Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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博士論文

フィラデルフィア再訪

来月、フィラデルフィアを再訪することになった。短い間だが6年過ごした街を堪能したい。

少し見てみると、最後にフィリーを訪れたのは2016年の9月だったようだ。時の流れは速い。


フリードマン教授による書評@Foreign Affairs

6年前にフリードマン教授に書いて頂いた書評を思い出した。とても名誉なこと。


アメリカの政治学教授職マーケット

アメリカの政治学教授職マーケットに関する論考が書かれている。

基本的に著者と意見は近い。特に、コロナ時代のジョブ・マーケットの壊滅には滅入るものがある。

海外に一度出てしまうと、アメリカに「戻ってくる」のが難しいとの見解は昔からある。ただ、ここで私が著者と多少異なる。

コロナ時代と少し違うのは、今はズームなどを通して海外との同時面接が可能になっている点。技術の進歩で面接の機会も増えているのではないかと感じる。




アメリカの社会科学研究の最近の傾向に関する記事

中々考えさせるよい論文。

著者が主張するのは、最近の社会科学は「アカデミックな技術者」と「正義の戦士」の形成に力を入れすぎだという点である。

著者は、大学院生もその真ん中ではなく、どちらかのほうに傾いているということを危惧している。

どちらかの視点もメリットとデメリットがあるため簡単にはスタンスを取れないが、バランスの必要性は我々も自覚すべきだと感じる。



また、読者からのコメントを読んでも色々学べる。

プリンストン大社会学部の発表

プリンストン大社会学部の発表によると、来年度の博士課程は入学者を取らないとのこと。コロナ不況による財政問題が原因のようだ。



次年度の受験は競争率が相当高いものになるだろう。ただ、少なくとも今年と来年のジョブ・マーケットが大変な状況になるだろうと予測すれば、学部の動きとしてはわからないものではない。

これはプリンストン内のほかの学部までどれほど影響を与えるだろうのか。政治学部には社会学部の志願者が多少流れるだろうから、競争率も多少上がるだろう。

そして他の大学はどのように動くのだろうか。優秀な学生を取りたいと思うだろうが、財政状況が悪いのはどの大学でも同じだろうが、プリンストンよりも酷い場所は結構あるだろう。

トランプ政権によるOPTプログラムの見直し

アメリカでの留学生と雇用側に再び不利なニュースが入ってきた。OPTと呼ばれる、学位取得後もしくは在学中に、1年間から3年間まで、就労ビザを取らずにアメリカで働いて給料をもらえる制度が、トランプ政権からの注目を浴び、見直しされる可能性があるという。



この制度は非常に使いやすく便利である。留学生にとっては短期で取得できる資格であり、雇用側にとっても留学生を雇う際に必要な就労ビザやそれをプロセスするための弁護士などにかかる費用を節約することができる。

トランプ政権によると、アメリカでの仕事は留学生などの外国籍の人間に与えるのではなく、アメリカ人に与えるべきだとの考えのようだ。留学生とアメリカ人労働者の関係は簡単には比較できないはずだが、政治的には十分比較対象に成り得る。もちろん、今回のコロナ危機の国内経済の状況と、11月の大統領選挙を見据えての戦略である。ただもし本当にコロナ不況から脱したいのであれば、それこそ優秀な留学生を雇うことにあるのだが、それはあまり念頭にないのだろう。

OPTが制限されれば、在学生もそうだが、側に来年度卒業予定の海外からの大学生、大学院生には不利な状況になる。学生ビザに取って代わるビザを卒業までに得ることができなければ、OPTを得ることなく、卒業して数日後に帰国を強制される可能性が高まるからである。卒業を先延ばしすることもできるだろうが、その際には別の費用と時間を要することになる。

アメリカ大学の就職の際に考えるべきこと

コロナが原因でアメリカの大学の財政が急激に縮小している。それに伴い、大学の生き残りをかけて様々な工夫がされている。クロニクルなどを読むと、どの大学がどのような対応策を講じているかの情報が掲載されている。



対応策の中には教員やスタッフの解雇や給与の削減も含まれる。特に統計を取っていないので決定的なことは言えないのだが、毎日この種の記事を読んでいて思うことは、私立よりも公立の大学のほうが財政難に苦しんでいるように見えることである。

例えばここミズーリ州。ミズーリ西部州立大学では政治学部を含む文型の学部のいくつかを廃止すると共に、教員の多くも解雇した。



また、ミズーリ大学セントルイス校も、5万ドル(約540万円)以上の年収を持つ教員やスタッフの給料を2.5%以上の割合でカット。双方とも州税に頼る公立大学である。一方でミズーリ州内の私立大学はここまでは行ってはいない。もちろん今後数ヶ月の間の話は別だが。



