昨夜の一般教書演説(State of the Union, SOTU)、我が家も自宅にてライブで観ていた。内容のコメントは既に色々なところで書かれているが、興味深かったのが演説中のオバマ大統領の後ろに座っていたバイデン副大統領の顔の表情。特に最初の笑顔は私も見ていた。今日のポリティコにしっかりまとめられていた。
How Biden entertained himself during SOTU 2014
2014年01月
後でわかったことだが、その時には既に遅し。車の渋滞は基地の中にも入り込み、私も巻き込まれてしまった。普段は10秒ほどで着く、100メートル先の空軍指揮幕僚大学の前に進むだけでも30分かかり、その時点で車の動きは完全に止まってしまった。車内から携帯で家族と10分ほど話し、諦めて一度オフィスに戻り渋滞が終わってからの帰宅を決め込んだ。後で聞くと、あのまま渋滞の中待っていたら、基地を出るまでに2時間かかったようである。
オフィスに戻ると同僚数名が似たような状況にあり、話を聞くと、大学内で数時間待ってから帰宅を試みる、ということであった。これは長丁場になるだろうと覚悟を決めながら、グーグルで地元地域の渋滞情報を調べ、空いているルートを細かく調べ始めた。
普段使っている高速道路は閉まっているということである。なので大忙しで帰宅を急ぐ町全体の職員がほぼ同時に高速道路を迂回し、少し細い道に一斉に入ったため、町中では大混雑が起きていた。なぜこのようなことが起きるのか。この時点ではまだ積雪の段階ではないのだが、この地域では雪が降るということ自体が極めて珍しいことなので、地域の住民の混乱と事故を防ぐため(とは言っても多発していたこと間違いない)、行政はこのように一見大袈裟に対処するのである。混乱を防ぐための処置が実は、大混乱を起こすのである。
昼ご飯をオフィスで食べると、同僚のノーニハルと帰り道を協議。FBでもほかの同僚と情報を交換し、どのルートを避けるべきか考えた。そんなことをしながら帰り道のルートを決めると、地図をプリントし、ルートにペンで直接色を塗って、GPSの無い車内でも家に帰れる状態を作った。
その後はルートの通り、結構な遠回りをしたが、渋滞には一度も入ることもなく、最高速度は40マイルに抑え、普段は20分ほどの通勤をゆっくり進み、1時間ほどで無事帰宅。
家に戻り少し落ち着くと、家の外に出て数年ぶりの雪を記念撮影。一番上の写真の車の後ろには、手跡が見えるだろうか。1センチほどしか積もらなかったので、遊べるのもこれくらいである。二枚目のはここでは珍しい「つらら」の一枚。そして最後のは自宅前の景色。
ここに赴任してからは初めての雪であった。良い記念になった。
明日は午前中は基地は閉まり、仕事は午後から再開となる。
ここ数か月で書いた論文は以下からどうぞ。
米国から見た中国の「防空識別圏」設定
アメリカから見る、防空識別圏設定問題からの教訓
米国大学院学生会
第15号:アメリカ留学とインターンシップ
第16号:ランド研究所でのインターンシップ
第17号:国連インターンシップと就職の話
一方で、ここ数日の間噂になっているゲイツ元国防長官の最新の回顧録 Duty を入手した。かなり分厚い一冊のため少しの時間がかかるだろうが読破したい。既に様々な書評も多く出ているが、私個人としても読んで感想を持ちたい。
また、私のような職場では特に重要な一冊であるため、私の学部全体でも何冊かオーダーすることになりそうだ。
空軍関係の新聞記事を読んでいて、missileer という単語が目についた。初めて見る言葉である。調べてみると missile combat crew とも呼ばれ、ミサイル発射コントロール・センターで任務にあたる軍人を指すという。今まで教えた生徒にはその筋の専門家はいなかった(もしくは私に伝えていなかった)。面白い。
それで思い出したのが bombardier という単語。 想像できると思うが、爆撃機に乗った爆撃手を意味する。私の最初のボスは湾岸戦争で爆撃をした「バマーディエ」であった。ちなみに湾岸戦争でも使われた、そして去年11月の中国による防衛識別圏設定の直後に米空軍が圏内を飛ばしたB52爆撃機は私の基地にも展示されていて、職場への道路でその傍を毎日通る。
