き、国際関係学関係者やペンの教授陣と後輩らと楽しい時間を過ごした。ペンを卒業して3年、私の可愛い後輩たちはもうしっかりとしたベテラン大学院生に成長しており、未だに私のことをしっかり覚えていてくれ嬉しかった。

彼らの成功を祈り、これまた後輩で今はピッツバーグ大学で教鞭を取るライアンと、今度は安全保障・軍縮学科のレセプションへ。ここでは前から知っている教授の方や自己紹介したいと思っていた若手研究者数名、大学出版会関係者との談笑を楽しんだ。時間も遅くなってきたのでそろそろお暇し、徒歩でホテルに戻り、就寝。

シカゴに到着

朝早く家を出て飛行機に乗り、6年ぶりにシカゴに到着。ホテルにチェックインを済ませ、午後から街中を歩きだした。まずは学会会場の一つであるヒルトン・シカゴで学会プログラムをもらう。

その後は中心部のハードロックカフェで遅めのランチ・夕食。その後は買い物をしながら Magnificent Mile を歩いた。

明日は朝8時から自分のパネルが始まるので、今夜は準備をして早めに就寝の予定。

シリアに備えよ2

シリア攻撃のタイミングは私の想像よりも早くなりそうだ。化学兵器を一般市民に使ったアサド政権に対するいわゆる「懲罰」としての攻撃との見方だが、それがこの内戦を止めるかは疑問が残る。注目すべきは今後の数週間、数か月でシリアの情勢がどう変わり、それに対して国際社会がどう反応するかであろう。

制限的な軍事攻撃の準備は整っているようだが、その戦争の中で最も大切な政治目的の定義が現時点でははっきりせず、アメリカ国内の世論、国際世論、そして欧州のパートナーとの協議を経て、攻撃の目的と手段がこの数日で決まることになるだろう。

シリアに備えよ

s_s05_RTX1105Uシリアの情勢が悪化している。これはいつも通り私個人の意見だが、次の戦争はシリアになる可能性が高くなってきた。今週から始まった国連査察団がシリア政府による化学兵器使用の証拠を見つけ、正式に発表する前にすでに、ケリー国務長官が強い声明を発表した。

今後はシリア介入を求めるフランスと、中々決めかねないアメリカが中心となり国連での決議を進め、おそらく一定の軍事侵攻の方向になるのではないかと私は見ている。このままのペースで進めば時間的に見てあと数か月か。

軍事介入が始めるまでの問題は多い。このサイト(要注意)で見れるように人道的問題は山積みである。すでに失われた命と財産は多く、戦後も国の再興までは数年を要する。アサド政権が窮地に立たされ、国際社会からの非難が増大し、オバマ政権のオプションが減るにつれ、戦争の可能性は高まる。

だが開戦までの政治問題も多い。国連安保理理事国であるロシアと中国の反対姿勢を崩すには時間と長い交渉と辛抱を要す。国連内外での説得と対シリア同盟網の建設にも多大なる政治・経済的資本が必要になる。アメリカ国内でも、ここ数か月で進んでいる軍事縮小の枠組みの中で、シリア介入の予算を計上する必要が生じ、健康保険やら経済問題を抱えながら、遥か彼方のシリアで戦争をする必要性をアメリカ国民に説得するには、相当の政治資本が必要である。

s_s15_RTX12EU7また、シリア国内の反乱軍の内部問題も深刻である。反乱軍同士の内部割れも報告されている通り、反乱軍内の指揮には多くの問題があり、西洋諸国との協力に大きな障害を起こしている。アルカイダと繋がるグループも存在し、国外勢力との活動には一定の限界もある。

軍事的な問題も様々である。アメリカ独自の軍事計画と並行させる形で北大西洋条約機構(NATO)を中心に同盟軍の形成と協議が進む。開戦の初期段階では恐らく国連軍の空爆が中心となりシリアが誇るロシア製対空ミサイルを破壊し、シリア国内の反乱軍と一定の協力をしながら、通常戦争の段階では介入軍に有利に働く可能性が高い。ただもちろん最も大きな問題の一つに地上軍の投入がある。10年前のイラクを繰り返さないよう、必要最小限の兵力でアサド政権の転覆と新政権の形成に努めるが、難しいのは兵力の数、種類、兵站、そして撤退のタイミングである。

