Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2013年12月

ココア・ビーチにて

写真休暇3日目の午前中はゆっくり過ごし、11時ごろ基地を出てオーランドのプレミアム・アウトレットへ。ここは去年の休暇の際にも利用した。今回も年末セールで大混雑の中なんとか駐車をし、前から気になっていたものを幾つか購入した。

夕食はココア・ビーチ(という実在する町)の有名なシーフード・レストランの Rusty's にて。大西洋に面する絶好の位置で、写真にあるように午後6時のハッピーアワーの大混雑の中、我々は生牡蠣、エビのスパゲッティに大きなエビフライを楽しんだ。その後は雨の中ドライブして宿舎に戻った。

写真今回我々が滞在したのは大西洋岸に位置する、パトリック空軍基地。決して大きくない基地だが両サイドが海岸という素晴らしい立地で、ココア・ビーチ中心部までは車で10分ほど、ケネディ宇宙センターまで40分ほど。少し基地を回ったら輸送機が数機見えた。

宿舎の名前はその場所にちなんで Space Coast Inn。我々は士官用の部屋を利用し、一晩56ドルだった。まあまあ快適に過ごすことができた。

ディスニー・ワールドにて

写真土曜日はオーランドのディスニー・ワールドで一日を過ごした。もう3度目となるマジック・キングダムに入ったのは午前11時前。入場直後から昼のパレードが始まった。左の写真がその時のミニー。

その後はお目当てのアトラクションを幾つかこなした。私の好きなカリブの海賊から去年の年末に新しく出来た美女と野獣、ミッキーのマジックショーからスティッチまで幅広く、色々歩きならが楽しんだ。スペース・マウンテン近くのレストランで少し休憩。毎時間ごとに新しいパレードをやっているので、移動の時にはほぼ確実にそれにぶち当たり、下の写真のように別の場所でディスニーのキャラクターに出会えるようになっている。

我々としてはクリスマス後の「オフシーズン」を狙いタイミングを合わせたつもりだったが、この日が土曜日だったのと、翌日の天気が雨の予想ということもあったのだろう、ものすごい混みようだった。ちなみにこの日の予想最高気温は29度。こんな時期でもシャツ一枚で十分だった。

夕食は予め予約を取っていた The Crystal Palace にて。ここは単なるバイキングではなく、クマのプーさんのキャラクターが各テーブルを回り、食事をしている人とそれぞれ写真を撮らせてくれるというサービス付き。私はキャラクターは正直あまり良く分からないのだが、とても楽しかった。食事の味も良かった。

写真その後はダフィーのぬいぐるみをお土産に購入し、午後9時からの夜のパレードを見た。いつも通り完成度の高いこのパレードの最後、やはりここはアメリカ。敬礼をしながら歩く人に囲まれながら、星条旗と大きな鷲の飾りで〆ていた。パレードの後は疲れた体を引きずって夜のドライブ。

フロリダに到着

クリスマスは楽しかった。近所のダニーの自宅で行われたパーティはこじんまりとした、とても暖かい家族の集まりで、本当に親戚数人のみが参加する、極めてローカルかつ、これぞ南部の「サザン・ホスピタリティ」とも言える、心のこもったありがたいパーティで、こちらもとても楽しむことができた。感謝祭の時のジーンの家でのパーティでもそうだが、我々をこうして招待してくれてとても嬉しい。

昨日は数時間のドライブを経てフロリダに到着。毎年恒例になりつつある年末の旅行である。早速シェイズ・オブ・グリーンに寄りディズニーの切符を購入。今日は晴れの予定で、これから一日楽しんでくる。

クリスマス・イブ

クリスマス・イブは午前中は出勤。ミリタリーの同僚はほとんど来ていなかったが、シビリアンの方は私も含めて数人働いていた。基地の司令官から特別許可が下りたので、仕事は午前中のみで終わらせた。

午後は二人でイブの記念に、前から話していたイタリアン・レストラン、La Jolla でランチ。良く味付けされたサーモンのペンネに、エビのパスタは両方とも美味しかった。明日はクリスマス。近所のダニー宅でのパーティに招待されたので午後から行ってきます。

ここ数日没頭している仕事は原稿の最終チェック。出版会の編集チームの腕前に驚きながら、1月8日の締切に向かって頑張っている。

先生への贈り物

2日ほど前、通勤のドライブの中でいつものようにNPRを聴いていると、面白いニュースがあった。バージニアの高校の卒業の際に、生徒の保護者が担任の先生に対して毎年どのようなギフトを渡すのかで悩んでいる、というものである。聴いていると、50ドルのお金からアラスカ旅行の切符など、結構大きなものになるらしい。それを毎回考えなくてはならない保護者にとってはストレスにもなるだろう。