昔好きだった政治風刺画に、左のようなものがあった。イラク戦争の時のブッシュ政権に歯止めが利かなくなってきたことを示唆する冗談である。被害を受けた多くの人々にはとんでもない話だが、そのセンスは良くわかる。
引用元はここ。
【西島秀俊 バカリズム】 ANA CM "羽田国際線大増便!"30秒
Racist Japanese ANA (All Nippon Airways) Commercial
このユーチューブのページの下にあるように、ほぼ全員匿名だが一定の数の人間が英語で、特に人種差別ではないとの見方を示している。その判断は個人が出すべきであり、人によって異なる見解が生まれるのが自然だが、確かに人種問題に関してある程度無神経な内容だと思うことができる。人種の違いに基づく一定のステレオタイプに括り付けられて見られ、そしてその人種のみターゲットにされるのは、誰にとっても不愉快なことである。
このCMを造ったのがどの会社の誰だかは分からないが、この種のイメージを作るときは特に繊細な神経とケア、そして批判の対象となる覚悟が必要になる。その人間にとって問題とは見えないことも、多くの人間にとっては異なる意見につながる場合がある。制作の過程で他人の意見、特に国際社会で多く過ごしてきてこの種のチャレンジを乗り越えてきている専門家の意見を求めるべきであった。制作側に一定の理解とオープンネスがあれば簡単に防げた問題である。
また、このCMで話される英語にあまり筋が通っていないと思ったのも私だけであろうか。日本語では普通に話されるタイプのこの会話も、英語でされる場合はその会話の組み立てが極めて微妙な論理に基づいていることがわかる。ベトナムのハノイなど、渡航先のことを話していたのに突然、「ハグしようか?」と問いかけ、それに対する返答に困る男を見て、「日本的なリアクションだな」と言っているが、私に言わせれば、その日本語会話の中の論理性の欠陥こそが「日本的な」英語の話し方に一致する。そしてそもそも、日本国内で流すCMに、ご丁寧に日本語のキャプションを付け、なぜわざわざ英語で話す必要があったのか、それも疑問な点である。
尖閣に対するアメリカの政策は少し複雑で難しい部分もあるのだが、生徒の理解は早かった。日米安保条約や過去のアメリカ側の記録を実際に生徒に読ませ、その詳細も議論した。
また、去年の中国の防衛識別圏設定の意味合いについても、先週発表されたアメリカ議会の最新報告書を用い議論した。私の生徒の中には実際に尖閣地域で数年に渡り作戦に参加していた佐官もおり、彼の詳細な知識と経験をフルに活用することができた。3月に日本で受けるブリーフィングのための準備は着実に出来つつある。
その識別圏問題だが、どうやら日本政府には有効な政策が出せず、民間航空会社もそれを現実的に受け止め、ほぼ既成事実化してしまった感がある。依然として中国に対しては一方的な批判が続いているが、私が年末にも書いた通り、問題はそこだけではなく、日本国内にもあるということがより明確に認識されればと願っている。何人かの方からは掲載された論文に対してのコメントを頂いているが、感情的にならずに落ち着いて今回の問題を直視している方はあまり多くなさそうである。
大切な締切があった先週に比べ少し楽になるかと思われた今週、淡い期待は見事に外れ、週3度の授業の準備や研究、採点等で大忙しの一週間になっている。今日は息をつく意味も含めて自宅勤務。
先週始まった北東アジアの授業は順調に進んでいる。今週は東アジアの経済、サイバー問題、そして領土問題と、生徒にとっては複雑なトピックをすごいスピードで進めている。昨日のサイバー問題の授業はその性質から使える情報と議論の内容に限りがあるものだったが、東アジア地域の政治を考える上では避けられる問題ではないため、必要な文献を気を付けて選び、授業に2時間しっかり使い、大切な部分を話した。
明日の領土問題の授業も、極めて重要な内容である。今年は去年と比べより尖閣に焦点を置いて、中国・台湾の考え方、日本の対応の仕方、そしてアメリカへの戦略的な意味合いを話す。もちろん、11月の中国による防衛識別圏設定も、この領土問題に複雑性を加える大切な議題であるから、私の見解も踏まえて(フォーサイトと日経ビジネスで掲載された記事を参照のこと)、真正面から向かっていきたい。