揺れ動く世界情勢。米軍は中東・南アジアから東アジアへ戦略的「ピボット」の一環としてオーストラリアのダーウィンに海兵隊2500名を置き、新たにフィリピンへの展開を模索している。現在フィリピンには米軍からジョイント特殊作戦タスク・フォース600名ほどが置かれており、私が研究するエリアで様々な活動に加わっているが、それに加えて海軍のバックアップが増える見通しである。最近大きな変化を見せつつあるミャンマーの情勢、アフガニスタン・イラクからの米軍(そして早期のフランス軍の)撤退、北朝鮮の不安定情勢、そして南シナ海の情勢を考えれば理解できることである。日本にとっては日米同盟の強化の可能性が高まり、その同盟を日本の防衛の要だと考える方にとってはある意味理想的な展開である。

ただ一方で、そのピボットが実に概念的な段階で終わってしまう可能性もある。私が何度か仕事を一緒にしたことのある、マットの Foreign Affairs での「イランを攻撃する時」と題された論文は、一部の学者から爆発的な反発を受けている(先週ニューヨークタイムズから出た「Will Israel Attack Iran?」という記事もお勧め。イスラエルの政治リーダーがいかに分割されているかが分かる)。パキスタンの情勢もままならず、数週間前には軍部によるクーデターの噂が流れそれが撤回されたかと思えば、今度は逮捕を恐れてムシャラフが帰国を延長させている。シリアの情勢はここ数日で一気に悪化し、ホムを含む都市の幾つかがほぼ完全な内戦状態で多くの死傷者を出している。更に、エジプト、イラク、イエメンの内政も米軍の撤退に合わせて悪化。正直私は「ピボット」を懐疑的に思っている。

今年はアメリカは大統領選挙の年である。現段階では議論の多くが国内と経済問題に集中する一方、国際問題は一般的に、多くの意味においてラフに扱われる可能性がある。私は北朝鮮よりもイラン、南シナ海よりもホルムズ海峡、そして東アジア全般よりも中東・南アジアに今後もアメリカの注目が置かれ続ける事になると思っている。沖縄の状況は今後も複雑なインパクトを日米同盟に与え続けるだろうし、今年一年は必ずしも日本への注目が高まるとも思えない。

りゅ