Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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2016年04月

教育と政治イデオロギー

ピュー研究所から面白い世論調査の報告が出ている。特に新しい発見ではないが、既に多くの人が理解しているアメリカ政治イデオロギーと教育レベルには相関関係があるということを強調している。

1.大卒など教育レベルが高い人間は一貫してリベラル寄り(民主党寄り)である。もちろん、教育「レベル」の話であって必ずしも教育「内容」を意味するわけではないが、入学・卒業を経て教育「レベル」を得るためには一定の内容を達成することが必要になる。

2.20年前と比べてこの傾向が強くなってきている。

3.共和党内では、高い教育を受けている者はより保守的思想が強い。民主党でも、高い教育を受けた者はリベラル思想が強く、その傾向は保守層よりも更に強い。

4.結果としてアメリカ政治イデオロギーの二分化が進んでいる。

5.ミレニアルと呼ばれる、20台の若いアメリカ人はリベラル思想に傾倒しやすいようだ。一方でベビー・ブーマー世代は保守層に傾きやすい、などである。

ちなみに私の学部には20名弱の教授がいるが、私の理解ではその全員がリベラルである。廊下でのカジュアルな会話や学部会議での議論の際など、その点を心配しなくてよいため、私にとっては楽である。

米軍で勤務していた時は、政治イデオロギーは民間人(シビリアン)と軍人の間で分かれており、民間人はリベラルの傾向が強かった。軍隊を退役して民間人として勤務していた人間は、軍隊での生活が長かったためか、未だに保守派イデオロギーの傾向があり、いわゆる「普通の」民間人とは距離があった。一方で軍人の間での保守思想はきわめて強く、授業をしていても時たまビックリするような刺激的な意見を聞くことができた。そんなのも時間が経てば慣れてくることだが。

新しいスポーツ科目の誕生?

これは楽しそうだね。

ペンタゴンで働く日本人

「ペンタゴンで働く日本人」の興味深い記事がある。

当事者の正式の立場は日本政府の代表としてのペンタゴン「勤務」であるため、不必要な誤解を招くタイトルだ。決して多くはないが、ペンタゴンでは日本から外交官や防衛駐在官、日本語を話す日系アメリカ人の軍人らが毎日のように歩き回っている。

一方で記事の中身は面白い。ペンタゴンで働いて朝早い生活になったというのは理解できる。私がいたアラバマの空軍基地でさえ朝は早く、特に軍人は朝の5時起きで朝食前に数マイルのジョギングをしてから7時ごろに教室に入る、というパターンで生活していた者もいた。

更に、幾つかのアジアやアフリカ諸国との代表と話す場合、中学生レベルの英語で会話が成り立つのは本当である。こちらがどんなに高い能力を持っていても、向こうがそうでない場合があるからである。ただ誤解すべきでないのは、これは専門英語をマスターされた人間だから余裕を持って言える点だ。私の意見では、国際政治で通用するためには、そして大切な国益が絡む重要な案件を話す際には、相手のイントネーションや反応などを読み取る必要もあるため、極めて高度の語学能力が必要だと思っている。

ペンタゴンを含む米軍の重要な組織へのアクセスを持つ日本人は少ない。非常に貴重な能力と経験を持つ方なのは明らかで、日本の防衛に今後も貢献して頂ければと思う。また、日本の防衛をペンタゴンにより上手く伝えるためにも、今後とも有能な人物を派遣し続けるべきである。広報だけでなく、整備、運用、戦略、諜報の分野まで幅広く交流ができればと思う。

大学キャンパスの一枚

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博士候補を待ち受ける就職市場

この記事は面白い。大学教員市場に関する新しい主張や発見は特に無いのだが、アメリカで博士号取得を目指す人間は読むべきである。幾つか大切なことが書いてある。

まず、過去10年で博士号取得者の数が増えているのに対し仕事の数は追いついていない。従って取得者の多くが就職活動「中」の状態を強いられる。専門関係なく大学教員の市場では、その割合は40%に上るようだ。

この原因のひとつとして、大学側は費用抑制のために非常勤講師の数を増やしていることが考えられる。永住権を持つ人間ならともかく、期間限定のビザ等のサポートが必要な留学生にとっては困難な状況である。

また、博士課程を卒業するまでの年数も長い。教育学などは平均で10年以上かかるようだ。しかしこの数は卒業できた人間がかけた年数であるため、卒業できなかったその数十%の人のデータは入っていない。私の同期らを見ると、博士号を取得し卒業できるだけでも大したことだと感じるときがある。

政治学を含む社会科学の年数は10年以下だが、その数年の間に多くのイベントが起こる。私の先輩でも、同期でも、後輩でも、他の大学の学生でも、最初は良い成績を取り回りを圧倒しながら博士論文を書き始めても、途中で色々なことが起き、結局卒業せずに中退する人間を何人も見てきた。数年かかるというのはあくまでも博士課程に含まれる多くのチャレンジのほんの一部に過ぎないと自覚をし、この業界を考えるべきである。

テロに対する見方と日本の安全保障@治安フォーラム

月刊誌「治安フォーラム」の最新号にて拙稿が出版されました。興味のある方はどうぞ。

《連載②:アメリカから見る日本の防衛と政策》
テロに対する見方と日本の安全保障

近所のガチョウ家族

自宅近くに小さな池がある。最近、そこで散歩をしていると、ガチョウの親子に遭遇した。

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こちらも半分ピクニックのような気分で、水筒を持っていってベンチに座って鑑賞していると、少しずつ近づいてきた。

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ワシントン大学での講演とキャンパスの写真

ワシントン大学での講義は楽しかった。3人の専門家が集まり核問題を多角的に考察した。学生も100人近く参加してくれ、質疑応答の時間も盛り上がった。

私は冷戦時代からの核戦略や冷戦後の安全保障体制、そして北朝鮮や中国の核ミサイルや韓国と日本の核問題への態度などについて話した。途中、ドナルド・トランプ氏の日本・韓国の核武装化の話も混ぜると盛り上がった。

受けた質問は、イスラム国を含む非国家主体が核兵器を得る可能性や、近い将来の核戦争の可能性についてが多かった。

講義の前に、大学キャンパスを少し散歩する時間があった。とても綺麗な場所である。

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ワシントン大学でのポスター

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軍人を民間の大学で学ばせることから生まれる良い点

日本ではあまり共有されない考え方だが、軍隊と民間大学が協力する場合相互利益が発生する。現在は大学教員をしている元・海兵隊員のこの見方はまさにそれである。

授業に参加する民間人の学生は軍隊経験のある学生から色々学ぶ。また、軍隊経験のある人間も、民間という新しい世界に足を踏み入れることから学ぶことも多い。さらには、我々の代表である政治家が今後ともしっかりした安全保障政策を出し続けるためにも、軍隊の世界との交流を強化し、多くのことを学び続けていかなくてはならない。
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