ある意味文化的なものもあるのかもしれない。私が小中高を過ごした関東地方では、自分の親が担任の先生に贈り物をしたなんて一度も覚えていないし、同級生がそうしているのを聞いたこともない。多くの保護者にとっては、学校の先生は単に与えられた仕事をしているのに過ぎず、仕事のレベルを超えてまでその生徒に特別の授業をした場合などは除いて、一般的にギフトが必要になる状況を認識することがあまりないからであろう。普段私がこちらで教員としての仕事をしているときでも、生徒本人、もしくはその関係者から贈り物を与えられるべきだと感じることは全くない。

と思っていたら、私もほぼ毎年同じように、卒業生からある種の贈り物をもらっていることに気が付いた。去年は一緒に海外出張した生徒から、出張中の写真のパネルを4枚頂き、あまりにもよくできていることもあり、4枚全てオフィスに飾ってある。その生徒は今コロラドの空軍基地で司令をしている。

2年前の生徒からは、以下の写真にあるように、生徒一人一人のメッセージの詰まったパネルから、ナイジェリアの飾り、そしてアラバマの粘土でできた鶏の飾り物を頂いた。なぜ「鶏」なのかは私の授業を取った人間にしかわからないが、その生徒にとってはその鶏の授業がとても印象深かったに違いない。
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贈り物目当てで仕事をしている教員は、先進国にはあまりいないだろう。ただこうして努力が認められるとうれしい気持ちになるのは確かである。特に期待はしないが、頂いたときは私にとってはプライスレスの贈り物であり、どんなものであれ大切にとってある。

授業の終わり

水曜日でようやく今年の授業が終わった。「千秋楽」はカートライト元・統合参謀本部副議長(米海兵隊大将)を招き、アメリカ政策決定過程の授業の最後の講義をしてもらった。毎年恒例のこの講義は質が高く教員からも評価が高い。

その後の授業ではアフガニスタンでの米軍活動を議題にし、期末試験を配布して終了。2日後にはその答えが生徒から提出されるため、採点のために冬休みを使うことになった。採点の締切は1月半ばほどで実質1か月ほどの期間があるのだが、1月第2週からは別の授業が始まるため、できるだけ早く済ませたいのである。

今年の冬休みは珍しく仕事が多い。2年前はフランス、去年はフロリダで中期の休みを取っていたが、今年はその期末の採点に加えて修士論文ドラフト6本に対するコメント、本の最終修正(これには特に注意と時間を要する)、自分の研究などに追われることになった。

No Easy Day から学ぶこと

9780525953722H米海軍シールズの中でも特に特殊性の高いユニット、そして2年前にビン・ラディンを殺害したエリート集団として知られる海軍特殊戦開発グループに属したマーク・オーウェン(安全上の理由から偽名)の著書、No Easy Day を完読した。今まで読んだ特殊作戦ものでも政治色の薄い一冊だが、そのあまりの特別性から読む価値のある本だと思う。

この本からは特殊部隊の選抜課程から使われる兵器、人間関係まで幅広く面白い情報を引き出すことができる。著者の表現方法が極めて簡単なものであるため、スラスラと時間をかけずに読むことができる。特に、「ゼロ・ダーク・サーティ」とかぶる部分が多いので、その映画を思い出しながら読むと有効だと感じた。

私が興味深いと思ったのは2点ある。まずはビン・ラディン殺害作戦(Operation Neptune Spear)の一環で、完全武装をしブラック・ホークに乗った著者が、アフガニスタンのジャララバードからパキスタンのアボタバードのビン・ラディン宅までの約90分のフライトのうち、到着10分前まで寝ており、おそらくほかの隊員も同様だったとクレームしている部分(210ページ目)。

その任務の重要性から、もっと緊張して起きていたのではないかと思えるが、隊員たちにとっては何度も似たような任務とリハーサルを繰り返していたため、そしてそれまでの疲れが溜まっていたため(隊員の多くは睡眠不足に陥り、アンビエンを服用していたと記述されている)、そのような状況が生まれたのではないかと思える。

そしてもう一つは、作戦終了後ユニットの基地(アメリカ東海岸)に戻ると、隊員に関する噂話があまりに大きくなり、メディアでも大きく放送されてしまったため、隊員個人の安全を確保することが難しくなり、各々の家のホーム・セキュリティを強化したと述べる部分(288ページ目)。家族にも多大なインパクトがあることが分かる。

その他、デブグルー隊員の生活の大変さが良く伝わってくる、面白い一冊だった。

教会のリビング・クリスマスツリー

Living Christmas Tree昨晩は家族でクリスマスの目玉の一つである、リビング・クリスマスツリーのコンサートに参加してきた。

見ての通り大きなクリスマスツリーに人間が何人も乗り、1時間ほどの間指揮とオーケストラに合わせて歌うという、ここに来るまでは聞いたこともなかった地元の大行事である。