この点は特に新しいことでもなく、このブログでも何度が言及してきてはいる。しかし今回のコロナのような危機の場合にはそれが顕著化し、どの大学にどのような影響を与え、大学がどのように対応するのかが具体的に表れる。

アメリカの政治学の世界で就職や異動する場合、選択権のある人は少ない。しかしもし私立と公立の間でチョイスを与えられるのであれば、今回の一連の動きを頭の片隅に置いておく必要がある。

ちなみに同じ公立でも、国立の軍隊のようなところは別である。軍隊はこのような時期でも強く、私がかつて在籍した米空軍戦争大学でも、たった一人でも解雇はしていないだろうし、今後も大丈夫だろうと言い切れる。

学問の世界から出てゆく博士達

以下の論文は先日書いたエントリーに良い形で補足する。主張の中身は我々にとっては否定的なものだ。論文の著者はコロナの影響で学問の世界から離れてゆく博士を予想している。世界経済の悪化が更に進めば、残念ながら我々の市場も今後数年間は悪化し続けるだろう。


アメリカ政治学の就職に関して思う事

今回5年ぶりに就職活動をしてみて思ったことが幾つかあった。過去のエントリーでも似たようなことを書いていると思うが、重複する部分があれば補足や強化する意味で取って頂きたい。

近い将来アメリカで政治学に挑戦してみようと思っている方、もしくは既に入学しており、これから研究トピックを決めようと思っている方に読んで頂きたい。

幾つか大切だと思う点を挙げる。

1.現在のアメリカ政治学会において、日本関係のトピックは研究内容としては残念ながらできれば避けるべきだと感じる。日本問題の専門家を教員として求める大学の数は、同じアジアでも中国・インド関連の専門家の数よりも圧倒的に少なく、アメリカでの就職に際し極めて不利な状況を作り出す。日本人の研究者は一般的に語学の問題があるため(また、最初からそう思われているため)、日本専門家のポジションがあったとしても、日本語を多少話すアメリカ人の研究者にその仕事を持っていかれる。

この傾向はここ数年ずっと続いている。アメリカのトップレベルの大学の博士課程を、優秀な教授に指導してもらって卒業したのにも関わらず、主な研究内容が日本関係でしかないために、アメリカでの就職に失敗し、仕方なく日本に戻る場合が多い。研究テーマの選び方はもちろん、自分の学問的興味に従うのが一番だと思っているが、日本関係のトピックは正直薦めない。

また、将来的に日本政治の研究者になり日本での就職を考えているのなら、わざわざアメリカに来る必要もないと思う。最初から日本での大学教授に弟子入りし、そこから登ってゆくほうが現実的である。

2.一方で比較政治、特にアジアの地域に固執したい場合は、中国、インド、もしくは北朝鮮を混ぜるべきだと思う。他の重要なアジア地域を専門とする研究者としてなら、その事例の一つに日本を混ぜることも可能だと思う。

3.アメリカで就職する日本人の大学研究者を見ると、その多くが日本に関連しない分野を選んでいる。統計学、アフリカ、アジア・中国、国際政治経済などが主な例である。

4.研究手法もトピックを選ぶ段階で大切な要素で、就職活動の際はこれが至る所で威力を発揮する。私の友人を含む、海外で活躍する日本人研究者のほとんどが統計・計量系の手法を用いており、質的手法を使う人間はほとんどいない。例外ももちろんあるが、総合的に見て計量系の研究の方が出版できやすく、就職活動の際に大学側に魅力的に感じられやすい。アメリカの政治学会内では幾つかの対抗勢力もあるが、計量系の研究が圧倒しており、このトレンドは今後も続くように思える。

本が売れてます!

15296ペンシルベニア大学出版会から連絡があり、去年出版した私のがここ2か月で50冊売れているようだ。これで過去4か月の間で100冊が売れたとのこと。

嬉しい。私の友人でも買って下さった方には感謝の気持ちと、メッセージ付きのサインをしている。

また、キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン教授からも、フォーリン・アフェアーズ上で書評を頂いている。参考にどうぞ。

Katagiri’s analysis confirms the lesson that Mao Zedong learned during the civil war in China: a small group of insurgents relying on primitive strategy and mostly military means is likely to lose in a straightforward fight against a state.

Although such a force can survive and even grow during a guerrilla war, to achieve victory, it must use political as much as military action to transform itself into something resembling a conventional army acting on behalf of something resembling a state.

Mao developed this formula in the 1930s, and it was the basis for his success and, later, for the success of the Vietnamese Communists and others his movement inspired.

Mao’s victory proved to be something of a tipping point: Katagiri shows that before the late 1940s, most insurgencies failed; since Mao’s victory, most insurgencies following his methods have succeeded.

Katagiri uses a range of interesting case studies, including wars of colonization and wars of liberation, to develop what he calls “sequencing theory”—the order in which insurgents must take certain steps in order to prevail—and to draw conclusions for counterinsurgency.

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