Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部准教授及び国際関係学科主任。専門はサイバー、国際安全保障。航空自衛隊幹部学校客員研究員(2016-18)

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国際関係学のススメ

大学合格者・保護者との学部懇談会

先週の金曜日は会議を6つこなすために大学へ。その中の一つが今年度の受験合格者で最も価値の高い学長奨学金の候補との会合だった。

この奨学金は4年間の大学費用が全て免除になるもので、アメリカ全国から候補がこの数日間に大学に集合し、大学関係者との最終面接審査を受けるものだ。名誉ある奨学金であるためその数は少なく、特に大きなイベントというわけではない。

私は国際関係学科主任として、国際関係学と政治学を主選考にしようとしている候補たちを学部に招待し、保護者を混ぜて懇談した。この懇談自体は審査ではないため参加者はリラックスしており、政治学に興味を持つ人たちに我々がどのようなプログラムを行っていることを説明し、質問に答えることを目的をしている。

その日はあいにくの雪となったが、20名を超える参加者が学部ビルを訪れ、学部の会議室は満席となった。同僚のウィンと行った懇談は予定時間の1時間を超えた。プログラムを簡単に説明すると強い興味を持つ学生や保護者から幾つもの質問を受けた。政治学・国際関係学に相当強い興味を持っていることが明らかで、懇談が終わるとウィンと共に喜んだ。

今後数週間はこの種のイベントが数多く並んでいる。今回のは小規模だが、これからは一般合格者との懇談などが予定されており、主任としてそれに参加することになる。今学期も忙しくなってきた。

人工知能の論文が完成

マイナス10度だった土曜日は外に出る気になれず自宅でゆっくりした。夕食後には人工知能の論文が完成したので、前から気になっていたジャーナルに寄稿した。良い結果が出ればと思う。

反日研究論文に直面するとき

今査読している英語論文は典型的な反日論文で、未だにこの種のスタイルが蔓延っていることを思い出させられた。

まともな論理も証拠もなく自分の経験と思想のみで想像した日本を論文に書き込むこの悪習慣は、西洋の学問では徐々になくなってきたはずだ。が、特に海外から見る場合、日本の政治や社会は様々な角度から突っ込み可能なのは明らかで、少し前に政治学を覚えた学者には未だにこの種の態度が強く残っている。

日本に関して学問的好奇心を持ち、それを研究にする方は感謝したいと思っているが、政治科学としての学問をしっかり押さえている論文をしっかり評価するという姿勢は持ち続けていたい。

産経新聞「中国「戦狼」外交には公然と反論を 山上信吾前駐オーストラリア大使「主戦場は在外公館」」

日本の外交官には珍しい強気の対中態度を示す、興味深い記事だ。できればこれを日本語という柔らかい土俵の上で言うのではなく、リアルの英語の世界で繰り広げて頂きたい。



これほど度胸のある方なら、2021年までその機会を与えるのを待つのではなく、それ以前から対中でしっかり相手をさせるべきだった。また、そこまで強く思っていたのなら、現役の時に大きな改革を進めるべきだった。

いずれにせよ、この記事の大切な点は、

「私のように積極的に任地のメディアで発信・反論する日本の大使は極めて少数派だ。理由は複合的で、自分で論理を構成し、人前で意見を発表する機会がほとんどないという日本の学校教育の問題も一つだろう。そして外務省の中に、インタビューに応じ、反論することを評価しようという空気がないことも大きい」

という部分にある。外務省外の方がこれを言うのではなく、「元」内部の方が指摘している点が重要だ。できるだけ早い姿勢転換を求む。

人口知能学会@ミズーリ大学

来月ミズーリ大学で開催される予定の人工知能学会のスケジュールが公開された。



私の発表は初日の昼食後で良い時間帯。特に参加者が食後で眠くなっているため素晴らしい。

他の参加者はこの業界で素晴らしい業績を残している人たちで、彼らと交流するのをとても楽しみにしている。

東洋経済「「AI先進国」になれるチャンスが日本にも到来」

とても良い記事だと感じた。特に著者の楽観的主観とそれを支える現実的なチャレンジ精神に共感する。


人口知能からランサムウェア

来月にミズーリ大学の人工知能学会で発表する予定の論文に没頭していたここ数日。少し頭を休めるために議題を変えた。

4月上旬に国際関係学会で発表予定のランサムウェアの論文を進めるためである。

今回は自分のパネルで発表者とチェアの2つの仕事を兼ねる。他のパネリストには既に当日の進行方法を伝えており、3月下旬までには彼らから各々の発表論文が送られてくるため、討論者のジョン(ジョージア工科大学)と一緒にそれらを読まなくてはならない。

開催地のサンフランシスコを久しぶりに楽しもうと思う。

バイデンの記憶障害の暴露

今回のロバート・ハー特別検察官によるバイデンの記憶障害の暴露が物議を醸している。報告書が公開されたその日の晩にバイデン自身が急遽会談を開いて自己防衛に入るなど、民主党内で混乱が広がっている。2016年のヒラリー・クリントン候補に大打撃を与えたコーミーの報告書を思い出す。



私はトランプよりもバイデンの方が次期大統領にふさわしいと思っているが、ここ3年間を見る限り、バイデン自身も素晴らしい大統領というわけではない。公約の多くは果たされず、民主党も他の候補を担がない。バイデンを打ち落とす要素は多い。在米の日本人を見ていると、トランプを応援する人は実は結構多い。

アメリカ人の日本専門家の多くはかつて、自民党政治家を中心とした高齢政治家に対してジェロントクラシーと呼び批判してきたが、ここ数年になってその批判が止んできた感がある。アメリカの大統領選挙を見れば一目瞭然だ。アメリカの政治家に対しても同じように批判するアメリカ人の専門家は多少の信用に値するが、そのような人間は多くない。

今日の Recorded Future

今日の Recorded Future は大忙しだった。

英仏主導の Pall Mall Process の報道に加え、中国系ハッカーによるオランダ国防省のハッキング。そしてグーグルによるスパイウェア製造会社の糾弾。

最近はサイバーにスパイウェアが加わってきたことが顕著だ。欧州議会の調査団が暗礁に乗り上げたので、英仏が重い腰をあげたようだが、スパイウェアはヨーロッパ地域内でも数多くの国々が合法的に使っており、制限するのは相当大変のはず。規制に対する反対も相当のものがあるだろう。

読売新聞「 外務省公電に中国がサイバー攻撃、大規模な情報漏えい…主要な政府機関のシステム点検 」

週明けの悪いニュース。前から報道されている件のフォローアップだ。



普通はここまで4年前アトリビューションができているなら政府トップレベルの案件になり、中国側との外交・防衛問題に発展しているはず。サイバー防衛の重要性がここまで明らかなのに、アクティブ・ディフェンス(本中にある能動的サイバー防御を指す)の関連法案の提出は見送られるとは話の筋が通っていない。


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