これらの問題が全てではないだろうが、これらを解決するには相当の時間と政治力が必要になる。今後西洋諸国が軍事介入の方向に進むに連れ、日本へのある程度の役割も期待されることになる。国連内での協議の円滑化、アサド政権への外交・経済的的圧力、戦後復興の財政的役割など期待される可能性がある。憲法改正で揺れる安倍政権が今後シリア問題でどう出るかが、日本の外交・安保政策の大切な所となろう。

夕食会

昨晩は今年基地に来られている自衛隊員ご家族と一緒に夕食をとる機会があった。場所は寿司カフェ。頼んだちらし寿司も美味しく、家族同志6人でとても楽しい金曜日の夜を過ごすことができた。

今週末は採点の仕事が山盛りだ。担当している選択の授業の提出物が返ってきたので5ページの論文を10人分採点する。来週はシカゴに出発するのでそれまでには終わらせたい。

アメリカ政治学での就職について

驚いたことがあった。そこそこの大学の政治学部で助教授をしていた大学院時代からの知り合いが、教職を辞めてロースクール(大学法学院)に入学し、今後3年間は生徒として勉強すると耳にはさんだからである。

もちろん彼のポジションは終身雇用の条件も契約に入っておらず(いわゆるノン・テニュア・トラック)、おそらく待遇の面でも色々不便があったのは想像できる。ただ、アイビーリーグの大学から政治学の博士号を取り、私立の大学のポジションであったのだから、ある程度の生活はできたであろうとも思えるのだが、おそらく現実の生活は他人が理解できる以上に大変なものだったのだと思う。ロースクール後は法曹の世界での就職を希望することになるのだろう。

ある意味恐ろしいものである。どの分野で就職を考える場合でもそうなのだが、やはりこの政治学の世界に足を踏み入れるには相当の覚悟が必要だと感じる。

アメリカの博士課程で政治学を学ぶ際に真剣に考えることは幾つかあるのだが(興味のある方は過去のエントリーを参照)、この例を含む、私が知っている他の幾つかの状況から総合的に見てみると、以下のようなことを思った。

1.政治学の就職前線でうまくやってゆくには、属する大学のネームバリューよりも、その人間が大学院時代に政治学に対していかに大きな貢献をしたか(特に、在籍中に論文を出版したか)が重要。競争率の高いプログラムに属していながらも履歴書の中身が薄く、結果として就職活動で失敗する政治学博士がいかに多いことか。

2.政治学の専門分野は、もちろん自分の学問的興味を中心に選ぶべきだが、就職面での現実性も真剣に考慮すること。上記の知り合いのサブフィールドは「政治理論(哲学)」であり、それを選んだ時点で就職活動中の困難が予想される難しい分野だった。アメリカに渡る日本人の多くは国際関係学や比較政治を選ぶ方が多い。アメリカ政治を選ぶ方もおられる。それ自体に問題はない。

3.しかしここで気を付けるべき点は研究内容、特に最初の段階では博士論文のトピックの選び方である。私はこれが就職の成功率に大きな影響を与えると思う。研究内容が面白く、最先端のトピックで、最先端の手段を用いている場合は、採用側の興味を引くだけでなく、それ以前の問題として、外部の奨学金(プリドク、ポスドク等)も得やすく(つまり翌年の就職活動の成功率が高まる)、指導教官のサポートも得やすく、出版できる可能性も高まる。

最近日本人研究者の中でも多い、統計学・経済学の手法をフルに用いた政治学の研究は成功する傾向が強いと感じる。もちろん過去には質的手法のカウンター運動もあったが(ペレストロイカなど)、量的手法やゲーム理論系の成功率は高く、それらに興味のある方は自信を持って選ぶべきである。

国際関係論に関しては、やはり量的手法による紛争解決、信用(credibility)、audience、評判、人権問題、国際法などの分野での論文の質の高さに目が行く。私のする質的な安保研究は好きな人間にとってならいいが、必ずしも最先端として研究されている分野ではないとも思う。就職活動も大変だった。

比較政治に関しては、日本人研究者の多くはやはり日本国内(もしくは韓国、台湾などの近辺諸国)の問題を事例に取り、それを一般的な比較政治理論に結び付けるという傾向が見られるが、ここ20年ほどの日本政治経済の重要性の低迷を見れば、アメリカ政治学会がそれらの問題に特に興味を持たないことはある程度想像できるはずである。一方でどの問題が興味を引くかと言えば、中東政治、アフリカ、中国・インド含むアジア全体の比較政治や比較経済学、質的・量的手法を合わせた2つ以上の地域の比較などが思い浮かぶ。

