Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2016年01月

客員研究員のポスト

先日、日本のある教育機関から、客員研究員になるべく招待を頂いた。非常に名誉なことで嬉しく思う。日本帰国の際はお世話になる予定である。正式にきまったらこのブログで発表する。

ドナルド・トランプは大統領になれるのか?

最近日本人の方々とアメリカ政治の話をしていて出てくる話題のひとつに、ドナルド・トランプ大統領候補の件がある。ここアメリカでももちろんそうだが、日本のメディア、特にテレビでも彼の人気が報道されている。そこで必ず挙げられる点に、問題発言をあれほど連発しているのにも関わらず、そして特にまともな政策を挙げているというわけでもないのにも関わらず、なぜ彼はあんなに人気を集めているのか、ひょっとしたら来年の大統領選挙で勝ってしまうのではないか、という問題がある。

これはある場所で講義をした際も話したのだが、そして実際アメリカの多くの政治学者も予想しているのだが、私は彼が共和党統一候補になるとは思わない。これはあくまで予想のため、結果が異なる可能性はある。しかし現時点で重要なのは彼が40%ほどの人気率を持つことよりも、彼がよく話す「イスラム教徒」が海外でテロ攻撃を行おうが、より重要なのは鍵となる今後の政治集会で連続的に結果を収めることであるからである。特にアイオワでの党員集会、ニューハンプシャーの予備選挙、そしてサウスカロライナなどで勝利を収めることが大切である。

それに最も近いのは、トランプではなくテキサス州上院議員のテッド・クルズだと言われている。私は特に彼を支持してはいないが、彼はティーパーティのイデオロギーの中心人物と見られ過激な思想を持っている。にも関わらず、ディベートでは冷静に、そしてここ数ヶ月の間は、トランプやブッシュなどのようにテレビに大体的に出て相手の批判をするというよりも、重要な州を回り、着実に支持層を構築してきたのである。しかしもちろん、クルズが今後失敗し、別の人間が共和党の候補になる確率も十分ある。クルズのライバルとして挙げられるのがフロリダ州上院議員のマーコ・ルビオである。

仮にトランプが共和党の統一候補になり、民主党候補になるであろうクリントンと一騎打ちになったとしても、私は後者に軍配が上がる可能性が高いと見ている。もちろんその時点でのトランプは、今と違った状況になってるだろう。従って現時点での予想は当てはまらないかも知れない。そのときにはトランプは、誰もが認める共和党の候補として考えられているか、もしくは他の候補を倒す過程で多くの傷を負い、クリントンと戦う前から既に勢いを失っている可能性もある。いずれにせよ明らかなのは、クリントンはトランプよりも政治経験が豊富で、支持者層も幅広く、ディベートも上手い。冷静な有権者のほとんどがクリントンに票を入れるだろう。

中西部政治学会での研究発表

4月に行われる中西部政治学会に参加する。今回初めてのこの学会では、2つのパネルで研究発表をする。

木曜日に開かれる、「21世紀の米中関係」と題されたパネルで発表するのは、先日あるジャーナルでR&Rを受けた中国の民主化、米中の貿易問題、そして軍事バランスを総合的に分析した研究である。このパネルではサザン・メソディスト大学の武内教授がディスカッサントとなり、コメントを頂く予定である。

What Democratization, Trade Expectations, and Military Power All Mean for the Future of Sino-US Relations

I assess the likelihood of conflict between China and the United States by analyzing social change in China and economic interdependence and perception of military balance between China and the United States.

Nori Katagiri, St. Louis University

翌日開かれる、「アメリカの安全保障と軍事戦略に対する地域的なチャレンジ」のパネルでは、来月あたりに Asian Survey で出版される論文について話す。


Strategy and Grand Strategy for the Future of Asia

What kind of geostrategic landscape is likely to emerge in Asia as China and the US compete for regional leadership? I argue that a bipolar East Asia is the most likely scenario because there is nothing that stops the rise of Chinese power.

Nori Katagiri, St. Louis University

「エコノミスト」での日本外交官の反論

イギリスの雑誌「エコノミスト」で、日本の外交官が反論をしている。これは日本の刑事システムを批判的に書いたエコノミストの前回の記事に対するもので、読む限り説得力のある反論を繰り広げている。この前回の記事に関しては私も違和感を抱いていた分、この反論を読んで外務省の努力を感じることができた。国益を守るため、今後もこの種の活動も続けて欲しい。

同時に、世界のメディア戦略において、やはり普段から日本の外交的関与の重要性を認識させられる。特に、日本の代表がより活発に動いていたら、最初の批判的な記事で見られたような「誤解」はそもそも防ぐことができたのかもしれないと邪推してしまう。もしくは、エコノミストの記者がロンドンの日本大使館に予めコンタクトを取り(取るほどのプレゼンスがそもそもあれば)、インタビューなどを通して、より正しい日本の現実をエコノミスト側に事前に伝えることも可能であったと感じる。

しかし同時に、この種の「ジャパン・バッシング」は、より悪い状態で放置されていた可能性があったことも考えなければならない。このように外務省がしっかり反論することで、日本のイメージや評判の回復につながるし、しっかり国益を守るため機能している、という理解が、全世界に伝わるのは良いことである。

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映画「日本のいちばん長い日」を鑑賞

前作に続いて今冬観た映画は、「日本のいちばん長い日」の2015年度版。私は海外の役者と比べて日本の映画俳優には辛口なのだが、この作品は良かった。特に阿南陸軍大臣の役を務める役所浩二と、クーデターを指揮する畑中少佐を演じる松坂桃李が良かった。

ここでも内容は割愛するが、この映画は太平洋戦争終戦間際の日本国内の騒動と軍隊の力学、そして軍政関係を短くもよく捉えている。複雑な人間関係や心情が視聴者に分かりやすく伝えられている。話の展開、俳優個人各々の能力も一般的に高く、海外でも放映してよいと思われるほど心を打たれた。歴史もの、特に太平洋戦争関係の問題に興味を持つ方にお奨め。

映画 "Bridge of Spies" を鑑賞

最近観た映画は、Bridge of Spies。トム・ハンクス主演の冷戦時代のスパイ映画である。これはセントルイスで以前プレビューに招待されていて以来、興味を持っていた。内容は割愛するが、刺激的で面白い作品だった。扱われるトピックも幅広く、スパイの行動様式から米空軍のソ連領空での作戦、ベルリンでの三方同時交渉などを含む。

トム・ハンクスの演技は流石なもので、役者としてプレッシャーのかかるであろう場面も自然にこなしていた。この業界に興味のある方にはお奨めの一本。

冬の寒さ@セントルイス

年が明けた日本では極寒とも呼べるほど低い気温が、ここセントルイスでは続いている。今日の最高気温は0℃、最低気温はマイナス5℃である。それだけでも寒いが、風が吹くと身にしみる。フィリーにいたときも寒かったが、ここも寒い。最近行ったシカゴではさらに寒く、雪も降っている。

幸い授業はあと2週間ほどないので、体調を整えながらゆっくり冬休みを過ごしている。授業が始まると忙しくなる。今春教えるのは、東アジアでのアメリカ戦略の授業と、大学院生用の国際政治のゼミである。それに加え出張も入っており、2月にはテキサス、3月はコネチカット、そして4月にはシカゴに行く予定。
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