今月号の「政策空間」に拙論が掲載されたので添付します。下にあるように、この論文は7月7日に行われたライオンズでの発表会での発表資料を基に書かれました。

東アジア共同主義―発展過程における紛争とその対処―

東アジアにおいて地域主義が唱えられて久しい。一般的に地域主義は、多国間の協調を意味しそれゆえに平和的な概念だと捉えられている。本稿では国際関係学の見地から、東アジアの地域主義の深化の過程で実は紛争の可能性が高まる事を指摘する。

地域化の定義は数多く存在するが、本稿では「経済・政治・軍事・文化統合を通じ地域内での秩序構築を呼びかける多国間協調運動」とする。それは同時に従来の国家の政策決定権利を地域の枠組みに委譲する過程、つまり国家の権力を地域のために一時的に弱める事を意味する。そこで興味深いのは、地域化にはNGOや民間、国際機構を含め様々な主体が関わる一方、中心的な推進母体は意外にも各国の外務省などの政府である事である。つまり地域化の特性として「国家主導の段階的な非国家化」というパラドックス的要素を含む。同時に東アジアの地域統合は世界における各地域での多極化を意味する。地域化が進むにつれ、国際政治が地理的に分化されるわけである。

戦後欧州での例から明らかな様に、一般的に国境を越えての経済・政治・軍事統合は平和を促進すると考えられる。ただしそこで地域化が非国家化と地球の細分化を同時に意味する時、その過程は流動的で必ずしも平和的ではないかもしれない。なぜなら地域主義の秩序構築という目的とは裏腹に、地域化という過程においては不安定要素が地域内部と外部に存在するからである。

考えうる内的要因は4つある。第一に、地域化によって利権が失われる個人や団体などからの反対運動が過激化しやすくなる(例:農業)。第二に、経済統合に伴う国家間の経済力格差の変動は必要以上にライバル意識を高めてしまう。第三に、現在の日中関係に見られるように、一国の軍事力の増加は地域内で軍事競争を起こしやすい。そして最後に、地域国家内で生じる紛争は地域内での結びつきが強まるにつれ対立軸がより明確になり、その紛争が二極化し激化しやすくなる。

外的要因は3つある。第一に、地域化に加わらない東アジア国家(例:ロシア、インド)とのライバル関係の上昇の可能性がある。第二に、東アジアの向上は他地域との競争が進みやすい(例:冷戦中の欧州とソ連の対立)。最後に、地域化を推進する国による外部での戦争(例:イラク戦争)への引きずり込みとそれによる政策の不一致による地域の分裂の可能性がある。

要は、地域主義の理想論を信じ込み地域化を盲目的に推し進める前に、その過程をいかに安定的に進めるかである。そして安定化のための地域化の順序をより明確にするべきである。その背景で、日本の外交政策に関しては、東アジアの地域化を以下の3つの条件で進めるべきである。まず、地域化に伴う国力の急激な低下を防ぐために従来の漸進主義を維持する。次に、地域内での唯一のリーダーシップを担い安定化に努める。そして最後に、多極化する国際政治の中で他地域との競争に生き残るため、東アジア地域の能力の向上を率先する。これらの条件を満たしつつ日本の国益の最大化を求めるべきである。

本稿は7月7日にヤングライオンズの勉強会にて発表された資料と参加者の皆様からのご感想を基に作成された。