昔のエントリーでも書いたが、研究内容を選ぶ際に最も重要なのは、その個人が最も興味を持つ問題にするということだとは今でも思っている。ただ同時に、その理想をより現実に近づけるためには、今のアメリカ政治学でどの問題が注目されており、その研究に需要があるかをしっかり理解し、理想主義と現実主義のバランスを見つけることであるとも思う。非常に難しいものだが、今後アメリカで挑戦しようと思う方々には考慮して頂きたい。

司令官の交代

我が家では週末のコーヒーはトレーダージョーズのダーク・ロースト・コーヒーを愛用している。土曜日と日曜日の朝はそのコーヒー豆をひいている朝食の前に飲む習慣がある。美味しいし、値段も非常にリーズナブルなので(小売店で買うと安い)家計も助かる。もうこの2年ほど家族のお気に入りである。

私も大好きなので職場のオフィスでも愛用している。授業の準備をしている時はその場で豆をひいて、飲みながら授業で使う資料に目を通すのである。

我が家では今週末からは新しい豆に挑戦。先月のハワイ滞在中に買ったコナ・コーヒー。初めて飲んでみたが美味しかった。

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明日から大学の校長が変わる。それに伴い軍隊ならではの司令官の交代式が開かれる。数か月前の人事で発表されたように、今度の校長はブライアン・ビショップ少将である。今年3月にソウルの龍山基地を訪れた際、出張で訪れた我々一同に韓国の安全保障問題のブリーフィングをして頂いた方である。

ここ数日

今週は大きなプロジェクトを無事に終わらせることができてよかった。成果が何か月後に見えるかはわからないがよい方向に進むよう祈っている。

アメリカ政治学会参加のためのシカゴ出張まで2週間を切った。現地では毎年恒例の日本人政治学者の夕食会には参加はしないが、私の友人らと小さなお茶・夕食会を木曜日に予定している。学部のレセプションが夜にあるので長居はできないがとても楽しみだ。

他には政治学会における国際安保セクションのレセプションなども参加を予定している。また、せっかくのシカゴ旅行、時間を見つけては街の観光もしたいと思っている。

ドイツ旅行の予定も少しずつ立てている。ライン川下りからケルンの大聖堂、ノイシュバンシュタイン城、ミュンヘンの街並み、ベルリンの壁、ブランデンブルク門、そしてベルリンのフィルハーモニーも考えている。10月のドイツはオクトーバーフェストで大変な観光シーズンだが、同時に紅葉も美しい季節のはず。こちらではあまり見られない紅葉がとても楽しみだ。

東アジア関連の修士論文

空軍戦争大学には Grand Strategy Seminar という、その年の精鋭を集めたエリート養成ゼミが設置されている。まだランクの低い私は普段はお呼ばれしないのだが、明日の月曜日はそのゼミで授業をすることになった。

内容は日本と東アジア。東アジア地域の政治問題を修士論文のトピックとして考えている生徒のために、日米問題のことを話していくつかの可能性を示すものである。

時間が限られているため話す内容は絞って、日本の平和憲法、平和主義、軍事予算、領土問題などに焦点を置く予定である。

日本の平和主義に関してここで深く書くつもりはないし、当日の授業でも誇張するつもりもないが、日米両国の海軍を断片的に比べてみれば、このザマである。

http://www.youtube.com/watch?v=nNdPPEwguDQ

国内で通じるイメージが、外から見れば全く違う印象を残していることに気付くべきである。

今の時点では修士論文の指導のリクエストが5本来ている。トピックは様々で、エア・シー・バトル構想における台湾の役割から、ミャンマーでの非対称戦争、北朝鮮指導部の今後、尖閣諸島における日本の政策、そして日米同盟の特別性などである。全て大切な問題なので今から楽しみにしている。

ワシントンへ

来月半ばにワシントンに出張に行くことになった。学部の教員がほぼ全員で、アメリカ議会でいくつかのブリーフィングを受けることになったからである。

最後にワシントンを訪れたのは年末。その時はアメリカのアジア回帰の会議に出席するためだった。

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新しい家に引っ越して早4か月。芝刈りがこれほど大変だったとは知らなかった。今週の日本の天気もそうであるように、こちらアメリカ南部の夏の気温は高く、乾燥しており、草が伸びるのが早い。月に2度ほどのペースで枯れるよう、最近購入したのがこの機械。昨日午後5時過ぎの郵便で送られてきた。

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