我々は夜の6時過ぎに教会に到着。その時点ですでに教会は満員で、我々もシートを無事に確保。牧師の説法が5分ほどあり、7時から定刻通りコンサート開始。

10数曲歌っていたが、歌手もオーケストラも全てほぼ完璧の出来で、この中にプロがいてもおかしくないくらいのパフォーマンスだった。あまりにも素晴らしい歌の場合は、その曲が終わる前から観客が歓声を出していた。

8時半ごろ終了し、雨の中帰宅した。今年も良い思い出ができた。

大忙しの1週間

今週は忙しかった。日経の記事はその前の週には終わっていたのだが、今週は仕事が多く入っていた。授業は2日ではなく珍しく3日こなし、ブラウン大から来たゲスト講師との朝食会に朝の7時から参加、2本の学部会議、掲載記事の見直し、来年3月からの比較政治学の授業のシラバス提出、そして出版会からの原稿チェックの依頼などが入り大忙しの1週間だった。

従って毎日の新聞も追いつかず、溜めたものを週末に一気に読み終える感じになってしまった。今回読んだ中で良い感想を持ったのは、田中宇氏の「米国にはじごを外されそうな日本」。最後の段落の部分には共感しないが、メインの部分と主張、その中でも特に7段落目は良かった。

写真は1年前の今日、ワシントンの国防大学キャンパスで見かけたオスプレー。
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論文が掲載されました@日経ビジネス

日経ビジネスに掲載させて頂きました。全文読めるはずなので興味のある方はどうぞ。

アメリカから見る、防空識別圏設定問題からの教訓

今回の問題から学ぶべきこと

 先月23日の中国による防空識別圏設定は日本だけでなく、多くの東アジア諸国にとっても地域の安定を揺さぶる危険性を持つ、受け入れられない行動だろうが、必ずしも理解できないことではない。幾つかの要素を考えると中国にとってはある意味当然のことだからである。


 もちろん、中国の防空識別圏は日本と韓国の領空、そして米軍の訓練地域とかぶるため日韓米それぞれとの問題にはなるが、世界には数カ国が独自の防空識別圏を設定しているため前例がある。中国がその輪に加わることへの国際社会からの抵抗は一時的にはあろうとも、時間が経つにつれ弱まる。より広く考えると、防空識別圏は国際法上の規定がなく、それ自体が国際法を破ることでもない。


 また、単に自国の主権を繰り返すだけでなく、今回は日中双方で航空の安全を共同で守るべきだと主張することにより、その領土主張を正当化させる働きもする。尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海での領土問題で中国がいかなるパフォーマンスをするかは共産党の正統性の維持、ナショナリズムの高揚とコントロール、そしてメディア統制などの中国内政にとって極めて大切な問題になる。多くの中国国民には納得のいかない、「不平等」な東シナ海での現状を彼らにとって良い方向で変えようとしているのである。他国を一時的に怒らせてでも、強い中国のイメージを作り上げることにより国内で点数を稼ごうとするのは驚くべきことではない。


 同時に日本側が認識すべき点は、今まで領土を実質支配してきたはずの日本の外交と防衛政策に、ここ数年の間で大きなスキができていたことである。拓殖大学の森本敏・特任教授は防衛大臣在任時に中国の防空識別圏設定をある程度予想していたようだが(読売オンライン、11月27日)、それを未然に防ぐ必要な政策を出していなかった。日本側で幾つかできることを認識していたのにもかかわらず、それを怠っていたのではないかと邪推してしまう。


 さらに、外務省が中心となって世界で尖閣の日本帰属を訴えてきていたのにも関わらず、今回の防衛圏を防ぐことができなかった。そして尖閣沖の警戒や度重なるF15戦闘機のスクランブルなどを通して作り上げていたはずの抑止力も、結果として不十分であった。つまり、日本人が多額の血税を投資してきたのにも関わらず、日本の国土、主権、そして国民を護るための日本の外交と抑止力のシステムがしっかり機能していないのである。これは中国のみの問題ではなく、日本自身が招いた問題でもあるのではないか。


 誤解を防ぐために書いておくが、私は今回の中国の行動を評価しない。しかし中国がこのスキを突こうとする理由は上記の通り幾つもある。今回の問題で日本の論壇は中国の糾弾に多く走っているが、私は、中国を一方的に責めて相手による自発的な政策転換を待ち望むのではなく、日本人自身が自省を兼ねて日本外交の問題点に着目し、より大きな枠組みの中で外交政策決定過程の改革を進めるべきだと思う。中国は今後も日本のスキを狙う手を止めることはない。日本側が戦略と制度を整えて今後の政策失敗を防ぐ必要があるのである。

続きは上のサイトからどうぞ。

【筆者注】この論文は私個人の考えに基づくものであり、アメリカ政府、国防総省、そして米空軍戦争大学の政策を必ずしも反映するものではございません。

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