Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士課程を卒業し、アメリカ空軍戦争大学で教鞭を取った後、アメリカ中西部のセントルイス大学の政治学部で教えています。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。ここ数年は日本の軍事力と文明間の紛争の研究を進めています。 このブログでの意見と表現はあくまで著者個人のものであり、必ずしも関係機関の政策を反映するものではございません。

2013年11月

フォーサイトにて原稿が掲載されました

宜しければご笑覧下さい。

米国から見た中国の「防空識別圏」設定

アラバマ州マックスウェル空軍基地】先週末の中国による防空識別圏(ADIZ、米軍ではエイディズと発音する)設定の発表は日本で大きく取り上げられたが、アメリカでも注目されている。 

防空識別圏は一般的に安全保障上の理由から民間機の飛行ルートの事前確認などを要求する空域を指し、今回は中国が尖閣地域を含む東シナ海の一部に一方的に設定し、関連諸国からの反対を招き物議を醸している。中国の発表から数時間後にケリー国務長官とヘーゲル国防長官が反対を表明しており、アメリカが重要問題として位置づけているのが分かる。

週明けまもなく、ワシントンを中心にアジア専門家がこぞって今回の動きを分析し報告している。多くの顧客を持ち、主にアジアの政治問題やゴシップを収集・分析する日刊ネルソン・レポートにも週明けから専門家数名の意見が掲載され、今回の出来事の重要性を伝えている。  

私が教鞭を取るマックスウェル空軍基地の空軍戦争大学でも強い興味を引いている。今週に入り既にB52爆撃機2機が通常訓練の一環として、グアムからこの防空識別圏内を堂々と飛行しているが 、我々が注目するのは今回の出来事が地域の軍事バランスと今後の軍事作戦に影響を…

(この論文は私個人の考えに基づくものであり、アメリカ政府、国防総省、そして米空軍戦争大学の政策を必ずしも反映するものではございません)

時間通りに入稿完了!

空軍の審査に無事合格し、約束の締切に原稿を入稿することができた。無理を聞いてくれた空軍PA(Public Affairs)に感謝したい。校訂を経て明日に出版されればと思う。

明日はいよいよ感謝祭。同僚で友人のジーンの家でのパーティに参加する予定。夜は寒くなりそうだが感謝際のショッピング巡り

防空識別圏設定問題に関して

今回の中国の防空識別圏設定問題に関して、日本のメディアから執筆の依頼が来ているので今年の感謝祭休みは忙しくなりそうだ。論文やコメント自体は時間がある限りいくらでも書けるのだが、日本とは半日以上の時差があるのと、毎回空軍のチェックと許可を得てやっと入稿、となるので大変である。

ここ数時間の間で、日本の防空識別圏を小笠原まで延長させることや、アメリカのB-52が中国の防空識別圏に堂々と入り無事に帰還、という極めて流動的な状態が続いている。もちろん、短期的な問題解決への努力は必要だろうが、中長期的に見れば果たして今とっている行動が正しいものであるかはわからない。私は今回の出来事は長期的な戦略の視点から考慮するべきだと思っており、緊急のカンフル剤を数発撃って問題解決を望むというよりも、ある程度抜本的な内的制度の改革が必要だと感じている。

これらに関しては今執筆中なので、興味のある方はまたこのブログに戻ってきて頂きたい。

ちなみにこのB-52の飛行のニュースを私が読んだ時には、職場の同僚がその情報をすでに掴んでいた。こちらの人間がいかに注目しているかが分かる。特に軍人の同僚からは新聞などでは読めない、オペレーションに関する話を色々聞けるので助かる。

話は逸れるが写真にもあるように、B-52爆撃機は私の基地にも展示してある。写真は3年前のもの。
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今週の映画と今冬の予定

今週末観た映画は The Reluctant Fundamentalist。アメリカで成功を収めた若いパキスタン人が9・11の後にイスラム教に傾倒し過激化する過程を描いた、とても良い映画である。日本では放映されなかったようだが、9・11後のアメリカ社会やパキスタンとの国際関係、諜報部門の役割などの問題に興味がある方には強く薦める。CIAのパキスタンでの活動に関しては、The Way of the Knife という本を読んでいるのだが、この映画とは共通点が多く並行して読むと理解が深まる。

話は変わって…。

今年の年末年始の休みは短く、日本には戻れない。ただそれでも短い休みを利用して、数日に渡るドライブを予定している。今考えているのがフロリダかワシントン。ワシントンの冬は大変なので、フロリダに傾いている。目的地はマイアミを見ているが、それ以外でもケネディ宇宙センターやあちこちの空軍基地にも泊まって買い物を楽しもうかとも思っている。

中国による防空識別圏設定のニュース

昨日飛び込んできた、中国の尖閣地域を含む防空識別圏設定のニュースは重大なものである。単に外交・内政問題だけでなく、日本の国土の安保・防衛問題でもあるからである。

私の今の研究プロジェクトの一つに尖閣地域における日本の政策というものがあり、また、日本が尖閣のコントロールを失ってきているという見方は私もこのブログを通して何度も表してきている。ただ正直、日本の外交力の弱さは驚くものである。とりあえず形式上の「抗議」はしたようだが、ある種メディアに向けた、本当に意味のあるものではないのは誰でも理解はできよう。更に興味深いのは外務省のホームページには、日本時間24日0時の時点でそのことについて何も報告されていないことである。

更に、防衛省海上保安庁などの関連省庁のサイトにも、24日0時の時点では何もない。日本の国防を担うはずの機関がこれである。

簡略化して書くが、外務省内の体制がほぼアメリカと中国との間に引き裂かれ、議論が横行し、尖閣含む領土問題に対して明確かつ有効な政策が出ていないのは理解ができる。いわゆるアメリカ・スクールはアメリカに対するその強い依存性から、アメリカからのより明確な安保上の約束を求めるべく最高の努力を続ける。日本の防衛力を日米安保の枠組み内で必要な分増加させる一方、「独立」し過ぎた日本というイメージを避けるべく、防衛力には一定の制限もしている。

対岸のチャイナ・スクールのメンバーの多くは各々の昇進が中国との友好関係に強く依存しているため、アメリカからのプレッシャーをかわしつつ、いかに中国を怒らさずに尖閣での主張を続けるかに悩んでいる。もちろん日本の防衛力の増加など受け入れられることではない。

防衛力を制限するアメリカ・スクールと、親中派のチャイナ・スクールに牛耳られた外務省が、日本の国土防衛にとって有効な政策を出せるわけがない。

繰り返すがこれは日本にとっては外交問題だけでなく、大きな防衛問題でもある。防衛省を中心とする関連機関が今後より強い立場を表明し、日本を護るべく真剣に政策に取り組んで頂きたいと、一個人として願っている。

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