小論文が米国大学院学生会の最新ニュースレターに掲載されました。今回は学部卒業直後に行った国連本部でのインターンシップと、3年前私がどのようにして今の仕事に就いたのかについて書きました。興味のある方はどうぞ。

以下添付します。

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前々号で私はアメリカ留学においてのインターンシップの基本的な役割を、そして前号ではランド研究所での研究を通して、大学院での 勉強と仕事のバランスなどについて書きました。最終回の今回は、過去の経験を元に、インターンシップを通してどう世界を見るか、そしてどうやって私が今の就職先を決めたかについて書きたいと思います。  

まずは国連にて。大学卒業後、私は教授の紹介を受け国連本部でインターンをする機会がありました。国連内で行われる会議に出席しノートを取り、それをまとめて国連大学の上司に提出することが私の主な仕事でした。当時まだ23歳、世界政治について何もわからず、アメ リカで見る多くのものが自分にとって新しいものでした。働いていた数 ヶ月の間で幾つもの会議に出席し、友人も作り、国連職員の方々との食事会にも参加し、国連の理解に努めました。国連のパスを使い、誰もいない国連総会や安全保障理事会の会議場に入り込み、椅子に座り、ここで幾つもの大切な案件を議論していたのかと思いながら感動 していたものでした。  

当時の私にとって一番有益だったのは、そのインターンシップを通 して国連の理解を深める機会があったことです。そこで私が学んだのは、世界中の発展・開発問題を担う超国家組織としての国連の限界でした。議題の内容よりも形式で始まり終わる会議、目的を完遂せず中 途半端で「終わる」会議など、日本の教育では教わらなかった、教科書にも書かれていない、一般的にも語られていない、多くの側面を目撃する機会がありました。  

国連は外交の場。限界はあろうが様々な国、文化、政治団体の代表が集まり問題解決に協力しあって努力することに意義はあります。また、国際平和や発展における国連の多大なる貢献を否定するつもりもありません。ただ元々少し懐疑的であった私にとっては、同期のインターンの間でも見られた国連主義の強い日本外交と世界の現実のギャップを通し、自分の世界観を良い意味で再構築する素晴らしい機会になりました。  

短期のインターンシップが人間の見識を進化させることもあれば、就職活動において過去の経験が意味を持つこともあります。もちろん、アメリカの学問の世界で勝負をし就職を目指すのであれば、社会経験よりも研究の出版や出身校や指導教官の推薦状が評価される傾向が強いと思います。しかし、多くの大学では採用の段階で各々の候補者の過去の経験を考慮する場合があります。特に教員としての能力を採用過程で重んじる大学はこれに当てはまるはずです。  

そこで、私がどうやって空軍戦争大学で教鞭を取ることになったかを書きたいと思います。私が就職活動をしたのは2010年の秋、あのリーマンショックが教員就職前線にも大きな影響を与え、結果として最悪の就職状況の年でした。就職難を承知で世界各国の70校以上の大学やポスドクに応募し、最終的に4、5校ほどのプログラムから声がかかりました。  

そんな環境の中、アメリカ政府の就職サイトで応募すると数週間後、国防総省内のある大学から電話がかかり、数日後、今度は面接に呼ばれました。それと並行するように、今の大学からも呼ばれ、両方の大学で面接を受けました。面接日は双方とも朝の3時に起きて自分の研究の発表の練習を何度もし、結果としてとても良い反応を得ることができました。その後、両大学間で簡単な話し合いを経て、今の大学からオファーを受けました。大きな役所でもある米空軍の2ヶ月ほどの審査の後、マックスウェル空軍基地に降り立ち、米国国旗の前で忠誠の誓いをしました。これについては私のブログでも書いているので、興味がある方はご覧下さい。  

この就職に関しては特にインターンシップを含む過去の社会経験が決め手だったというわけではありませんでしたが、面接の段階で出てくる教員、研究者としての自信を構築するという意味では重要だったと思います。これまで大学の人事に関わる機会がありましたが、経験は様々な形でカウントされます。特に、長期的に見ても研究所等で得られるインターンシップの機会は貴重なもので、多くの人が持っている経験ではありません。博士号取得の後、アメリカでの教職を考えている方にとっては、幾つかの研究機関での経験があるほうが候補としての魅力が増すと思います。  

この3連載を通し、政治学とインターンシップの密接な関係について書く機会を頂きました。アメリカに留学される方にとって研究所での経験は必ずしも最終目的ではないと思いますが、社会経験としても、学問的知識を深めるためにも、そして希望する仕事に就くためにも、イ ンターンシップは大きな役割を果たしてくれます。興味のある方は是非挑戦してみて下さい。応援しています。

※この論文は私個人の考えに基づくものであり、アメリカ政府、国防総省、そして米空軍戦争大学の政策を必ずしも反映するものではございません。