先日書いた、Jeff Grant の「The Swamp」を読了した。

グラントのデビュー作は悪いものではなかったが、比較的詳細に乏しく、スパイ小説としては興奮に欠ける一冊だった。トランプ対CIAという、ここ最近のスパイ物語にとっては最高の舞台が4年間も用意されながら、この程度の話かと多少がっかりさせられる。

もちろん、クライマックスは多少楽しいものだが、本書ではそこまでの道が長く、諜報機関としては考えられないほど非現実的な部分も入っている。例えば、CIAのケース・オフィサーであるサンドラが、主人公エリザベスの祖父が元KGB職員と知っておりながら、躊躇もせずに自宅に住まわせることに同意する部分である。加えて、エリザベスがCIAの機密を不法に入手する部分を、一緒に住んでいるサンドラが黙っている部分など、CIAと次期大統領の腐敗を暴くという正しい理由があったにせよ、読者としては理解に苦しむ。サンドラの心の葛藤やサンドラとエリザベスの間の考えの違いなど、より多くのスペースを用いて説明するべきだったと感じる。

面白い部分と言えば、ワシントン経験のある人間なら、その地域の叙述を楽しみながら読むことができる点と、スパイによる国内工作の場合は、標的とは全く関係のない海外組織(サウジアラビアの諜報機関)を使うという点だろうか。

出版が予定されている2冊目はロシアが舞台になるようだ。著者本人による現地取材などが必要だが、著者がロシアの専門家ではないことは留意したい。

CIAの海外活動に関する、最近のスパイ物語に興味のある方は、マーク・ヘンショウの作品をお薦めする。日本語の場合は、これ