Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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研究者の方々へ、Global Studies Quarterly (https://academic.oup.com/isagsq) への寄稿を是非ご考慮下さい。副編集長として編集作業に携わっております。お気軽にお問い合わせください。日本の多くの大学がそうであるように、JUSTICE (https://contents.nii.ac.jp/justice) 所属大学の方々はオープンアクセス出版料金が免除されます。

2016年10月

クリスマスが近づいてきた

ハロウィーンで盛り上がるなか、近所の店ではクリスマスの準備を始めていた。セントルイスで紅葉が始まったと報じたのはたったの5日前だった。

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テロリズムや「イスラム国」を研究している方へ

去年私が出版した論文「ISIL, Insurgent Strategies for Statehood, and the Challenge for Security Studies」がオンラインで閲覧可能になりました。

先着50名と限定されているので、申し訳ございませんがテロリズムやイスラム国を研究している方で、以下の論文に興味のある方のみでお願いします。

ここから読めます。

セントルイスも紅葉が始まった

近所を歩くと紅葉が始まっている。最高気温も20度ほどで過ごしやすい時期である。

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アメリカではサイバー安全保障の問題をこう教える

今週の大学院の「戦争、平和、政治」のゼミではサイバー問題を扱った。休憩を挟んだ2時間半の議論でも13人のゼミ生は疲れを見せなかった。それほど重要な内容であったのは彼らも理解をしていたし、翌日の金曜日にアメリカ国内で起きた大規模なサイバー攻撃を見れば明らかでもある。

もちろん2時間半の授業だけでサイバー問題全体を教えることはできない。従って文献を選ぶ際には相当気をつけた。私が米軍時代に使っていた教材を果たすことも考えたが、セントルイス大学のような民間の大学で必要なのは部分的に選ばれた専門教材ではない。サイバー安全保障を政治学・国際関係学の一環として取り入れ、広く多角的な視点から理解させることが必要である。

従ってまず最初にクラウゼウィッツの戦争論の防衛と攻撃の部分を徹底的に読ませ、サイバー空間ではなぜ、どのように攻撃側が優位に立つのかを説明した。そして offense defense theory を用いて、攻撃側が優位に立つときなぜ、そしてどのように国家間の戦争の可能性が高まるのか、ということを説明した。200年前に書かれたクラウゼウィッツの戦争論は防衛側が優位にあると述べるが、それがサイバー空間ではどう違うかなど説明すると、ゼミ生はよく理解していた。

それが終われば議論の時間である。Thomas Rid が主張する、「サイバー戦争は起きない」という点をゼミ生の間で議論させた。彼の研究は国際関係学の中でも意見が割れるため、授業でも使いやすい。同時に一定の専門家の意見も必要であるため、Singer and Friedman の Cybersecurity and Cyberwar も一部を抜粋して読ませた。私の大学では安全保障の授業の数が少なく、残念ながら多くの生徒にとってサイバー問題を扱うのは初めてのことだったが、この種の文献を使うことでそれに対するプレッシャーも緩和することがある程度できたのではないかと感じている。

「誰がなぜトランプ候補に投票するのか?」@治安フォーラム

10201315_580844d029efc連載している治安フォーラムの最新号にて拙稿が掲載されました。タイトルは「誰がなぜトランプ候補に投票するのか?」です。

2ヶ月前に執筆した原稿ですが、今回の大統領選討論会といい、関連する部分があると思います。トランプ候補を支持するアメリカ人がなぜここまで多いのか、彼らはどのような理由で支持するのか、彼らの共通点は何かなど、アメリカの政党、人種、教育レベル、そして米軍の傾向などについて書いています。

また、今回の大統領選が日本にどのような意味をもたらすのか、在日米軍との関係は、などにも言及しています。

興味のある方はぜひどうぞ。

アメリカ大統領選挙討論会の最終日にて

大統領選挙討論の最終回も我が大学で中継された。今回は秋休みと雨天が重なり学生の参加者は少なかったが、私は討論が始まる前の数分間を使って、アメリカの国際関係について話をしてきた。

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大学院の教え子らと。討論会にて。

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東シナ海油田で優位に立つ中国

CSISの Asia Maritime Transparency Initiative の最新の報告では、日本が主張している東シナ海の油田での争いにおいて、中国が徐々に優位に立っている状態を衛星写真つきで示している。

報告にはまず尖閣沖でに中国による日本の領海侵犯、そして接続水域入域のデータが提示されている。その下をゆくと写真が数枚掲載されており、中国側が使用するヘリポートまで設置されている状態を見ることができる。

アメリカが進める日本の領土問題に関する情報公開、これはアメリカではなく本来日本がより積極的にすべき役割だと感じる。

中間試験の結果

ここ数日は大学の仕事で大忙しで、ブログを更新する時間が中々なかった。先週は大学の中間試験の週であり、採点の仕事に追われていたのである。先ほどようやく、学部生のクラスと大学院生のクラスの採点が終わった。

学部生のみの国際関係学入門のクラスは試験を行い、平均点が86点でB。受講している生徒は一年生と二年生が中心なのだが、高得点を取ったのは政治学を専攻にしていて国際問題に強い興味を示している者が多かった。

一方で学部生と大学院生が一緒の国際安全保障のゼミの平均点は、学部生の方が高いという面白い結果になった。多少複雑な事務の点があるため必ずしもきれいに学部生・対・大学院生で分けられないのだが、大学院生にとっては多少恥ずかしい結果である。

学部生の平均点は89点でB+。大学院生の平均点は85点でB。この違いの原因の一つは、セントルイス大学で4年間政治学を学んできた生徒の方が、他大学で学部を卒業し、セントルイス大学に修士号を取りに来る生徒よりもしっかりしたトレーニングを受けているということが考えられる。事実、私の限られた経験の中でも、大学院でこちらに来るよりも、4年間みっちり当校で勉強している生徒の方がこの種の授業に向いている側面があると感じられる。

クリントン大統領誕生を阻止しかねないシナリオ3つ

2ヶ月前から予想している通り(ヒラリー・クリントンの圧勝シナリオ)、クリントン大統領誕生のシナリオが現実的になってきた。ビジネス・インサイダーの記事ではクリントンの差が開きつつある状況を示している。

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トランプの失態は予想できたことである。しかし今後3週間の間に起こりうる、形勢逆転を導かねない状況も3つほど考えられる。

まずは大統領選挙の前日もしくは投票日にロシアなどからのサイバー攻撃により投票結果が操作され、トランプが勝ってしまう可能性である。トランプ自身これを奨励しているふしがあり、ロシアもトランプの勝利を願っている。今後数日の間でアメリカがそれをどう防ぐことができるかは極めて重要である。

また、アメリカ国内での大規模なテロ攻撃もトランプを優勢にしかねない。ブッシュ大統領だった2001年の同時多発テロの時も、政策の中身というよりも強いイメージが求められた。イラク戦争を支持したクリントンのイメージは悪くはないが、安全保障の危機はトランプにチャンスを与えることになる。

また、ヒラリー・クリントンの健康状態も問題で、投票日までに大きな病気が公表されることになればそれも不利に働く。先日の肺炎で既にアメリカ国民の懐疑の念は高まっている。

St Louis Galleria

セントルイスで有数のショッピング・モール、St Louis Galleria を近くから見下ろす機会があった。月に一度ほど訪れ、レストランで昼食を取ったりする場所である。

セントルイス近郊の町クレイトンに位置するこのモール、十分都市部にあるのだが、その隣には緑がこんなに多くあったとは知らなかった。

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