Politologue Sans Frontieres 「国境なき政治学者」

ペンシルベニア大学政治学部博士号取得→アメリカ空軍戦争大学勤務→現在はセントルイス大学の政治学部で教えています。政治学部准教授、国際関係学科主任、そしてアジア学科主任。国際関係学、安全保障、東アジアの政治学を担当しています。

教育・TA・学部

今週の授業は中国とアジアの安全保障

今週のゼミのトピックは中国とアジアの安全保障だった。

私の大学はヨーロッパの文化に焦点を置く傾向が強いため、中国や日本を含むアジアへの注目が弱い。それもあり、中国の政治や軍事問題の知識も疎い。

その傾向を打破すべく、この国際安保のゼミでも毎回、中国の軍事問題を取り上げている。

課題として出したランド研究所の資料には苦労したようだが、私の生徒は頑張り、中国を取りまくアジア全体の問題を多角的に議論することができた。そしてやはり、東南アジアにおける中国の影響力、特に南シナ海での中国軍の動きに注目する生徒が多かった。

一つ興味深かった点がある。ここ数年でアメリカ人による対中感情は悪化しているのだが、その見方がうちの大学の生徒にも結構浸透していた点である。これは単にこのゼミだけでなく、また、コロナ以前の問題で、一年生や二年生の授業でも共通している。



トランプ政権の対中政策の影響もあろうが、同時に中国の外交政策や内政の問題が、海外のメディアにより以前よりも批判的に報道されていることも考えられるだろう。

文春オンライン「東大が中国勢より下位に…上海の研究者が見た、大学ランキング・日本「一人負け」の原因」

とても良い記事。アメリカからだけでなく中国からも見習う点があるようだ。


昨日のゼミで起きたこと

昨日の安保ゼミでは、戦争における技術が議題だった。軍事技術について多角的に3時間生徒と議論するのである。

ゼミでは最初に当日の主点たるべき戦争と軍事技術の関係を説明し、すぐに議題に取り掛かった。まずは技術の変化が国際安全保障環境をどう形成しているのか。そして話を人工知能の軍事的役割に移し、現在知られている人口知能の可能性と限界について述べた。

その後、主要文献であるクラウゼウィッツに軍事技術の要素をまぜ、混乱する生徒に少しでも役立てようと、できるだけ簡単に説明した。

休憩を挟み、今度は無人飛行機を例に取り、ドローンが世界にどのような影響を与え、使用国の国益をどうかなえているのか、などについてまずは生徒の間で議論させ、ゼミ終了前の数十分を使って、私を交えてクラス全体で議論させた。

とても効果のある授業ができたと感じる。

少し面白かったのが、戦争におけるインテリジェンスの話をしていた時。生徒の一人が2003年のイラク戦争を例に挙げ、米国のインテリジェンスの失敗例として説明した。すると別の生徒が挙手し、それはインテリジェンスの失敗ではなく、インテリジェンスの政治化が失敗をもたらしたと述べた。インテリジェンスに関しては既に孫子やクライゼウィッツを用いて説明しているが、学期後半でも時間を使ってその役割を検証する。

安保ゼミのシラバス

今学期の安保ゼミのシラバスはこちらから。PDFです。


今週の Inside Higher Ed

今週の Inside Higher Ed には、重要な問題をカバーする記事が多かった。

まずは今年の夏学期のニュース。コロナの影響で、大学の夏学期の履修率が低下したようだ。簡単に想像つくことだが、その中でも特に黒人の大学生、短大生、そして男性の履修率に影響が大きかったとのこと。



全米の中には黒人が多数の大学が幾つかあるが、そこへのインパクトは大きかったはずだ。しかし男性の履修率の影響は少し以外だ。理由は、コロナで失職した男性の多くが、少なくとも短期的に大学に通うことが簡単に想像つくからである。

ただ、学生の種類に関わらず、コロナの影響で職員を一時的に強制休暇させたり解雇した大学も多いようだ。それはコロナ以前の財政状況やフットボールなどのスポーツ関係の収入への依存など、コロナの影響を直接受けたことも含め、様々な要素から成り立っている。以下の記事ではその幾つかが例として挙げられている。



最後の記事は、一方的な講義をする教員がもたらす教育上のリスクについて。講義をすること自体が「人種差別的だ」との見方にはあまり慣れていないが、教員が話し続けるだけで生徒からの議論や質問を遮るやり方には、教育方法として大きな問題が付きまとう。特に文系の学科ではそうだろう。



私はこの意見に基本的に同感する。それもあり、どの授業でも講義の部分はは最小限にし、生徒の参加を強く促す。個人意見の発表を含む、生徒による授業への直接参加には、授業の成績の30%のウェイトを乗せている。理想的には50%ほどにしたいくらいだ。
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