最近ここワシントンでの安保系の議論は、トルコ軍のイラク侵攻の可能性に言及している。
要は、イラク北部のクルド人地域の政治運動の安定化(鎮圧)のために軍隊を送り込もうとしていること。少数民族であるクルド人の居住地はイラクに留まらず、アルメニア、イラン、アゼルバイジャン、シリア等に存在し、特にトルコには一千万人以上が住み込み国内政治の不安定要素の一つになっている。クルド人の独立運動の歴史は長く、私が3月にベルギーを訪れた際も、首都ブリュッセルにて独立運動を展開していた(ブリュッセル白昼のバイオレンス)。
もちろん、トルコ軍のイラクへの侵攻は、現在イラクにて展開している米軍の作戦に否定的な影響を与える。ここでの関連事項は、現在米下院で議論されているある法案。これは1915年のトルコ国内(オットーマン帝国時代)で行われたとされるアルメニア人虐殺事件で、この法案が可決されれば虐殺問題に対する国際非難が再燃することが必至なため、今トルコはワシントンでロビイストを大量にハイヤーし、この法案を消そうと必死になっている。私は現時点でこの二つの事例に直線を引くことを躊躇うが、可能性は否定できない。米議会を牛耳るイラク戦争反対派の民主党員にとってはこの法案は有効な手段に違いない。虐殺の法案を通せばトルコはイラク侵攻→米軍の撤退の時期が早まる→来年の大統領選挙を狙う民主党候補にとっては追い風。
クラウゼウィッツの言うとおり、戦争とはやはり政治問題の延長戦である。
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ここで新しいブログに移ってから書いた国際関係系のエントリー集。
1.東アジア共同主義―発展過程における紛争とその対処―
2.コロンビア大での興味深いイラン議論
3.勇気と学問、日米安保絶対論
4.戦争を起こ「さない」イスラエルの先制攻撃